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06:青空教室

 翌週からオレは、教会に文字を習いに行くことになった。



「コロン。それじゃあいってくるけど、コロンはどうするんだ?」


「ワタシはこれからギルドで知り合った奴らと、武器の鍛錬の約束があるんだ」



 コロンはコロンで、ギルドでいろいろと交友関係を深めて、今日は強い冒険者パーティーに交じって鍛えてもらうそうだ。


 オレは昨日購入した白いワンピースを着て、いつもの鞄をお腹に抱えて、近くにある教会を目指す。

 教会は冒険者ギルドを出て、右に進んですぐの大きな曲がり角を、右に曲がると見えて来るのだ。


 オレはもしものためにと、靴底に板を張り付けて、その板を操作しながら、たまにスケートのようにすいすいと滑りながら移動する。この板の制作には800ポイント使った。



 残りポイント:34527



 教会へ近づくと、そこには多くの子供達が、教会に向かう姿が見えた。

 送り迎えの大人達もいるようで、母親や父親に手を引かれてやってくる、子供の姿も見える。

 中に入ると子供達の列が出来ており、寄付の順番を待っているようだった。



「これは寄付です」


「はい。貴女に神のご加護があらんことを・・・」



 寄付には最低銅貨3枚が必要なようだ。オレは孤児で、悪目立ちはしたくないので、銅貨3枚を支払っておいた。


 寄付を払い終えると、教会のすぐ横にある広場に向かうようだ。

 列について行くと青空教室にたどり着いた。

 そこには簡単な造りの、木の長椅子がいくつか用意されており、授業はそこに腰かけて行うようだ。

 オレは昨日ギルド長に借りた、小さな黒板とチョークを用意して、適当な場所に腰かけた。



「ねえ。貴女何処の子? 見ない顔ね?」


 

 するとさっそく女の子のグループに話しかけられた。


 全員オレより年齢は上のようで、頭一つ分くらい背が高い。

 コロンと同じくらいの年齢だろうか?

 あまり目立たないようにしたかったのだが、オレのような銀髪はあまり見かけないので、珍しいのかもしれない。



「初めまして、オレはヨッシーです。オレ・・・今日初めて文字を習いに来たんです」



 オレはとりあえず立ち上がり、恭しくお辞儀をした。



「まあ。随分とお行儀がいいのね? 住んでいる場所は言えないのかしら?」


「いえ。オレは孤児なので、住んでいる場所というのはちょっと・・・」


「あら? ではこちらの教会にお住まいなのね?」



 オレが孤児と聞いて、孤児院の役割もしている、この教会に住んでいると思われたようだ。

 まあ冒険者ギルドの空き地に、家を建てて住んでいるなんて言われても、信じてくれそうにはないが・・・



「それでは授業を開始しますので、皆さん席についてください」



 丁度そのタイミングでこの教会のシスターが、授業のために大きな黒板の前までやってきた。


 授業はまず文字の読み書きからだった。

 オレのような幼い子供は、文字をひたすら黒板に書いて反復練習していくのだ。

 文字は英語に近い感じだったが、それよりも簡単に思えた。覚えるのにはそう苦労しないだろう。


 続いての授業は数学だった。

 数字を覚えるのに少し時間を要したが、計算自体は簡単な内容ばかりで、あまりやる意味はないように感じた。


 そして最後は地理や歴史の読み聞かせだ。

 異世界の過去の英雄の話は面白かったし、王族の名前や、この領地を治める貴族の話が出て来た。

 この国の初代国王の名は、エマニュエルというそうだ。その他8人の妃の名前や序列が出て来たが、興味が無いので覚えていない。


 この領地を治めるのはパーシヴァル伯爵という貴族で、この領地の中央の街に住んでいるそうだ。

 税金は高く、領地は貧しく、その話からそのパーシヴァル伯爵に対しては、あまりいい印象を受けなかった。


 そして授業は朝のうちに終わり、その後しばらくは、子供達の交流の時間となるようだ。

 オレはへんな子供に絡まれないように、早々に立ち去ろうとしたが、そうはいかなかった。



「待てよお前! 見ない顔だな!?」


 

 オレの前に立ちはだかったのは、両側に子分らしき子供を引き連れた、ガキ大将風の大柄な子供だった。

 こいつらはいじめっ子か何かだろうか?

 どっちにしろただで通してくれる雰囲気ではないぞ。



「オレに何か用ですか? 用がないならその場所をどいてくれますか? もう帰るので」


「俺に命令すんのか? 生意気なチビだぜ!」



 そう言うとガキ大将は、オレの前にずいと出てきて、鈍い動きでオレの胸を右手で押そうとしやがった。


 オレは靴底に付けている、小さな板を操作して、少し右に滑るように移動するとその押し出した右手を躱す。

 そして最近見つけたスマホの機能、パーティクル生成を起動した。


 このパーティクル生成は、燃える火をスマホで撮影して、画像ファイル化して取り込んだ時に見つけた機能だ。


 火や光、煙などの物質でない物は、画像ファイル化すると、アニメーションのように動く画像となって、スマホに取り込まれるのだ。

 それは制作スクリプトにより自動生成も可能で、座標を決めて移動するように生成を繰り返すことで、気体などを噴き出すことも可能なのだ。


 オレは煙を指から出して、ガキ大将達を目くらまししてやった。

 ちなみにパーティクル生成は制作スクリプトに100ポイントかかるのみと、なかなかに格安なのだ。



 残りポイント:34427



「え!?」「うお!」


「何だ!? 煙か!? ごほ! ごほ!」



 目の前に急に煙が発生して、オレを見失うガキ大将と子分たち。

 そのまま滑るように接近して、中央にいたガキ大将を、体当たりで押してやった。



 ズドン!



