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28:ヒュロピア領の視察後編

 ピポピポピポ・・・・


「いらっしゃいませ!」



 あれから製麺研究所に案内させられたり、アニメシアターで、聞き語りをやらされたりと、色々あったが、最終的に案内させられたのがこのお店だった。



「えっと・・・・王族自らこのようなお店で買い物というのもどうかと思うのですが・・・・」



 ちなみにこのようなお店とは言ったが、けっしてコンビニを侮っているわけではない。

 王族とは普段自ら買い物などには行かず、王宮に商人を呼び出し、欲しい商品を持ってこさせるものなのだ。

 例え商人を呼び出せない状況であっても、そこは使用人に買いに行かせるものだ。

 それが自ら買い物をするなど、普通はあってはならないことだ。


 それを籠を片手に、鼻歌交じりにレーティシア姫自ら、買い物を始めたのだ。

 それを見ているお付きの方々も、とても気が気でない様子だ。



「何を言っているのですかヨッシー! この巨大なアーティファクトの中を、自ら見て歩かないなどという選択肢は、わたくしにはありませんよ!」



 どうやらレーティシア姫は、コンビニの建物を、アーティファクトと見ているようだ。

 確かにこの異世界に場違いなこの建物は、アーティファクトに見えなくもない。


 だからと言って自ら買い物に入るのも、なんだと思うのだが・・・・。



「見ろ! ここは宝の山か!? 見たこともないような酒が沢山あるぞ!」


「こちらには冷やした酒もあるのか!? この鉄の器はアーティファクトの器か!?」


「これは全て酒のつまみなのか!? 目新しいものばかりだ!」



 そんなことを言って、お酒のコーナーで騒いでいるのは、酒好きのヴァレリアン侯爵とバートム伯爵だ。

 店員をよびつけて根掘り葉掘り質問しているようだ。

 そろそろフォローに入った方がいいだろうか?



「こちらの生活用品は全てアーティファクト製なのか? 便利そうな道具ばかりだな・・・」



 生活用品を手に取って見ているのは、シャルちゃんのお父さんのリュシアン侯爵だ。

 このおじさんは貴族というよりは、商人らしい気質がある。

 アイデアを真似て、商売につなげようとでも、思っているのかもしれない。


 まあそのいくつかは、すでにバリーが真似て、商品として販売しているがね。



「肉まんにはこんなにも沢山の種類があったのだな!? 全種類くれ!」



 国王はオレが肉まんを上げてから、大好物になっているんだよね。

 この日は王族が来るということで、多めに肉まんを揃えておいたのだ。



「見てあなた! この厚織りタオルの肌触りのいいこと!」



 コンビニの商品は、基本ビニールなどに入れてあり、触ることは出来ないが、うちでは中身を見本として用意しているのだ。

 王妃はそのタオルに、興味を示したのだろう。

 このタオルもふんわりとした肌触りで、この国の技術では、再現できない質感なのだ。

 


「このシュークリーム全部いただくわ!」



 デザートコーナーで、そう叫んでいるのはレーティシア姫だ。

 シュークリームはうちの女性陣にも、なぜか大人気なスイーツだ。

 店頭に並べたそばから、次々と完売している。

 この日は王族の来店に備えて、冷凍ストックしていたものを、いくつか戻しておいたのだ。

 まあ今全部なくなったがね・・・・。



「見ろこの菓子の種類!」


「まあ!! 甘味がこんなに沢山!」



 あれはお隣の領地の、マクシミリアン夫妻だね。

 お菓子コーナーで仲良く商品を見ているようだ。

 籠の中にはすでに山済みのお菓子があるね。

 お買い上げありがとうございます。


 この後イートインでは、甘味の品評会が始まったり、酒盛りが始まろうとして、注意したりと大変だった。

 うちのコンビニのイートインでも、飲酒は禁止しているからね。

 イートインで酒盛りでも始められると、どんちゃん騒ぎで、周囲の他のお客さんに、迷惑がかかってしまうのだ。

 それに飲酒運転の引き金にもなりかねない。

 うちの領地には浮遊魔道車が多いし、飲酒運転での事故も、いくつか発生している。





「予想以上の発展ぶりで驚いたわヨーレシア伯爵」



 レーティシア姫は優雅にカトラリーを使い、ステーキを口に運びつつオレにそう言った。


 現在は視察を終えた、視察団を城に招き歓待の途中だ。

 歓待は城の4階にあるパーティー会場で行い、ステーキをメインとした夕食と、多くの果物を用意してみた。


 ちなみにこのステーキは、少し高めの黒毛和牛のヒレステーキだ。

 色々と料理を研究している、リュシーさんを中心とした、メイドグループが料理を担当した絶品なのだ。


 皆目を細めて、その絶品ヒレステーキを、堪能しているようだ。

 飲み物には日本酒、シャンパン、ワイン、リンゴジュースなどを用意している。



「ははは! いっそのこと王都をこちらに移してしまうか!?」


「冗談は止してくださいませお父様!」



 国王が冗談でもそんなことを言いだすと、本当に実行されそうで怖いのだが・・・・。



「ところであの航空戦力には、驚かされましたな?」



 するとゲスノール伯爵が、航空戦力の話を蒸し返してきやがった。

 このおやじはことあるごとに、あの航空戦力について、聞き出そうとしてくるのだ。

 何が何でもあの航空戦力が、反逆の意思であると主張したいのだろうか?



「ヨーレシア伯爵・・・あの航空戦力は、どれくらいの数を用意しているの?」



 それを聞いたレーティシア姫が、目を細めつつオレにそう尋ねて来た。

 航空戦力の規模により、それが国家への反逆に、足りうる戦力であるか、オレの口から話せということだろう。



「この領地で航空戦力となるものは、あれの他にはオレの黒金か・・・女神くらいなものでしょうか?」



 コロンも航空戦力と言えなくはないが、あれを果たして航空戦力と言ってもいいだろうか?

 浮遊ブーツを履き、強引に地面を蹴って飛び回るのは、航空戦力と呼べない気もする。



「それほどの数であれば、国を脅かすほどではないですね・・・・」



 レーティシア姫はゲスノール伯爵を睨みつけながらそう言った。

 その目はこれ以上オレを疑うような発言は、容赦しないというものだろう。



「ひっ! 質問の仕方が悪かったようです・・・。儂は決してヨーレシア伯爵を疑ってなどおりませぬゆえ・・・・」



 そう言ってゲスノール伯爵は、それ以降は固く口を閉ざした。

 だがこいつがこれから何をしようとしているか、レーティシア姫には筒抜けだという事実を、本人はまだ知らない。

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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