34:ナジェル帝国との和平交渉
クラウディア皇女視点~
「な、なんなのですのこの超魔道都市は!?」
そこは帝都もかすむような、超魔道都市だった。
その様子は、女神の名を冠する名・・・・ユースティティアに恥じない壮大さだ。
わたくしは同行した帝国の者たちとともに、不思議な浮遊する乗り物に乗せられ、そのユースティティアの街に案内されてきたのだ。
天に届かんばかりの建造物に、きらびやかに街を演出する、色とりどりの光・・・・。
まるでそこは別世界のようだった。
「あの天に届かんばかりの偉大な建造物は何でしょう?」
わたくしはまくし立てるように、小さなヨーレシア伯爵に尋ねる。
あれほどの建造物を目にすれば、誰もが圧倒されるのは確かだ。
きっとこの街の権威の象徴にちがいない。
「あれはオフィスや住宅、ビジネスホテルなどです」
「ビジネ・・・? 何です?」
「ここ最近人口が急激に増加したために、あのような施設を建設したのですよ。また仕事も多岐にわたりますので・・・・。この街はあまり面積が広くないので、あのような建物があれば、効率がよいのです」
どうやらヨーレシア伯爵は、あの権威の象徴たる建造物を、平民のための施設としているようだ。
やることがぶっとびすぎていて、もうわたくしには理解が追いつきません。
「あの飛びぬけて高い建造物は、もしやヨーレシア伯爵のお屋敷でしょうか!?」
なんと驚くべきことに、この街にはさらに高い建造物があったのだ。
「あれは電波塔です。遠話の魔道具を円滑に使うために建設したのですよ」
「遠話の魔道具ですか? もしやそれはアーティファクトでは!?」
遠話の魔道具とは、遠くの相手と会話するための道具だ。
その希少性から、所有者の数も少なく、話す相手もまずいないため、コレクターが所持しているくらいで、実用しているしている様子は見たこともない。
「いえ・・・。そこまで珍しいものではありません。この街の貴族か、重要なポストにいる人物ならば、だいたいは持っていますよ」
ヨーレシア伯爵は、自らの所持している遠話の魔道具を、見せつけながらそんなことを言った。
その黒光りする美しい板は、とても不思議な雰囲気を醸し出している。
もしかしかしたらこの街では、遠話の魔道具の開発を成功させているのかもしれない。
だとしたらすごい技術力と、言わざるを得ない。
「話はわたくしの自宅で聞きましょう・・・・」
そう言ってヨーレシア伯爵が案内してきたのは、彼女の自宅である立派な城だった。
伯爵程度の領主が、なぜここまで立派な城を建てることが出来たのか、不思議に思えてならない。
もしかしたらヨーレシア伯爵は、この国の王族以上の、権力者なのかもしれない。
ヨッシー視点~
「それではお話を伺いましょう」
自宅の会議室に案内してきた、代表のクラウディア皇女と、その横に座るオドケル伯爵に、早速このヒュロピア領にやってきた、目的を尋ねてみた。
「我々ナジェル帝国は、ルエパラ王国との和平交渉を望んでいます」
突然攻めてきたと思ったら、即座に和平交渉を持ち掛けてきた。
いったいそこには、帝国のどのような、意図があるというのだろうか?
とにかくここは王族に報告して、和平交渉をどうするかを、尋ねる必要がある。
「承知しました。これより王家に確認いたしますので、少々お待ちください」
オレはそう言うとスマホを手に取り、レーティシア姫につなげた。
『ようやくかけて来たわねヨッシー。話はだいたいフロランスからの報告で把握しているわ』
オレが帝国の方々の応対をしている間に、フランちゃんがレーティシア姫に、この事態を報告していてくれたのだろう。
何も言わなくても、必要なことをしてくれるのがフランちゃんだ。
流石フランちゃんは出来る娘だ。
『会議の結果が出るまでに数日はかかるでしょうから、それまで使者の方々には、そちらのユースティティアの街でお待ちいただいて』
「承知いたしました」
オレが通話を終了すると、帝国の方々が、その様子を目を丸くして見ていた。
彼らに遠話の魔道具を使う様子を見せたのは初めてなので、少し驚かせてしまったようだ。
この後ルエパラ王国とナジェル帝国との間に和平交渉が始まるのだが、このユースティティアの街が、その平和交渉の場所として選ばれてしまったため、その間は多忙な毎日を送ることになった。
交渉のためにやってきた皇帝陛下に呼び出され、勧誘されたり、根掘り葉掘りとあれこれ聞かれたり、王族や貴族の相手をさせられたりと、少々疲れることも多かったが、無事にルエパラ王国とナジェル帝国の和平は成立することとなる。
「帝国はドラゴニール王国と和平交渉を結び、ドラゴンをテイムする技術を盗んだ後に、突然和平条約を破り、戦端を開いたという前例があるわ。そのことを努々忘れないことね・・・」
ユースたんが和平条約締結後に、そんな意味深なことを言って来たが、オレのスマホの謎技術を解明することなど、果たして帝国にできるものなのだろうか?
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