 スマホの物体を操作する力は強い。

 オレにもけっこうな衝撃が来たが、ガキ大将は尻もちをついて、転倒した。



「お前いったい何をした!? 今のは魔法か!?」



 煙が晴れるとガキ大将は、尻もちをついたままでオレに尋ねてくる。

 オレが魔法を使えることは、冒険者内ではけっこう有名らしいので、ここでばれても問題あるまい。



「まあね。オレ魔法使いだから」



 オレは空に向けて指先から、煙をモクモクと出しながら言った。



「ちっ! それじゃあこれ以上手は出せねえな。父ちゃんから魔法使いは恐ろしい奴らだから、手を出すなって言われているからな」



 ガキ大将は立ち上がり、服についた砂を払いながら言った。



「でもお前気に入ったぜ! 俺はバリーてんだ! お前オレの子分にならねえか!?」



 いや。今の流れで何でオレがお前の子分になるんだ?



「お断りします。そういうのはコロンで間に合っているので・・・」


「げっ! もしかしてお前あのコロンの子分か!?」



 あのコロンとはどういうコロンだろうか?

 コロンは以前にもこの街に住んでいたようだし、色々とやんちゃな武勇伝があるのかもしれない。



「まあ、コロンはオレの姉貴分みたいなもんです」


「ちっ! コロンの子分かよ!

 コロンの子分に手を出したら、またあの猛牛みたいな怪力で投げ飛ばされちまう」



 猛牛か・・・確かにあのコロンの角は猛牛のように見えなくもない。



「お~いヨッシー! 狩りに行くぞ!」



 噂をすれば猛牛コロンが、オレを狩りに連れて行くために、迎えに来たようだ。



「げ! コロンだ! 逃げろ!」



 そう言うとガキ大将達は、一目散に逃げて行った。



「何だヨッシー。あいつらに遊んでやっていたのか?」



 コロンは平然とした様子で、そう尋ねてきた。


 もしかしたらコロンが彼奴らを投げ飛ばしたのも、遊びの一環だったのかもしれない。



「こら! バリー! 遊んでばかりいないで、お店を手伝いなさい!」


「げっ! 姉ちゃん!」



 そういうガキ大将はお姉さんらしき少女につかまり、強制送還される最中だった。



「あら? もしかして貴女コーラの子?」



 するとこちらに気づいたお姉さんが、オレに話しかけて来た。

 なぜこのお姉さんはコーラを知っているのか?


 そのお姉さんは高そうなドレスを着こんでいる。どこかの令嬢だろうか?

 とてもガキ大将のお姉さんとは思えない。考えられるのはあのコーラを売ったアンブラー商会の商人のおじさんの、娘さんではないかということだ。



「もしかしてアンブラー商会のおじさんの、関係者の方ですか?」



 オレは少女にそう尋ねた。



「ええ。父に貴女の特徴を聞いていたものだから。すぐにわかったわ。」



 前世のオレは、地味な顔立ちで小太りだったのは覚えているが、今のオレの容姿はそんなに特徴的だろうか? 精々目立つのは銀髪くらいだと思うのだが・・・銀髪ならたまにそのへんで見かけるし・・・



「あの・・オレの容姿ってそんなに特徴がありますかね?」



 オレは気になったので、とりあえず自分の容姿について、お姉さんに尋ねてみた。



「ええ。父に聞いていた通りの特徴よ。

 長い銀髪の小さな女の子。容姿いいのになぜか目はいつも眠たげで、それでいてどこか自信のようなものを感じる賢そうな子」


 

 なんて失礼な特徴の捉え方だ。



「ああ!」



 コロンもそこで納得しない!



「そうか~? 俺は顔だけはいいと思ったがな?」


 

 君も大概失礼だよガキ大将くん!!



「今から貴方達も一緒に食事などいかがかしら?」



 今は丁度昼前だ。前世でいえば丁度お腹の空いてくる時間だ。

 お姉さんはオレ達にそう提案してきた。


 

 ぐぅぅぅ~


 

 そしてそれに答えるように、コロンが空腹を訴える。



「うちのコロンは大食感ですよ?」


「あら? そんなのリサーチ済みよ?」



 オレがそう言うと、お姉さんはすぐにそう返してきた。

 どこでそれをリサーチしたか知らないが、オレ達はその誘いを受けることにした。



「わたくし名前をローレッタと申しますのよ。アンブラー商会会長の長女ですの」



 お姉さんはまず最初に自己紹介してきた。

 それにしてもあの商人のおじさんが、アンブラー商会の会長本人だったなんてね・・・



 残りポイント:34427

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

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 と感じた方はぜひブックマークと評価をお願いします。

 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

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