03:やっぱり異世界だった
「ギルド長~! 地図を見せてください!」
「おお。さっきもそんなことを言っていたな?」
オレはどうしてもこの国がどこか知りたくて、あの後すぐにギルド長に、地図を見せてもらいに来たのだ。
ここは冒険者ギルド内の酒場で、ギルド長はちょうど夕飯を食べていた。
「コロンはどうした?」
「もう寝ました」
コロンは家が出来てすぐに、中で大の字になって、寝コケてしまったのだ。
「なんでまた地図なんて見ようとするんだ?」
「この国がどこにあるのか知りたいからです」
「そういや、記憶がないとか言っていたな? この国の地理についてだったら俺が教えてやるよ」
なんとこの国の地理については、ギルド長が教えてくれるらしい。
ギルド長は、見た目通りの、世話好きのおじさんのようだ。
「いいか? まずこの国はルエパラ王国だ。
その東の山脈の向こうにナジェル帝国、北にガルバギーリャ魔王国、南にジュノマ聖国がある・・・」
ギルド長は、ブラックボードにチョークで描き記しながら、色々と説明してくれた。
ルエパラ王国の西側には、広大な海が広がっているという。
ガルバギーリャ魔王国のさらに北は人の住まない極寒の地で、ナジェル帝国の東には広大な砂漠があり、その北と南には、小さな名も知らぬ国々があるという。
ジュノマ聖国から南に行くとギコン王国、ニハル王国、ベナレフチドニア王国と続くそうだ。
そしてその地図は、オレの記憶にない、未知の大陸を書き記していた。
このギルド長の言っていることが本当ならば、ここはやはり異世界なのだろう。
「大丈夫か? 心ここにあらずという感じだったぞ?」
「ああ・・・衝撃の事実に、心が打ちひしがれていたところです・・・」
ここが異世界だという現実は、想像以上にオレの心に衝撃を与えた。
覚悟はしていたつもりなのだが、もう前世のあの場所には帰れないという現実が、オレの心を想像以上に締め付けたのだ。
だがこの世界は想像以上に世知辛い。落ち込んでばかりでは駄目だ。生きていかねばならないのだ。
「よし! 立ち直った!」
「立ち直り早いな。だが記憶は徐々に戻せばいいと思うぞ?」
ギルド長はそんなオレに、気を使ってくれたようだ。本当にいいおじさんだ。
色々と教えてくれたし、ここは報酬が必要だろう。
「これは報酬です!」
オレはスマホでワイン400円を注文した。
残りポイント:39627
安ワインだが、普通に飲めるはずだ。
ポト!
テーブルの上のオレの目の前に、ワインの入った箱が落ちた。
「おい! お前今そいつを何処から出した!?」
「これはオレの魔法です」
オレはごそごそと箱を開けて、ワインを出してギルド長に渡した。
「酒? ワインか? これはガラスか? 随分と上等な入れ物だな?」
「どうせ一番安いものなので、気楽に飲んでください」
「ちょっと待て!? まだこれより上等の酒が召喚できるのか?」
「さあ・・・それはどうでしょう?」
とりあえずこれ以上酒を強請られるのも嫌なので、すっとぼけておくことにする。
「ちっ・・・まあいい。とりあえずこいつをいただいてもいいんだな?
ん? この蓋はどうやって外すんだ?」
「あ、その蓋をひねって開けてください。」
「ん? こうか?」
オレがワインの蓋の開け方を説明すると、ギルド長はそのワインの蓋を開けた。
そして空になったコップにそのワインをついで、飲み始めた。
「ほう? 上等な酒じゃねえか!? 何処が一番安いんだ? これなら結構な値で売れるぜ?」
「ちなみにそのお酒になら、幾らくらい払いますか?」
「う~ん・・・こいつになら大銀貨一枚は出しても惜しくないな!」
5000円か・・・まあ悪くないな・・・さすがチリ産の安ワインだ。
噂通り、その美味しさは安くても安定している。
「ああ・・・あとその能力は気軽に使うなよ?
