12:騎士団
「何だお前ら!? ワタシ達に喧嘩を売ろうっていうのか!?」
コロンがオレ達を囲むフルアーマーに向き直り、短剣を構えて周囲を警戒する。
完成した鉄のゴーレムを起動して、鬼ごっこに興じていると、なんと突然遠くから現れた、馬に乗ったフルアーマーが複数で取り囲んで来たのだ。
「何だ魔族の娘? そのアイアンゴーレムに襲われていたのではないのか? それともそのアイアンゴーレムは、お前の従魔か何かなのか?」
フルアーマーはどうやら、コロンがオレに襲われていると勘違いしていたようだ。
フルアーマーの首領がそのコロンの様子に、鉄のゴーレム状態のオレを、従魔と勘違いする。
「まてまてまて!! そいつらは味方だ!!」
そのただならない様子に、今まで他の冒険者と鍛錬に励んでいたギルド長が、オレ達の間に割って入る。
「久しいなフェルナン。貴様のその様子をみるに、そ奴も冒険者といったところか?」
フルアーマーの首領が、やってきたギルド長に話しかける。ちなみにフェルナンは、ギルド長の名前だ。
「その通りですバルテルミ卿。彼女らはD級冒険者です」
バルテルミ卿? このおじさんはまさか貴族なのか? ということは馬に乗ったその様子から、目の前のおじさんが、騎士であると思われる。ということは、オレ達を取り囲んだこいつらが、騎士団ということになる。
「彼女ら? D級冒険者?」
何故かバルテルミ卿はギルド長のその言葉に、コロンでなくオレを見上げながら、怪訝な顔つきでそう言った。
ガチャン!
「初めまして。オレはヨッシーです」
どうやら本格的にゴーレムだと勘違いされているようなので、オレは頭の陣笠を背中に収納して、小さな幼女の頭を晒して顔が見えるように、かがんで自己紹介する。
「何だ? 随分と素顔は可愛らしいのだな? そのでかい体との差が極端だな? 其方も魔族か何かなのか?」
バルテルミ卿はオレの小さな幼女顔と、ごっついゴーレムの体の差に、違和感を覚え、オレを魔族のようなものとみたようだ。
「いえ。これはゴーレムの胴体に、オレがはまっているだけなので・・・」
そう、オレはゴーレムに乗っているというよりは、はまっているように見えるらしい。
「何だ? 其方ゴーレムの胴体にはまり込んでおるのか? それでそのゴーレムを操っておったのだな?」
バルテルミ卿はオレが入り込んでいるゴーレムの胴体の穴を、馬の上から見下ろしながらそう言った。
「何という人騒がせなガキどもだ! わざわざ騎士である我々が、平民どものために来てやったというのに!」
するとバルテルミ卿の後ろから、馬に乗ったもう一人の騎士が、悪態をつきながらやって来た。
「いいか!? くれぐれも我々の作戦だけは、邪魔してくれるなよ!?」
そう一言言うとその騎士は、他の騎士を連れ立って、砦の中へ入って行った。
随分と感じの悪い騎士だが、あれは貴族の子息か何かだろう。あまり関わり合いにはなりたくないな。
「すまぬな・・・あれは少々甘やかされて育っておってな、一応あれが騎士団の副団長だ。後でいさかいを起こさぬように、言い含めておくのでな」
そしてバルテルミ卿は、立ち去ろうとして、何かに気づいたように立ち止まる。
「まだ名乗っていなかったな? 我が名はバルテルミ・ド・ネルヴァルだ。このパーシヴァル領の騎士団の団長をしている。それではまた」
そう言い残し、バルテルミ卿も砦の中に入って行った。
騎士というからには、冒険者のようにもう少しいかつい感じを想像していたのだが、意外とスマートな体型をした人達が多かったように思える。魔法も使えると聞いていたので、もしかしたらコロンのように、魔力で腕力などを底上げできるのかもしれない。
「ではこれからお前らに、騎士団との合同作戦の内容を伝える!!」
そして翌日、騎士団とのオーク討伐の、合同作戦の内容が、ギルド長から告げられた。
作戦ではオレ達冒険者は左右二手に分かれてオークの軍勢を誘い出し、十分に誘い出し分断したところを、突破力のある騎士団が、中央から本体を攻めるという内容だった。
なおオークの群れは集落を形成しているために、集落に押し入り、その後撤退するような形をとり、集落の外まで多くのオークを引き付けるのが理想だという。
「作戦は明日の早朝にオークの集落に向かい、到着して様子を見てから、騎士団の合図で決行される」
明日はついにオーク討伐の作戦が決行される。
オークにはまだ、2500以上の勢力があるのに対して、こちらは騎士団を合わせてもせいぜい1100ほどだ。
あの巨漢のオークの二倍以上の勢力を、果たして無事打倒せるのだろうか?
あの鉄のゴーレムと大岩があれば、かなり有利に戦えるのではないかと思っているが、後は騎士団の実力次第といったところだろう。
「うえ~。ガタガタゆれる~」
翌朝オレは、歩みが遅いのと、魔力の節約を理由に、馬車の荷台に乗せられた。
あらかじめ揺れが酷いのは副ギルド長に聞いていたので、今お尻の下には畳んだアルミブランケットを敷いて座っている。
ちなみに昨夜はこの日の魔力補給用の飴を選ぶことになり、コロンが激しく反応した黒蜜飴152円を購入することになった。その黒蜜飴は今も背中のリュックにしまい込んである。
コロンはすでに槍を装備して、臨戦態勢でオレの前を歩いている。
コロンがオレの前にいる理由は、オレが荷台の後部座席に腰かけているからだ。
騎士団は列の一番先頭を進み、その後に冒険者の集団が続く。オレの座る馬車はその一番最後列にいる。
「オークの集落が見えてきたぞ! 全員戦闘準備を整えろ!」
そしてギルド長のオークの集落が近いことを知らせる声が響き、冒険者の間に緊張が走る。オレも馬車を降りて、走ってオークの集落に向かう、冒険者達の後に続いた。
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