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04:クアリーの狩場


 現在オレ達は冒険者ギルドを出て、街の外にあるといわれる、狩場を目指している。

 そこにギルド長も同伴して、オレ達の狩りの様子を見るようだ。

 そしてこれからオレ達が狩りに出ても安全か、試験しながら見ていくのだろう。


 ここで許可が出なければ、街を出るにも薬草採取などに、同行しなければならなくなる。

 そうなると冒険者の付き添いが付くので、自由に狩りなど出来なくなるのだ。

 それ以外で街を出ようとすれば、衛兵に止められるというわけだ。


 コロンがどんな手段を用いて、あの洞窟に行ったのかは知らないが、まっとうな手段では、街から出られないだろう。



「お前それ・・・何に乗っているんだ?」


「スケボーです」



 オレの歩みは遅いので、コロンとギルド長の歩行速度についていくために、例の浮遊スケボーに乗って、移動している。



「スケボーは魔力消費が少ないので、けっこう気軽に使える乗り物です」



 浮遊スケボーはスマホの電池残量を使用して動くが、歩くくらいの速度なら、魔力消費はかなり少なくて済むのだ。



「しかし目立つから、街を出るまでは使用を控えた方がいいかもしれないな」



 なるほど。周囲を見回すと、こちらへの視線が多いのは確かだ。

 明日からは靴の下に隠せるような、小さな板でも作っておくかな?





「あの森がこの辺りの狩場だ。主にウルフや角兎、ビッグボアが生息している」



 街を出てしばらく歩くと、森が見えた来た。

 ギルド長がその森を指し示しながら、生息する魔物などについて教えてくれる。


 森の手前の草原では、多くの子供達がかがみこんで、薬草採取をしているようだ。



「よう! 今からその子らの狩り試験か?」


「まあ。そんなところだ」



 薬草採取の付き添いの冒険者だろうか? ギルド長に挨拶がてら話しかけて来た。



「そっちの魔族の娘はいいが、もう一人は随分と小さいな?」



 まあオレみたいな小さな子供が狩り試験とか言われても、心配になるだけだろう。



「こいつは例の魔術師だ。心配はいらん」


「ほう? そいつが例の倉庫の?」



 あの倉庫の話は、このギルド長の口からわりと多く広まっているようだ。

 ただオレは魔術師ということになっているみたいだ。

 例のスマホについては、秘密にしてくれているようで助かる。



「コロン。あの角兎を仕留めてみろ・・・」


「ああ。了解・・・」



 森に入るとさっそくはぐれと見られる角兎が姿を現した。

 その角兎を指さしながら、ギルド長がコロンに指示を出す。



 チュチュチュン!


 

 その角兎に、コロンの水の弾丸が三連発で放たれる。


 

「よし! 仕留めた!」



 その水の弾丸の一発が見事頭に命中して、角兎は逃げようとする勢いで、転がるように倒れた。



「何だ今のは? 分散型の水の矢のようだが、よくあんな発想が出来たな?」



 この水銃は、コロンがスマホで銃の動画を見て、そのイメージを水魔法で再現しようとして、編み出した魔法だ。



「ワタシの知識じゃない。ヨッシーのスマホの英知を見たんだ」


「英知だと? そのギフト・アーティファクトには、そんな力もあるのか?」


「あの・・・あんまりオレの力をばらさないでもらいたいんだけど?」


「そのおっさんならその力に、すぐに気づくと思うぞ」



 まあギルド長の観察眼は鋭そうだし、すでに気づいていた節もある。

 あまり驚いていないのがその証拠だ。



「英知ねえ・・・後で俺もお前に相談してもいいか?」


「いいですけど・・・場合によってはお金取りますよ?」


「もちろん報酬は払わせてもらう」



 知識はお金だ。知識によって発明品を作って莫大な富を得たり、その知識で、商売に成功することだってあるのだ。なので知識に応じた報酬が発生するのは当然だ。






「見ろ。ビッグボアだ」



 ギルド長がそう言うと、オレ達は即座に草むらに伏せて隠れる。



「あれがビッグボア? 小さくないですか?」


 