その能力を知られれば、世界中の冒険者が、こぞってお前を攫いにくるぞ?」
肝に銘じておきます・・・
翌朝オレは朝食を作るために、俺達の家の横にメタセコで作った石の竈を設置した。
そして石の竈で、2400ポイント消費した。
残りポイント:37227
竈を作った理由は、火の粉などによる火災のリスクを下げるためだ。
なぜならすぐ側にあるオレ達の家は木造だからね。
次にスマホの中にポリゴン数を下げて蓄えておいた、薪を出して竈に入れる。
なんとか薪に火を付けて、水を入れたバーベキュー用ハンゴーを、竈の上に置いて加熱する。
加熱している間に、コーンクリームスープ30袋入り1400円をまとめて購入しておく。
しばらくはこいつが、オレ達の朝食となる。
残りポイント:35827
沸騰したお湯を丼に注いで、コーンクリームスープの粉末を、一袋分入れて混ぜれば完成だ。
「コロン! 起きろ! 朝飯だぞ!!」
「ん~・・ヨッシーおはよう。何作ったんだ?」
「おはよう! コーンスープだ!」
粉入れてかき混ぜただけだがな!
「お! 随分濃厚な味のスープだな? おかわり!」
こいつはもう飲んだのか・・・
仕方なくオレが二杯目を作っていると、誰かがこちらへやって来た。
「おう! お前ら! 朝食中か!」
「おっさんおはよう!」
「おはようございますギルド長」
やってきたのは冒険者ギルド長だった。
「お前ら何飲んでんだ? 随分と黄色いスープだな?」
「コーンスープですよ。まさか孤児にたかりに来たんですか?」
「そんなことを言っていていいのか?」
ん? 何か含みのある言い方だな?
「実は今日はお前達にいい話をもってきたんだ。」
急に何だろ? いい話って? しかもこんな早朝に・・・。
オレのギフト・アーティファクト関連の話なら、お断りしたいところだけど、別の話の可能性もあるし、まずは話を聞いて見るべきなのか?
「ふ~ん・・・」
オレはあれこれと思案しながら、ギルド長にコーンスープを作って渡した。
「ん? こりゃあ・・・ヨッシー・・・お前またあれを使ったのか?」
「なぜそう思うんです?」
コーンクリームスープの入った箱は家の中にあるし、開いた袋は目立たないようにスマホの中に入れているから、気付かれないと思ったんだけど。
「これはそれこそ裕福な貴族か、豪商くらいしか口にできないような味だぞ?
そんなの孤児のお前達に作れるのか? 例の力を使ったとしか思えないだろ?」
なるほど。こんな世知辛い世界だ。前世では普通に飲んでいたスープでも、高級品になってしまうのかもしれない。
そこからオレがスマホを使ったと予測したんだな?
「まあどんな条件でその力を使っているかは知らないが、ほどほどにしておけよ?」
「は~い」
昨日からスマホのポイントを、無駄使いしているのは否定できないから、素直に返事をしておく。
「それとコロン」
「なんだおっさん?」
コロンは二杯目をちびちびと飲みながら、ギルド長に目をやる。
「お前・・以前狩りがしたいって言っていたよな?」
「ああ。薬草採取は退屈だからな」
「そのヨッシーと行くのなら許可しないでもないぞ?」
「ええ! 本当か!?」
オレみたいな幼女を狩場に連れて行くなんて、足手まといだと思うのだが、もしかしたらギルド長は、オレのスマホをあてにしているのかもしれない。
「ただしこれから試験を行う。その試験に合格できれば、そのヨッシーと狩りに出かけてもいいぞ」
「え~~! 試験!? どんな試験だ?」
「もちろん狩りに行くんだから、狩場に行って狩りをするに決まっているじゃないか?」
つまりこれからギルド長を連れて狩りに行き、ギルド長の許可が出れば、コロンは晴れて狩りが出来る一人前の冒険者になれるわけだ。ただしオレと同伴なのが条件だが・・・
「よし! その試験なら受けるぞ! ヨッシーいいよな!?」
「あ、ああ。もちろんだ」
こうしてオレ達は、この街の付近の狩場で、狩りの試験をすることになった。
残りポイント:35827
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