17:ユースたんの誕生日会後編
「え~・・・・。今日はユースたんにあげるお誕生日プレゼントを選んでもらいます」
ユースたんにプレゼントする品物を、まだ開拓もままならない、この領地で買うことは困難だ。
なので今回は通販ショップで皆に選んでもらうことになる。
だがオレのスマホについては、一部の人間にしか明かしていないので、今回は限定的なメンバーに集まってもらった。
それがコロン、フランちゃん、シャルちゃん、パナメラ、ゴンツ、アーノルドだ。
ユースたんを除いては、この6人が、オレのスマホについて知っているメンバーだ。
なおライザさんやリュシーさんにも、スマホについては明かしているが、ユースたんのお誕生日プレゼントについては、オレの領地の幹部クラスのみが用意することとした。
なので彼女たちは、今回のメンバーには選ばれない。
当然プレゼントを贈る対象の、ユースたんもここにはいない。
「え~・・・・。ユースたんからの事前の聞き取りによりますと、ユースたんはリボンをつけた、ネズミのぬいぐるみを好んでいるようでした。なのでそれを基準に、今回のプレゼントを選んでいただきます」
オレは皆にそう説明すると、大きなモニターに、スマホの画面を映し出した。
「「おおお!」」
すると皆から驚愕の声が上がる。
今回モニターに映し出したのは、もちろん通販ショップの画面だ。
「え~・・・・。この枠の中に欲しい品物のワードを書き込んで検索すると、その品物の一覧が表示されます。えっと・・・それじゃあコロンから欲しい物をどうぞ」
「肉だ!」
「それはお前の欲しいものだろ?」
どうやらコロンには、説明の趣旨が理解出来ていないようだ。
「そのネズミのぬいぐるみを、実際に見ることはできますか?」
するとフランちゃんから、そんな質問が出た。
「もちろん見せることは可能ですよ。ほらこのように・・・・」
ポテ!
オレは試しに通販ショップで、ぬいぐるみを購入して見せた。
「あら? 可愛らしい魔物ですわね。女の子の服を着ているのかしら?」
どうやらシャルちゃんには、このネズミが魔物に見えるようだ。
まあこのネズミは黒いし、よく見るとネズミには見えない。
どちらかと言えば魔物という言葉が、しっくりとくるかもしれない。
「でもなかなかの手触りですよ! これはわたくしも欲しいですね!」
「娘がいたらぜひプレゼントしたいですね」
「他にはどのような種類のものがあるのかしら?」
プレゼントの選定会ではなく、ぬいぐるみの選定会に、なってきたような気がする。
「えっと・・・・。個人でぬいぐるみが欲しい方は、ユースたんのプレゼントの選定が終わった後で、個人でオレから購入してください。魔石払いでけっこうですので・・・・」
彼らは普段から魔物狩りもしているし、魔物から出る、魔石も多く所持しているだろう。
「本当ですか!? 実は以前いただいた物の他にも、ぬいぐるみが欲しいと思っていたのですよ!」
確かフランちゃんには、過去にぬいぐるみをあげた記憶がある。
そのぬいぐるみは、今も彼女の部屋に飾ってあったはずだ。
彼女はその他にも、ぬいぐるみが欲しかったのだろう。
「それではわたくしもお願いします!」
「じゃあわたくしも!」
パナメラとシャルちゃんも、ぬいぐるみの購入を希望のようだ。
まあ魔石さえ払ってくれれば、いくらでも出しますけどね。
「ワタシには肉だ!」
自重しろコロン!
そんでもってプレゼントには、ぬいぐるみやらくっしょんやらが、沢山選ばれたよ。
これだけあれば、ユースたんも喜んでくれるだろう。
そしてユースたんの誕生日会は、皆で食堂に集まり祝うことになった。
それは身内だけのお祝いとなったが、その日は女神ユースティティアの生誕祭として、村人たちにも、オレから酒の差し入れを用意した。
その日食堂には多くの料理が用意され、皆その料理に舌鼓を打っていた。
「まあ美しいケーキ! それがお誕生日ケーキね!」
「真ん中の黒い板には、可愛らしい文字でユースティティア様の名前が書いてあるのね!」
そして誕生日会も佳境に差し掛かり、誕生ケーキが登場すると、皆の注目を集める。
「ハッピバ~スディトゥ~ユ~、ハッピバ~スディトゥ~ユ~、ハッピバ~スディ~ディア、ユースティティア~・・・・ハッピバ~スディトゥ~ユ~・・・・」
パチパチパチパチ!!
そしてローソクに火がつけられ、部屋を暗くすると、拙いながらも、皆笑顔でお誕生日の歌を歌った。
「うぅ・・・・これですよこれ・・・・。ヨッシーの記憶を覗き見た時に、一度でいいから、わたくしもこんな祝われ方をしてみていと思っていたのです!」
ユースたんは歌の最後に、涙ながらにそう語った。
この国に女神の生誕祭は存在したようだが、女神はいつも壇上に祭られ、皆を見下ろしていただけだったようだ。
それをユースたんは、孤独にでも感じていたのかもしれない。
だがユースたんは、どさくさに紛れて、とんでもないことを暴露したぞ。
「え!? ちょおお! オレの記憶を覗き見たってどういうこと!?」
「わたくしは長いことヨッシーのスマホの中にいましたからね。その間退屈で、ヨッシーの記憶を覗き見ていたのです」
そう言えばユースたんは、長いこと精神体となり、肉体が存在していなかったのだ。
最近になってオレが復活させて、ようやく外の世界に出てこられたのだ。
どうやらそれまでは、オレのスマホの中で、退屈しのぎをしていたようだ。
それにしてもこのスマホの中に、オレの記憶が入っているとは初耳だ。
「そのスマホはヨッシーの記憶そのものと言っても過言ではありません。しかしそれがあるからこそ、ヨッシーは創造魔法を、容易に行使可能なのです」
まあこのスマホには随分と助けられたし、感謝はするが、記憶を覗くのは勘弁願いたい。
すでにこのスマホの中に、ユースたんがいないということは、再び記憶を覗かれることはないので安心だ。
だが後々オレの記憶をもとに、へんな要求をされそうで少し怖い。
「では火を消しますよ! ぶぅ~!!」
火の消し方は少し不細工になったが、ローソクの火が消えると、ユースたんは満面の笑顔を浮かべた。
「「おめでとうございます! 女神ユースティティア!」」
「ありがとうございます皆さん!」
そして次々とプレゼントが手渡され、ユースたんもご満悦な様子だ。
その両腕にはぬいぐるみが抱かれ、とても幸せそうな感じだ。
ケーキを食べる際にまた一波乱あったが、お誕生日会は無事に終了を迎えることができた。
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