 オレが以前見たビッグボアは、体高2メートルはある大物だった。

 なのにあのビッグボアは、体高1メートルあるかないかくらいだ。



「あれが小さいって、お前ら今までどれだけの大物を狩ってきたんだ?」


「あ・・・動き出しますよ・・・」



 するとビッグボアは、こちらに向きを変えた。



「気付かれたな・・・突進してくるぞ!!」



 ギルド長がそう言うや否や、オレはあの2メートルはあろう、アイアンアームを起動した。



 ガキーン!!



 オレは前に出ると、ビッグボアの突進をアイアンアームで受け止めて、軽く掴んで持ち上げた。



「ブギー! ブギー!」



 ビッグボアは暴れるが、掴み上げたアイアンアームは揺らぎもしない。



「思ったより大した突進じゃないね?」



 その突進は以前出会ったあのビッグボアのような、迫力も勢いもなく、受け止めるのは容易いように感じたのだ。



「な・・何だその腕は・・・?」



 その巨大なアイアンアームを見て、ギルド長が驚愕する。



「コロン。こいつオレがこのまま地面に打ち付けて倒す? それともコロンが(とど)めを刺す?」



 このままこのビッグボアを頭から地面に打ち付けて倒してもいいのだが、それだとこの獲物も、痛んでしまう可能性がある。



「あの槍をくれ。ワタシが(とど)めを刺す」


「おう!」


 ストン!



 オレがスマホから槍を出すと、槍が出てきて地面に刺さる。

 すぐさまコロンは、地面に刺さった槍を手に取り構える。



 ずど!


「ブギ~~~・・・」



 そしてコロンは槍でビッグボアを一突きにして、(とど)めを刺した。



「小物だけど良かったね?」


「小物じゃねえ! そいつはけっこうな額で売れる!」



 オレがそう言うと、ギルド長がそう言って突っ込んで来た。


 まあ体高は一メートルと小さいが、それなりに太っていて、全長は150センチメートルくらいあるようだ。



「運ぶのはどうすんだ? 何人か連れて来ようか? それともそのでかい腕で掴んで持っていくのか?」


「いや。ガタクリで運ぶんで大丈夫です」



 オレはガタクリ一号を出すと、アイアンアームでビッグボアを掴み上げ、ガタクリ一号の荷台に乗せた。



「何だそりゃ? もしかして乗り物なのか?」


「はい。これは浮遊型の乗り物なんです。速度さえ出さなければ、かなりの距離を走れますよ」



 ガタクリ一号のスマホの電池消費は、今のところスピードを出すほど多くなることが分かっている。

 なので徐行して走らせて、スマホの電池消費を節約するつもりだ。





「コロン。解体のやり方教えてくれよ」


「いいぞ!」



 いったんビッグボアの解体をするために、オレ達は安全な平原に戻って来た。

 血を抜き終わったビッグボアを、コロンが色々と解説を交えながら器用に解体していく。



「頭のこの辺りに魔石があるんだ」



 え? ビッグボアの魔石って頭にあったの?

 前のビッグボアは大物だったのに、頭はいらないと思って捨ててしまっていた。

 なんという勿体ないことをしてしまっていたんだ・・・


 コロンが首の切り口の額に近い部分に、切れ込みを入れ器用に魔石を取り出す。

 すると関所で支払っていたものの、二倍はあろう大きさの魔石が出て来た。



「この魔石はどれくらいの価値があるの?」


「その魔石自体にはそこそこの価値しかないが、ビッグボアは骨も皮も売れる。一番価値があるのはその肉だがな・・・」



 次にコロンの指示にそって、オレが角兎の解体に挑戦してみた。


 基本的にビッグボアも角兎も体の構造は同じのようで、先ほどのコロンの解体を手本に、不器用ながらもそれなりの形に解体することができた。



「ギルド長」


「何だ?」


「獲物はどこに売ればいいですか? 冒険者ギルドでいいのかな?」



 前世で狩猟なんてしたことはなかったし、売るとしても何処に売ればいいかよくわからない。

 この異世界ではどうしているのだろう?

