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08:緊急依頼


「おうヨッシー、コロン。緊急の依頼があるんだ。今日は狩りに行かずに残ってくれないか?」


 

 オレとコロンがいつものように、朝の狩りに出かけようとすると、ギルド長に足止めされた。



「表で他の連中と待っていてくれ、もう少し集まれば、説明するから」



 ギルド長の言う表とは、たぶんギルドの前にある広場のことだろう。

 オレとコロンが広場に行くと、すでに多くの冒険者でごったがえしていた。



「どうやら緊急依頼らしいぜ?」


「この人数・・・この街の冒険者が全て集まってないか?」


「冒険者全員を集めての緊急依頼といやあ・・・もしかして・・・」


 ざわざわ・・・



 そこからは冒険者の様々な憶測の意見が聞こえてくる。

 オレとコロンもその様子を見て、これはただ事ではないと思い始めていた。







「いいか!? お前ら聞け!!」



 すると十分な数の冒険者が集まったようで、ギルド長の話が始まった。



「実は最近の調査によってわかったんだが、ここから南数キロほど先に、魔物の群れがいることがわかった・・・」


 ざわざわ・・・


「魔物の群れだってよ・・・」


「まさか・・・」



 そのギルド長の発言に、冒険者達がざわつく。



「こほん!!」



 そのギルド長の咳払いとともに、冒険者達が再びギルド長に注目する。



「突然だが、オーク1000余りの群れが、この街に向けて進行中だ」



 おい! それかなり危険な状況じゃねえか・・・



「げえ! 嘘だろ!?」


「この街の冒険者が対処できる許容範囲を超えているぜ!!」



 そのギルド長の発言に、冒険者達が騒ぎ立てる。


 この街の冒険者は1000人ほどいるらしい。

 オーク1体の腕力は、人間の腕力をはるかに凌駕し、1体に対して3人がかりで挑むそうだ。

 それが1000体となると、すでにこの街の冒険者の許容範囲を超えているといってもいいだろう。



「なんてこった!? この街はもう終わりだ!!」


「どうすんだギルド長!! まさか俺達だけでそれを討伐するって話じゃねえよな!?」


「騎士団の派遣はないのか!?」


「そうだそうだ!! そのために高い税金払ってんだ!!」



 確かこの国の軍隊のエリートにあたるのが騎士だったと思う。彼らは魔法と剣を使いこなす、優秀な戦士だと聞いている。

 その騎士達の助勢があれば、このオークの数でもなんとかなるかもしれないということなのだろう。



「騎士は別件で他の場所に派遣されていて、直ぐには帰ってこれねえっていう話だ。だからそのオーク1000匹は、俺達で対処しなくしゃなんねえ。

 逃げてえ奴は逃げてもいいが・・冒険者として生きていきてえなら、ここから逃げ出すことは出来ねえはずだ・・・」



 この街がオークの襲撃を受け、滅べば、おそらく冒険者ギルドの責任にもなるだろう。

 その時逃げ出して戦っていなかったとすると、その冒険者には街を魔物から守る立場でありながら逃亡したとして、最悪罪に問われるだろう。良くても信頼を失い、冒険者はもう続けられない。

 そうなるとオレ達はこの街を守るために戦う以外の選択肢はないのだ。

 その思いが、ここにいる冒険者全てにあったはずだ。


 そして覚悟が決まったのか、騒ぎ立てる冒険者はいなくなった。



「街長の私兵300余りでこの街を守る。俺達冒険者は南にある砦で、オークどもを迎え撃ち、出来るだけその数を減らせとのお達しだ・・・」



 なんだその命令? オレ達に死ねとでもいうのだろうか?



「コロンどうする?」



 オレはコロンに意見を求めた。


 その一言には、オークを倒すために冒険者とともに砦に向かうか、なんとかこの無茶な依頼を反故にして、この街から逃げ出すかという意味が含まれている。



「ワタシは当然戦う!」



 ですよね~・・・



「ヨッシーは逃げてもいいぞ。

 子供であることを理由にすれば、罪に問われずに、この依頼を断れるはずだ」



 確かに子供であることを盾にとれば、この依頼を断れる可能性はあるが、それだとこの街を見捨てるような感じがして嫌だ。



「いや。オレも行くよ」



 それになによりオレは、そのオーク1000に対する対抗手段を、このスマホであれば作り出せると思っている。



「正直幼いお前に頼るのは気が引けるが、引き受けてくれてほっとしている。お前の『英知』をあてにしているぞ?」



 気づくとギルド長はオレの近くに来ていて、オレの言葉を聞いていた。

 まあスマホに戦闘に関する知識が、あるかどうかわからないが、戦う手段なら他にもあるのだ。





 そしてその日の内にオレ達冒険者は、ぞろぞろと列を作りながら、その南の砦を目指した。

 ちなみにオレは皆について行けそうにないので、ガタクリ一号に乗る。

 ガタクリ一号には、砦で使いそうなものを購入して、袋に詰めてのせている。



「副ギルド長のオーレリアよ。よろしく」



 副ギルド長はメガネの似合いそうな、キャリアウーマン風の人だ。

 ギルド長とコロンが当たり前のように、ガタクリ一号の荷台に立ち乗りし、なぜか助手席に副ギルド長のオーレリアさんが乗り込む。


 最後尾の方で、食料などの必要物資を積んでいる大きな馬車があるが、その馬車の御者を一人寂しく務めているギルド職員の若い男性が、こちらをジト目で見ている。

 ギルド長と副ギルド長は、あちらに乗らなくてもいいのだろうか?


 そして街を出て4時間ほど歩くと、南の砦が見えてきた。





「コロン! 少し中を見て回ろうぜ!」



 南の砦に到着すると、オレはまっさきに砦に入った。

 まず砦の見張り台を目指すのだ。

 その見張り台からは、オークがやってくると思われる道がよく見える。


 南の砦は想像通り堅牢な造りで、その先は岩山にはさまれた、通路のようになっていた。

 あの通路なら、人が横に10人、オークなら5人くらい並べば限界だろうか?

 どっちにしろその幅は、オレのこれから使う罠にとっては都合がいい。



「おいおい! あまりちょろちょろと歩き回らないでくれ。これから先は俺の指示に従ってもらわなければ困る」



 オレがコロンと見張り台から岩山の通路を見ていると、ギルド長が階段を上がってこちらにやって来た。



「これからオークの群れを一掃するための魔法を作ろうと思うんですけど、秘密もあるので、ギルド長には色々と手助けをお願いしたいんですけど?」


「大魔法だと? いったい何をおっぱじめるつもりだ?」



 オレは困惑するギルド長とコロンを連れ立って、岩山の方へと向かった。




 残りポイント:34427

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