25:ユースティティアの街
この街の特産品といえば、冒険者たちが獲ってくるカーディの肉だ。
カーディとは30センチメートルほどのネズミの魔物だ。
ドラゴン騒ぎなどで、一時姿を消した時もあったが、最近は変わらずあちこちから、その姿を現している。
こいつは繁殖数も非常に多く、森はもちろん街や村、草むらや街道など、さまざまな場所に姿を見せる。
カーディの肉はここに街が出来る前から、村人によって干し肉などにされ、流通し、消費されていたようだ。
ユースティティアの街ができてからは、工場による製品化が勧められ、定番の干し肉の他に、ハムやベーコンといった加工品にも着手している。
またこの国の数々の領地で栽培されている、小麦粉の加工品についても手を出し始めた。
特にリュシーさんは中華に関する興味が深く、ラーメンに入れる麺を、造れないかと研究を重ねていたのだ。
ちなみにリュシーさんは中華に関する活躍で、最近騎士爵の爵位を賜り、このヒュロピア領にも小さな領地を持っている。
その領地には製麺研究所や、中華に関する食材の研究所があり、さまざまな商品が生み出されているのだ。
またそんな中華の研究に伴い、必要不可欠となったのが、この国では高価で手に入り辛い砂糖や香辛料だ。
そこでサトウキビと香辛料の、魔道具を使用した、ビニールハウス栽培が開始された。
この研究も順調に成果を上げているようだ。
来年にはこの領地の特産品に、砂糖と香辛料を使用した、新たな加工食品が加わることだろう。
そんな中オレも、色々なことに挑戦してみた。
ピポピポピポ・・・・
「どうかなこのお店!? 面白くない!?」
オレは現在バリーに、オレが造ったお店を見せている。
それは前世で見た、あのコンビニを模したお店だ。
「素晴らしいですヨーレシア様! とても前衛的で、効率的なお店だと思います!」
「ここ見たことないお菓子が沢山にゃ!」
「冷たいのも沢山あるにゃ!」
勿論そこには、猫メイド隊もついてきているので、賑やかなものだ。
まあ食品のほとんどが、冷凍や日持ちする物ばかりになっちゃうのが少し残念だけどね。
それでも電子レンジも置いてあるし、肉まんや唐揚げの店頭販売もできなくはない。
雑誌も置いているが、全て日本語なので、読めるのはオレくらいだろう。
イートインもついているので、そこでそれぞれが欲しい物を手に取り、さっそく試食してみる。
「この揚げた鳥肉美味いにゃ!」
「にくまんうみゃ~!!」
「揚げ芋もさいこうにゃ!!」
「甘いおかしもおいしいにゃ!」
「シャクシャク・・・。このアイスとか大銅貨一枚とかで売れないかな?」
「何を言っておられるのですかヨーレシア様・・・!」
やはり大銅貨一枚(500円くらい)ではぼったくり過ぎたか?
「それなら大銅貨5枚でも売れますよ!」
どうやらオレの設定した値段が、安すぎたようだ。
だがそれだとアイスが一つ、2500円くらいの設定になってしまう。
そんなに高くして果たして売れるものだろうか?
ところがこのアイス、大銅貨5枚の価値でもバンバン売れた。
というかコンビニの商品のほとんどが、その10倍の価格で売れたのだ。
中でも人気のあったのがデザートで、シュークリームなんかを解凍して、デザートコーナーに置いておくと、瞬く間に無くなるのだ。
その他お酒も人気があり、毎日完売するくらいだ。
そしてなぜか日本語で書かれた、雑誌もよく売れたんだよね・・・・。
写真や絵だけ見ていて、楽しいものかね?
そこで問題になったのが、コンビニから出るゴミについてだ。
「そのゴミでしたら魔石に再利用が可能ですよ」
ユースたんに相談すると、そんな答えが返って来た。
なんとオレが通販ショップで購入した物は、魔力で造られているために、全て魔石に変換可能らしいのだ。
そこでユースたんの知恵を借りて造った魔道具が、ゴミを魔石と石炭、鉱石に変える、魔石変換装置だ。
しかもこの魔道具、コンビニのゴミ以外にも使えるのだ。
まさに万物の魔石変換装置なのだ。
この魔道具の登場により、オレは効率的に、魔石を収集する手段を手に入れた。
また石炭は暖炉や竈にも使えるので、そこから収入を得ることも可能だ。
得られた鉱石も、オレが何かを造る際の素材として使えた。
「さすがに日本語ばかりじゃつまらないよね?」
「いいえそんなことはないです! とりあえずこの催しは続けてみましょう!」
オレが次に造ったのはアニメシアターだ。
アニメはバリーには好評だったが、初めて見た猫メイド隊は、画面にくぎ付けで固まってしまっていたので、これから訪れる人々の反応も心配だった。
だがこのアニメシアターにも、日本語ばかりにもかかわらず、毎日人々が詰めかけるようになるのだ。
皆絵が動く様子が不思議で面白いそうだ。
そのうち日本語を理解し、聞き語りを始める猛者が出て来たので、彼らを雇いそのまま聞き語りを任せたら、さらに来客数が増加した。
そのうち吹き替えなんかも、挑戦してみようかな?
その後アニメシアターはこのヒュロピア領の、名所のとなっていくのだ。
その頃になると、各領から斡旋されていた、使用人や兵士たちが派遣されてきた。
使用人は主に城の雑用に回し、兵士には領地の護衛をしてもらうために、各地に配属した。
そして気づけばこのアリ村も、他の村を統合して大きくなり、ちょっとした街に変貌していたんだけどね。
「ヨーレシア様。そろそろ領地のお披露目をいたしてはいかがでしょうか?」
そして一年経ったある日、パナメラがそんなことを提案してきた。
領主は賜った領地が軌道に乗り始めると、王族や周辺貴族にお披露目する機会が設けられるのだ。
そのお披露目が、その領地や領地を治める領主の、評価に関わってくるのだ。
だが領地のお披露目は、通常ならば5年ほど経過した後に行うものなのだ。
お披露目にはまだ早すぎるのではないだろうか?
「いいえ。今ならお披露目しても大丈夫だと思います」
「わたくしもシャル様と同意見です」
「私もお披露目には賛成です」
「というか一年で発展しすぎだろこの街!」
皆に意見を求めたところ、大半が賛成意見だったので、オレは領地のお披露目に踏み切ることにした。
そして急遽街の名前を決めることになった。
そこで決まった街の名前が、女神が住まう街ということで、ユースティティアの街ということになった。
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