 ラノベなどでは、冒険者ギルドが引き取るのが通例だったと思う。



「獲物は基本的に冒険者ギルドで引き取っているぞ」



 この世界でも前世で見たラノベと同じように、冒険者ギルドが獲物を引き取るようだ。

 冒険者ギルドに売ればいいのなら、手軽でいい。



「コロン。どうする? いったん獲物をギルドでお金に換えて来る?」


「ああ! そうだな! 売りにもどるか!」



 オレ達は二人で、解体した獲物をガタクリ一号の荷台に運んだ。

 そしてオレはガタクリ一号の運転席へ、コロンは荷台と座席を区切るために作った、仕切りの上に胡坐をかいて座り込んだ。

 この娘絶対に助手席に乗ろうとしないよな?


 そしてギルド長は、荷台のわずかな隅の空きスペースに片足をつけて、仕切りの上に肘をかけて、そのままガタクリ一号に収まりやがった。

 コロンが助手席に座らないのって、ギルド長の影響じゃないよな?



「それじゃあガタクリを発進させますね。」


「ああ。少し目立つが・・・運ぶ手段がそれしかないなら、仕方ないのか?」



 いやいや。目立つのはそんな乗り方をしている貴方だと思いますよ?


 オレは解体した獲物を乗せたガタクリ一号を、徐行運転で、街に向けて走らせた。






「よう!? フェルナン。何だその乗り物は?」



 ガタクリ一号で街に入ろうとすると、即座に衛兵に止められた。

 衛兵の視線は冒険者ギルド長に向いていたので、フェルナンは冒険者ギルド長の名前のようだ。



「この娘の魔法だ。気にしないでやってくれ」


「あ、ああ・・・」


 

 まあその一言で街の関所を通過できるのも、ギルド長が信頼されている証拠か。






「え~それでは狩り試験の結果だが・・・」



 そして冒険者ギルドに戻ったオレ達は、試験の結果をギルド長から告げられる・・・



「合格だ!」


「お!」


「やった!」



 そのギルド長から告げられた合格通知に、オレ達は喜びの声を上げる。



「だがヨッシー。お前はもう少し周囲に気を配った方がいいな・・・」



 オレはどうやら狩場での警戒が足りないらしい。

 前世の世界があれだけ平和だったのだ。無警戒になるのも仕方ないかもしれない。

 しかしここは世知辛い世界だ。警戒できなければ、いつか命を落とす可能性もある。


 オレは以前戦った、あの巨大なビッグボアのことを思い出しながら、そう思いを馳せるのだった。



「は~い!」



 しかしその返事はなんとも気の抜けたような返事となった。

 幼女なだけに、緊迫した雰囲気は、出しづらいのであった。



「これが冒険者ギルドカードだ。なくすなよ。もしなくした時は銀貨3枚かかるからな・・・」



 そしてギルド長から、冒険者カードを渡された。


 冒険者ギルドカードは、金属のプレートに自分の名前と、ランクらしき文字が書かれたものだった。右下には魔石のような小さな石が埋め込まれている。



「その小さな魔石に魔力を込めておいてくれ。それは本人のものか確かめる時に使うんだ」



 魔力を込めるってどうやるんだ? そう思って魔石に触れると、勝手に何かが吸い取られる感じがして、魔石が赤く光を放った。とりあえずこれでいいのだろうか?



「これでいいの?」


「ああ。ちょっと魔力を込めすぎだが、そんなものでいいだろう」



 これでいいらしい。魔力を込めるってよくわからないな・・・あとでコロンにでも聞いてみるか。


 そして気になる今回の狩りの報酬は、大銀貨2枚に銀貨3枚だった。

 日本円で13000円くらいだから、朝の狩りだけでこの稼ぎであれば、良い方なのかもしれない。



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