22:バリーの出店
バリー視点~
「早速バリーのお店を建ててみたよ」
ヨッシーは俺に向けて、にこやかにそう告げた。
俺はその唐突に建てられた建築物を見て、開いた口が塞がらなかった。
それは昨日のことである・・・。
俺が冒険者副ギルド長に就任した、レオナールの付き添いで、馬車に乗り、ヒュロピア領にやって来た時の話だ。
「おい! 見ろレオナール! もう城壁が出来上がっているぞ!」
「村と聞いていたが、またずいぶんと立派な城壁だな」
馬車窓から見ると、確かにそこには立派な城壁が見えた。
だがその城壁は村というよりは、もう街の城壁と言ってもいいのではないだろうか?
「それにあの街道工事をしている、大掛かりな魔道具は何だろう?」
城壁付近を見ると、作業をしている人たちの付近に、数台の大型の魔道具があるのを見かけた。
その数台はガタンガタンと大きな音をさせて、今も作業をしているようだ。
あの魔道具に設置されている、巨大な腕は、ヨッシーの巨大な鉄の腕を思わせる。
「あれはヨーレシア様の魔道車ではないかな?」
ヨッシーは学園でも、白く巨大な家具付きの魔道車に乗っていたし、あのくらいの魔道具であれば、所持していてもおかしくはないだろう。
ただこんな風景を見られるのは、この王国でも、この場所だけではないだろうか?
普段工事を行う職人や大工は、全て手作業で、このような巨大な魔道車などを、使うことなどないからだ。
「ヨーレシア伯爵はAランク冒険者と聞いていたが、あのような魔道具を、どこのダンジョンで見つけたのだろうか?」
冒険者ギルドに勤めているレオナールは、ダンジョン産の魔道具には詳しいが、いまだにあのような魔道具は、見たこともないという。
まあその入手経路については、見当はついていても、追及する気はないがな。
平民が貴族の秘密を探ろうとしても、ろくなことにはならない。
「見ろあの建物! それに奥に見えるのはもしかして城か!?」
城門を潜りまず目に入ったのは、やけに形の整った宿舎と、冒険者ギルドの建物だ。
その建物はどれも、今までに見たことのないような、造りをしていた。
特殊な魔道具により、建造したのだろうか?
また村の一番奥には、この場所に不釣り合いなほどの、城が見えたのだ。
「話によるとあの城が、ヨーレシア様の住まいだということだ」
村の中では城壁付近と同じ様に、数台の魔道車が走り回り、職人たちがせせこましく作業をしていた。
城の城門の前に行くと、ヨッシーらしき少女の姿が見えてきた。
ヨッシーは4人の小さな猫人のメイドを従え、コロンと共に俺たちの乗る馬車を出迎えてくれた。
まさか伯爵である、ヨッシー自らが出迎えてくれるとは、思ってもいなかった。
ヨッシーは相変わらず小さく、まるで出会ったころと、変わらない風にも見えた。
それはヨッシーの出自が関係しているようだが、これも軽々しく口にして良い事ではない。
突然怒りをあらわにしながら、詰め寄ってきた時には少し驚いたが、コロンとレオナールのことで勘違いをしている風に感じたので、そのまま流すことにした。
その事実はレオナールが現れれば、あからさまになるだろう。
「まあ今夜はこの城で泊まっていけよ」
「は、はあ・・・・。それでは遠慮なく・・・・」
ちょっとしたいざこざがあったものの、いつもの調子に戻ったヨッシーは、早速城への宿泊を勧めてきた。
少し気が引けたが、断る理由もないので、そこは快く承諾しておいた。
「私は将来こちらで店を構えたいと思っているのですが、良い物件などございましたら、紹介していただけるとありがたいです」
部屋に案内される途中で、俺がわざわざこの未開の領地まで、ついてきた理由について尋ねられたのでそう答えた。
将来この領地にブラハム関連である、商業ギルドの支店を構えるのは、親父からも言われていることだし、今から相談しておいても遅くはないだろう。
ただこの件には建設費用などの目途が立っておらず、親父に相談中の案件でもあるので、明言は避けておくとする。
「それじゃあ今日のうちにでも建物の相談だけでもしておこう」
「はい?」
その時の俺には、ヨッシーの言う意味がよく理解できなかった。
だがその後俺たちの部屋に、小さな猫メイドを伴ってやって来たヨッシーに、見たこともないような立体の動く絵を見せられ、軽くカルチャーショックを受けたのを覚えている。
どうやら建物の構造だけでも、その魔道具の画面で、造ってしまおうということなのだろう。
俺はその時、そう理解していたのだ。
「建物はこんな感じで良いかな? 他に要望があれば聞くけど?」
「えっとそれじゃあ・・・・」
俺が遠慮なく要望を告げると、その立体の絵は、瞬く間に改良されていき、俺の理想の店舗となっていった。
「それじゃあ明日までに建てておくから・・・・」
「え? あ? 建てる?」
俺は再びヨッシーの言う意味がわからなくなった。
だが翌日猫メイドに案内されて来てみれば、目の前に信じられない光景があったのだ。
「早速バリーのお店を建ててみたよ」
それは俺の希望した通りの、商業ギルドを兼ねた店舗だったのだ。
俺はその建物を見て、開いた口が塞がらなかった。
もしかしたらヨッシーには、とんでもない速さで、建物を建てる魔法か魔道具でも、あるのかもしれない。
それからの展開は早かった・・・・。
親父から無事に資金を得た俺は、さっそく土地とその店舗を買い取り、ヒュロピア領に出店する運びとなる。
その店舗にヨッシーから買い取った、不思議な商品を並べたところ、噂を聞きつけた他領からの来客が、こぞって買いに来るようになった。
その結果俺は、莫大な富を得ることになるのだ。
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