15:ドラゴン討伐の報酬
「ヨーレシア・ド・ホワイトナイツに、ドラゴン討伐の報酬として、白金貨300枚を与える」
「はっ! ありがたき幸せ!」
オレはその日王宮によびだされ、ドラゴン討伐の報酬を、受け取っていた。
また今回ドラゴン討伐に参加したパナメラ、ゴンツ、アーノルド、シャルちゃん、フランちゃんが、男爵位を得ることになった。
それに加え今まで爵位を持っていなかったライザさんも、騎士爵を得ることとなった。
コロンについては、このことでなんと冒険者ギルドマスターへの、抜擢を受けている。
ユースたんについては、すでに女神である彼女は国王以上であるので、昇爵のしようもないという。
なので彼女の要求する、魔法実験用の、素材が色々と送られるようだ。
また報奨金を得たことで、今回の部下の貢献も考え、領主であるオレ個人からも、それぞれに報奨金を支払う必要があるようだ。
まあ皆のことだから、金では買えないような品を、要求してくるんだろうけどな。
「ヨッシー・・・・。貴女はいつでも侯爵になってくれてもいいのよ?」
「わたくしには過分な栄誉にございます!」
そして今回も昇爵の話を、お断りしておく。
これ以上のしがらみは、オレには必要ないのだ。
ドラゴンの素材については、王国で2体、冒険者ギルドで1体、買い取ると言う話になった。
ここでもさらに莫大な資金が、舞い込むことになるらしい。
ちなみに捕らえていた賊共は、その時に王国に引き渡した。
これからの尋問により、色々なことが明らかになるだろう。
「え~・・・。それでは今回のドラゴン討伐に対する報酬を渡したいと思います。望みの物があれば何でも言ってください」
そして領地に帰ると、今度は皆への報酬を渡すこととなった。
「わたくしにはヴァルキリーの所有権をください!」
真っ先にそう主張したのはフランちゃんだ。
どうやら彼女は名実ともに、ヴァルキリーを自らの所有物にしたいようだ。
「う~ん・・・・。いいですけど、それだけだとなんだか悪い気がするんですよね・・・・」
ヴァルキリーは所有権はなくとも、貸し出し品として、所持してもらうことになっている。
なんだかそれだと、フランちゃんだけ、何もないみたいにならないだろうか?
「それではわたくし専用の槍を・・・・破壊の槍を超える性能の槍をください!」
つまり破壊の光が使えるような、さらに高性能な魔槍が欲しいということだろう。
「わかりました。それについては考えておきます」
「ありがたき幸せにございます!」
フランちゃんはそう言うと、一礼して後ろに下がった。
「次に欲しい物があれば教えてください」
「はい! わたくしには屋敷をください!」
そう要求してきたのはパナメラだ。
パナメラは婚約者を、こちらの領地に呼び寄せるつもりなのかもしれない。
なので二人だけの、スイートホームが欲しいということだろう。
「了解しました。その屋敷についてはお任せください・・・・」
まあ下水道完備の、普通の屋敷でいいよね?
もちろんパナメラが要求する屋敷は、オレのスマホで造った物だろうけどね。
「あの・・・。俺も家をお願いしたいんですが・・・・」
実はゴンツには王都の借家に住まわせている家族がいるのだ。
ゴンツにはすでに奥さんもおり、子供が2人もいるという。
こちらに呼び寄せて、その家で一緒に住むつもりだろう。
しかし要求がパナメラと同じ屋敷でなく、家であるあたりは、庶民出と裕福な貴族令嬢との違いだろうか?
