10:大岩起動
「いいかヨッシー。俺が合図したら、大岩を起動しろ」
現在オークの群れ1000体がオレ達のいる南の砦に迫り、冒険者600人がそれを迎え撃たんと、砦の前に勢ぞろいしていた。
残り400人の冒険者は、魔法や弓矢、または補助、回復を得意とする者達なので、砦の上で待ち受ける。
オレは敵の大将を大岩で狙うために、600人の戦士達の先頭である、ギルド長の横にちょこんと立っている。
コロンはそのオレの後ろに、保護者のように付き添っているが、槍を携えて、いつでも戦闘態勢に移行できるように、徐々に接近するオークの大群を見据えている。
オークの群れの先頭には、額にまっすぐな角、両こめかみのあたりから前に向かって曲がった角を生やした、身長4メートルはあろう凶暴な顔つきの巨大なオークが鼻息荒く、こちらを睨んでいる。
あれが大将のオークジェネラルだそうだ。
その周囲には猪のような顔つきのオークナイトもいる。
オークナイトも3メートルはあろう巨漢ぞろいだ。
そしてそれに着き従うオーク達も、平均身長2メートルはあろう巨漢の大群だった。
「おい・・・俺達あんなのと戦って生きていられるのか?」
「正面からやりあったら命がいくつあっても足りねえ・・・」
ネガティブな呟きが、冒険者の中から次々と聞こえてくる。
そしてオークジェネラルが到達点に迫ると、ギルド長が手を振り上げる。
「落とせ~~~~!!!!」
「起動!!」
ギルド長の合図で、オレはその大岩を起動した。
魔物との数々の命のやり取りを経験した今のオレに、その攻撃に対する躊躇は微塵もない。
「ぶも!?」
大岩はオークジェネラルの頭上真上に現れ、まっすぐにオークジェネラル目掛けて落ちていく。
ゴ~~~ン!!
大岩は物凄い音でオークジェネラルの頭に当たるが、左端から中央にかけてひびが入り、左下部分が割れてしまう。
「なんて石頭!!」
しかし流石のオークジェネラルもその一撃で膝をつき、脳震盪を起こして起き上がれない模様。
ゴンゴンゴ~ン・・・!!
そのまま割れた大岩は少しバランスを崩して左にそれるが、オークジェネラスの後ろにいたオークナイト数人を巻き込み、多くのオークを跳ね飛ばすと、そのまま岩壁に当たって崩落を引き起こして、粉砕した。
「しまった・・・少し計画と違うな・・・だが後続のオークの道が絶たれた。今の内にジェネラルを叩くぞ!! 全員突撃!!」
「「わあああああ!!!」」
ギルド長の指示で、全員が突撃する。
「今ならいけるぞ!!」
「オークどもが立て直す前にやっちまえ!!」
大岩の攻撃で弾みのついた冒険者達は、怪我をし、弱り、困惑するオーク達にいっきに襲い掛かる。
ザシュ!!
「ぶも!?」
ズシャ!!
「ぶひ~~~!!」
次々とオークを仕留めていく冒険者達。大岩の影響は、想像以上にオーク達に、ダメージを与えていたようだ。
「実力のあるやつはジェネラルを抑えろ!! 奴が弱っている今がチャンスだ!!」
するとその指示に従い、屈強の冒険者達が膝を付いて動けない、オークジェネラルに飛び掛かる。
「まて!! いったん引け!!」
そのギルド長の合図で、全員が危険を悟り、防御態勢に入る。
ブオォォォン!!
「ぶぎぃぃぃ~~~!!!」
突如復活したオークジェネラルが、雄たけびとともに大きな銛を振り回す。
間一髪でその一撃を防御し、後方に吹き飛ぶギルド長と冒険者達。こいつは想像以上にタフなようだ。
だが背の低いオレにはその攻撃は当たらない。頭上を銛が通り過ぎていくのはかなりの迫力だったが、もう起動したものは仕方ない。
「アイアンアーム起動!!」
オレは巨大なアイアンアームを起動すると、オークジェネラルの片足を掴み、力任せに引っ張る。
するとオークジェネラルはあっさりと転倒して、後頭部を地面に打ち付けた。
「コロン!! 今!!」
「おう!!」
すぐさまオレの背後に、猛スピードで迫るコロンがジャンプして、構えた槍を下に向ける。
ドシャ!!
「ぶきぃぃぃぃぃいいい!!! ぶきぃぃ~・・・!」
コロンの下に構えた槍の先が、転倒したオークジェネラルの喉を貫く。
「よし!! 今だ!! 一斉にいくぞ!!」
ザシュ!! ドバ!! ズシャ!!
そして止めとばかりに、ギルド長他、屈強な冒険者の刃が、オークジェネラルを貫いていく。
「オークジェネラルを打ち取ったぞ!!」
ギルド長がオークジェネラルの討伐成功を告げる。
そしてオークジェネラルが息絶えると、戦意を失ったオーク達は次々と逃走を始めた。
「追いかける!?」
ズシャ!!
オレは掴まえたオークナイトを、アイアンアームで地面に叩き付けながらギルド長に尋ねた。
「いいや・・・全員深追いはよせ!! いったん砦まで引くぞ!!」
そしてオレ達は、ほとんど怪我人を出すことなく、その戦いを終えることができた。
「がはははは!! ヨッシーは大活躍だったな!!」
勝利の酒をあおり、ギルド長が叫ぶ。
「ちぇっ! ヨッシーの大魔法には敵わないな・・・」
コロンはなぜか今日の活躍がご不満のようで、不貞腐れ気味だ。
でもコロンがいたからあのオークジェネラルは倒せたようなものだ。
もっと胸をはってもいいと思うのだが・・・
その夜は砦で勝利の祝宴となった。
冒険者は全員酒をあおり、仲間と健闘を讃え合っている。
「コロンだって、オークジェネラルの止めに加われたし、沢山のオークを倒したんだろ?」
「ふん!! ワタシももっと修行して強くなってやる!」
そう言いつつ焼きたての肉に食らいつくコロン。
今皆が酒宴で食べている肉は、オークの肉だ。
初めは人型の豚なんてと嫌厭していたオレだったが、いざ食べてみるとこれがなかなかに美味い。
次はトンカツにして食べてみてもいいかもしれない。
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