21:ヒュロピア領の冒険者ギルド
「おう! ついに完成したのか!」
コロンはその建物を見上げる。
この日冒険者ギルドの施設が完成したのだ。
オレがその冒険者ギルドの施設を造った理由は、コロンが名実ともに、冒険者ギルド長に就任したからだ。
それに伴い、ついに副ギルド長候補が、この領地にやってくることになった。
その副ギルド長候補はコロンの信頼も厚く、わざわざコロンがこの領地に、呼び寄せる程の男のようだ。
ガラガラガラ・・・・
そして一台の馬車を、城の前で出迎える。
この日ついに奴がこの領地に、やってきてしまったのだ。
「バリィィィィ!! てめえか!!」
オレは馬車から降りてくる人物、バリーに掴みかかる。
「ははは・・・・。何をお怒りなのでしょうかヨーレシア様は・・・・」
そんなオレに対して、バリーは苦笑いだ。
そしてそんな大人の対応をしてくるところが妙に鼻につく。
すでに大人体型の大きなバリーに、オレが掴みかかったところで、幼女がふざけてじゃれついているようにしか見えないだろう。
皆そんなオレのことを、微笑ましく見ているのが、背中からでもわかる。
だがオレはバリーに一言言わずにはいられなかったのだ。
コロンは副ギルド長候補が、来る数日前からそわそわしだし、まるで惚気話のように、オレに副ギルド長のことを話してきていたのだ。
「コロンを誑かしたのはお前か!?」
「いったい何をおっしゃっておられるのですかヨーレシア様は・・・? 私は友人の付き添いでやってきただけですよ」
「何? 付き添いだって?」
見るとコロンの視線はバリーにではなく、馬車の中に向いていたのだ。
馬車の中にはもう一人いるようだ。
「やあコロン・・・久しぶりだね」
すると馬車から出て来たのは、背が低めの、金髪美少年だったのだ。
オレはその金髪美少年に、威圧の目を向ける。
こいつか! コロンを誑かしやがったのは!?
「これは可愛らしいお嬢様だね? どちらのお嬢様だい?」
金髪美少年は、そんなオレのことをコロンに尋ね、頭をなでようとしてくる。
オレはそんな金髪美少年に、正拳突きをくれてやった。
「えいや!」
ポコ!
「ははは! 元気の良いお嬢様だね!」
そんな幼女のオレの正拳突きは、金髪美少年にまったく効果はなかったようだ。
「は~・・・・。そいつはここの領主の、ヨーレシア・ド・ホワイトナイツだ・・・・」
「は? はあああ!? 幼いとは聞いていたが、何が何でも幼すぎやしないかい!?」
コロンがオレを金髪美少年に紹介すると、そいつは過剰に驚きやがった。
まあ幼女が領主とか言われても、普通は驚くだろうがな・・・・。
「初めましてヨーレシア伯爵。わたくしレオナール・ド・デュクロと申します。他国の男爵家のしがない三男坊です。コロンのフィアンセを目指しています」
そして金髪美少年は、白々しくコロンを横目で見ながら、オレにそんな挨拶をしやがった。
そう。こいつはコロンが惚気る相手・・・・コロンのフィアンセ未満の男なのだ。
コロンもコロンで赤くなるんじゃない!
年齢はコロンの2歳年下の16歳で、その愛くるしいマスクは、多くの女性を魅了してきたことだろう。
「むむむむむっ!」
オレはそんな金髪美少年レオナールを、さらに睨みつける。
「えっと・・・・。ヨーレシア伯爵はどうして私をそんなに睨むのかな?」
「こいつ焼きもちやいてんだよ・・・・」
オレは確かにコロンに焼きもちをやいているのだろう。
長年連れ添った相棒のコロンが、どこの誰とも知れない色男に、盗られてしまいそうなのだ。
「ボス・・・・。こんな弱そうな男虐めるのはよしましょうにゃ。ボスの格が下がるにゃ」
すると心配したニャーナが、そんなオレを諫め始める。
まあ今日のオレは確かに、多少大人気ないところもあったかもしれない。
だがコロンを盗られるのだけは我慢ならない。
そんなオレの憤りをよそに、ヒュロピア領の冒険者ギルドは、その日をもって開設されるのであった。
冒険者ギルドが開設されると、当然多くの冒険者がやってくる。
この辺りにはダンジョンはないが、森や湖が存在し、魔物も多く生息している。
中でも一般の冒険者に人気のある、カーディが多く生息しているのは大きい。
カーディは30センチメートルくらいの、ネズミの魔物だが、臆病で無害なため、狩るには安全な獲物なのだ。
その肉は筋が多く、鶏肉のようにあっさりとしている。
脂身は少なく、淡白なのも特徴だ。
安価であるため、庶民を中心とした購買層が、比較的多いとされている。
そんな魔物のカーディが生息するこの領地も、それなりに人気がある。
ただこれまで宿がなく、不便な部分が多かったために、やってくる冒険者が少なかったのである。
そんなわけで、城門から城につながる街道だけでも、街道工事を急ぎ、見た目だけでも取り繕い、インフラの整備等により、宿などの建設も行うのだ。
当然それらをオレのスマホで行えば、費用も時間も大幅に削れる。
だが領地のことを全てオレがやっていては経済が回らない。
そんなわけで街道工事は、職人たちに任せている。
そのかわり工事には、魔道ミキサー車や運搬用の魔道トラックなどの、作業用の魔道車を、積極的に貸し出した。
それら魔道車のエネルギーに関しては、龍脈から溢れる魔力を利用する。
龍脈から溢れ出す魔力を、魔力スタンドに蓄積し、そのスタンドからエネルギー補給を行うのだ。
これらは全てユースたんの発案だが、どこからそんな発想が出てくるのか、いまだに謎である。
まるで超魔道文明を、経験したことのあるような、感じすら受ける。
そんなわけでこのアリ村は、急速に発展して行くことになったのだ。
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