05:ギルド長の相談
「で? オレに相談って何ですか?」
狩りの後オレは、ギルド長に呼びだされて、冒険者ギルドの執務室にやって来た。
コロンは貰った報酬で一階のバーに行き、さっそく大食いを始めているようだ。
「実は今冒険者の間で流行っている病があってな・・・相談したいんだ」
流行病い? 感染症か何かだろうか?
だとしたらこれはオレの領分じゃなくて、医者の領分だと思うのだが・・・?
「相談する相手が違うのでは?」
「それは重々承知だ。
ところが医者がすでに諦めちまっていてな。呪いか何かじゃないかといい始めている奴もいる」
呪い? だとしたらそれこそ全く理解不能だ。
「そこでだ・・・お前のギフト・アーティファクトの、英知に問いたいんだ」
英知とはスマホの機能で、前世の知識を検索するものだ。
確か医療知識もあったので、薬とか以外ならなんとかなるかもしれない。
しかしそれには患者の症状を聞かないことにはどうにもならない。
「患者の症状は?」
「そうだな・・・体が怠いと言っていたな・・・あと皮膚が乾燥する、太ももに大きな痣が出来る。
あとは皮膚からの出血かな・・・最終的には皆、やせ衰えて死んでいくんだ。何かの呪いじゃないかと噂されている。」
太ももの大きな痣で思い当たる病気といえば、あの船乗りの病気だ。
それはビタミンC欠乏症といわれる病、壊血病だ。
まあスマホによると、似たような症例を持つ病気は他にもあるらしいが、この世界には病気の検査機関なんてあるとは思えないし、まずは壊血病を疑ってみるのがいいだろう。
「それはおそらく壊血病ですね」
「壊血病?」
「生野菜や果物を長期間とらないと、ビタミンCという栄養が不足して、かかる病です。
生野菜や果物を毎日必ず食べてください。念のためにこれも出しておきましょう。」
オレは通販ショップで、ビタミン剤90日分500円を購入した。
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「これは?」
「ビタミンCという栄養をつめた薬です。
これを朝晩一錠ずつ飲んで効果がでれば、それは間違いなく壊血病でしょうね。
身近な患者にでも試してみてください。」
壊血病はビタミンCをとり始めて、早くて数日、遅くても数週間で効果がでると検索すると出て来た。
その薬を試して効果が出れば間違いなく壊血病だろう。
「わかった。それで薬の代金はどうする?」
「代金はその薬が役に立ったらいただきますよ」
医者でもないオレが、薬が効かないのに、お代だけいただくのは詐欺みたいな感じがして嫌なのだ。
「次にもう一つだ・・・」
まだあるのか?
「冒険者の中には料理の苦手な奴もいるんだ。
そんな奴は野営では干し肉や堅パンをそのままかじるんだが、そんな状況でも美味しく食べたいという奴もいてな・・・」
つまり美味しいくて簡単な野営料理を知りたいということだな?
「う~ん・・・ちょっと待ってくださいね・・・」
オレはまず干し肉の美味しい食べ方を検索した。
その中で一番簡単で美味しそうなのが、干し肉を薄切りにして、炙るというものだった。
次に堅パンを検索すると紅茶につけて柔らかくすると、香りもよくなるというのがあった。
オレはスマホで色々と検索しながら、その内容をギルド長に伝えた。
「なるほど・・・単純だが面白い方法ばかりだな」
ギルド長は相槌をうちながら、その内容を羊皮紙に書いていく。
その内容はこのギルドにおける、野営料理の簡単マニュアルになるらしい。
冒険者の新人研修などもあるようなので、それに織り交ぜたりもするようだ。
「冒険者の新人研修って、オレ達にはないんですか?」
考えてみればコロンはともかく、オレは新人冒険者だ。
ぶっちゃけ今日が冒険者活動初ともいえる。
「それならさっきやったろ?」
「ええ?」
どうやらギルド長が付き添ってのあの狩りは、冒険者新人研修だったようだ。
それでは野営の訓練とか、マニュアルとか知らないのだが、その辺りはどうなっているのだろうか?
「コロンからは聞いているが、そもそもお前達は4日ほどかけて、野営しながらこの街に来たと聞いている。
そんな奴らに野営の訓練が必要か? 狩りだけで十分だろ?」
言っている内容はもっともだが、なにか腑に落ちない感じもする。
まあこれから野営の試験とか受ける気はないので、黙っておくが・・・
「ところで冒険者ランクとかよくわからないんですけど・・・」
「ああ。そうか、お前は文字が読めないんだったな・・・」
ギルドカードには何やら見覚えのない文字が書いてあるが、オレにはその文字の意味が、全く理解できなかった。
そこでギルド長が冒険者のランクについて教えてくれた。
F:見習い冒険者。付き添いの冒険者の下に、薬草採取などをする。
D:新人冒険者。魔物狩りを許可された冒険者。
C:ベテラン冒険者。中堅層。冒険者の中で一番数の多い階級。D級を一年務めるか、条件次第でこの階級に昇給する。
B:C級の中でもさらに抜きんでた者のみが選ばれる。貴族からの指名依頼などもある。
A:冒険者の中でも最高位の存在。国からの指名依頼もある。
冒険者の階級については以上だった。
ちなみにSランクは伝説の冒険者とかいうのがそれにあたるらしいが、Sランクは階級には存在しないそうだ。
そしてオレはいきなりDランクからだそうだ。コロンはFからの昇格だ。
基本的に冒険者新人研修は、FからDに上がる時にあるそうなので、オレのランクの飛び級は特別扱いなのだろう。
「お前がもし文字を覚えたいのなら、教会にいってこい。
そこでは孤児に混ざって、文字を学ぶことも出来るんだ。一定の寄付は必要だがな。」
ギルド長は説明の最後にそう締めくくった。
教会での文字の講習は週に2回、朝からあるようだ。
その日だけコロンに頼んで、昼からのみの狩りにすれば問題なく文字を習いに行けるだろう。
そしてオレは報酬の大金貨1枚を受け取り、少し戸惑っている。
「これ貰いすぎじゃないですかね?」
「情報はお前が思っているより価値がある。覚えておけ」
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