まあ使用人でもいないと、屋敷の管理は大変だからね。
使用人のいない人たちは、広い屋敷を建てても持て余すだろう。
「わたくしも・・・その・・・家が欲しいのですけど・・・・」
「私も家でお願いします!」
どうやらアーノルドもライザさんも、恋人とこちらで暮らす気のようだ。
使用人のいないこの2人も、要求は家となった。
ライザさんは騎士爵だけど、使用人を雇うようなお金はないし、アーノルドも男爵で実家は貴族家だけど、貧乏貴族だと聞いている。
「わかりました。屋敷や家が欲しい方は、後で要望を聞きますので、建築の方はその後にしましょう」
「「はい! ありがとうございます!」」
4人はオレにお礼を言うと、後ろに下がった。
「シャルちゃんはまだ悩んでいるようですけど? なにか要求はありますか?」
「わたくしはその・・・・いつもお世話になっている護衛に、魔剣など与えたいのですが・・・・」
つまりフォセットさん専用の、魔剣が欲しいということか?
あの件のこともあるので、なかなか言い出しづらかったんだろうね。
まったく部下思いだよねシャルちゃんは・・・・。
だがそれだとあのメイドさんたちが、ひいきだと怒らないか?
そこのところもシャルちゃんに尋ねてみた。
「えっと・・・フォセットはあの件以来、元気がなかったので・・・その・・・・できればメイドたちにも・・・・」
するとそんな答えが返ってきた。
あの件とは、オレがフォセットさんに、守るべき対象を尋ねた時に、オレよりシャルちゃんの方を優先すると言った件だろう。
「わかりました。フォセットさん専用の魔剣を造ります。またメイドには別に特別報酬を出しましょう」
「ありがたき幸せにございます!」
するとシャルちゃんは、満面の笑顔で後ろへ下がった。
「で? さっきから黙っているコロンは何が欲しいの?」
「う~ん・・・・。そうだな・・・・ワタシも来年からここの冒険者ギルドマスターになるわけだろ?」
「冒険者ギルドの施設が欲しいのか?」
「まあ・・・それもあるが・・・・」
まったく今日のコロンは煮え切らない。
「あの坊やをよぶんでしょコロン?」
そう言って話に割って入ったのはユースたんだ。
コロンはことあるごとに、何かユースたんに相談していたし、隠し事でもあるのだろう。
だがユースたんの言う坊やとは、いったい誰のことだろうか?
「冒険者ギルドの職員で、ワタシよりも2つ歳下のがいるんだ」
コロンより2つ歳下?
コロンが今年で18歳だから、16歳の少年か?
「そいつが頭が良くてよく働くんだ。副ギルド長としてこっちによび寄せてもいいか?」
まさかそいつ・・・コロンを誘惑しているんじゃああるまいな!?
許しませんよオレは!!
「何変な顔しているんだヨッシー?」
気が付けばオレは、変な顔をしていたようだ。
頬を撫でまわして、顔の筋肉を緩める。
これで普通の顔になったはずだ。
考えてみればコロンもいい歳だ。
この世界ではとっくに結婚していても、可笑しくはない年齢なのだ。
コロンが認めた相手ならば、オレも祝福してあげるべきだろうな・・・・。
「いいよコロン。そいつをここへよんでも」
「そうか・・・・ありがとうなヨッシー!」
コロンは嬉しそうな笑顔で、オレに礼を述べた。
そしてユースたんの方を見ると、なぜか照れながらオレの方を、横目で見ていた。
「あの・・・わたくしその・・・・」
「ユースたんも何かお願いが?」
もじもじしてなかなか答えようとしないユースたん。
いつもの彼女らしくないことは確かだ。
「お誕生日会というやつをしてみたいの・・・・」
この異世界には、七五三のような行事はあるが、誕生日を祝うような習慣はない。
つまりユースたんの頼みとは、オレが前世で行っていたような、誕生日会を開きたいということだろう。
なんという可愛いお願いだろうか?
「もちろん構いませんよ」
「そうですかそうですか♪ それでは明日にでも早速行いましょう!」
オレが二つ返事でそう答えると、ユースたんは上機嫌で、そう返してきたのだ。
明日って急すぎるだろ・・・・。
「二日は準備に必要ですので、せめて三日後でお願いします」
「仕方ありませんね・・・・。では三日後でお願いします」
こうしてオレは三日後に、ユースたんの誕生日会をすることになった。
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