11:対策会議
「それでは会議を開きたいと思います」
その日オレたちは、城の会議室に集まり、ある議題についての話し合いをしていた。
それがオレたちの領地に起こった、二つの問題についてだ。
その1つが盗賊の襲撃だ。
それは領主であるオレが、他領の貴族への挨拶終え、帰還途中に起こった出来事だ。
しかもその盗賊が、ナジェル帝国で作られた弓矢を使って、襲撃してきたというからややこしい。
その場合国内のどこかに、ナジェル帝国の内通者がいることを、疑わなければならないのだ。
幸運にも3人の盗賊を捕らえており、彼らを尋問して、ある程度の事情を聴きだせる可能性はある。
その三人は王都へ護送することになっているが、人手が足りない今、その護送すらままならない有様だ。
幸い十日遅れで、追加の人員がアリ村に到着することになっている。
盗賊を護送して、王都に向かうとしたらその時だろう。
そしてこの件に関しては、すでに襲撃をしてきた盗賊が、捕らえた3人を除いて、全て討伐されいる。
他に仲間が隠れている可能性もあるが、そこはこれから、アジトの捜索などを行うこととした。
そしてもう1つの問題が、ドラゴンの襲撃だ。
こちらは当のドラゴンが逃走しており、再び村に襲撃にくる可能性があるため、現在最優先事項となっているのだ。
この議題で話に上がったのが、ドラゴンに傷を負わせ、アリ村から追い払った、ヴァルキリーについてだった。
「姫! ヴァルキリーを我々にもお貸しください! そしてヴァルキリーの部隊を編成いたしましょう!」
そう願い出てきたのは、オレの側近の1人であるゴンツだった。
確かにヴァルキリーの数を増やせば、ドラゴンを倒すことも容易になるかもしれない。
「正直ヴァルキリーの部隊を造ることには、わたくしは反対です」
だがそのゴンツの意見に難色を示したのは、ユースたんだった。
ちなみに2歳児の体系となったユースたんは、現在幼児用のドレスを着ている。
「なぜです女神ユースティティア!?」
「あの装備は危険です。よほど信頼できる相手にしか、与えてはならないでしょう」
ヴァルキリーは破壊のランスという、オレの黒金をも倒しかねない、兵器を搭載しているのだ。
そんなヴァルキリーが、敵のスパイにでも渡れば、目も当てられない結果となるだろう。
「しかもあのヴァルキリーには欠陥もあります。そうよねヨッシー?」
「はい・・・・。確かにヴァルキリーには欠陥があります」
「あの完璧に見えるヴァルキリーに、いったいどのような欠陥があるというのですか!?」
「それはヴァルキリーは、魔術適性のない者には、乗りこなせないということです」
「そんな・・・まさか・・・」
オレもこの欠陥には、最近気づいたのだが、どうやらヴァルキリーを操るためには、魔術適性が必要らしいのだ。
それは学園時代に、バリーの戦闘力増強を図ろうとした際に、発覚したことだ。
魔法が使えないバリーには、ヴァルキリーの装備は勿論、風魔法を駆使した素早い移動手段が、いっさい使えなかったのだ。
それをユースたんは、魔術適性の問題だと断じた。
ただ魔石カートリッジ式の魔銃などで、出力を設定済みの物ならば、魔術適性が無くても、問題なく使用可能なので、その辺りを踏まえた上で改良を加えれば、もしかしたらその欠陥も、克服できるかもしれない。
いずれにせよ現在多忙につき、その研究は後回しになっているがね。
「そういうわけでオレや皆からの信頼もあり、ヴァルキリーを使用可能な人物は5名に絞らせていただきました」
ヴァルキリーを使用するには、魔術適性と、領主であるオレや、オレの側近からの信頼が必要なのだ。
それを踏まえた上で、オレはある5人を、ヴァルキリーの装備者として選んだ。
「まずコロンは・・・・」
「ワタシにはそいつは必要ない!」
ですよね~・・・・。
コロンはヴァルキリーを極端に毛嫌いしているのだ。
それはヴァルキリーに対する、対抗意識からなのかもしれないが・・・・。
どちらにせよコロン程の戦闘能力があれば、ヴァルキリーは必要ないだろう。
そしてオレは次の候補の目を見た。
「わたくしには必要ありません」
すると言葉を発する前に、ユースたんに断られてしまった。
まあユースたんは自前で魔法障壁を張れるし、身体強化や風魔法により、ヴァルキリー以上の動きが可能だからね。
「では次にフォセットさん・・・・」
「はい!」
オレが次に候補者として選んだのはフォセットさんだ。
彼女はシャルちゃん専属の護衛であるが、オレが信頼を置いている人物の1人だ。
だが彼女にこれだけは、確かめておく必要がある。
「貴女はオレとシャルちゃん・・・・両方が危機に陥った場合、どちらを助けますか?」
「申し訳ありません。・・・・その場合シャルロッテお嬢様を優先させていただきます」
「フォセット!」
シャルちゃんはそんなフォセットさんに、目くじらを立てるが、こればかりは仕方がないだろう。
これは彼女の信念の問題なのだから・・・・。
だがこれでフォセットさんが、シャルちゃんを人質に取られた際に、敵にまわる可能性があることが、わかってしまった。
そんなフォセットさんに、ヴァルキリーという危険装備を、渡すわけにはいかない。
「それではライザさん・・・・次に貴女の気持ちを聞きたいです・・・」
ライザさんはフランちゃんの護衛だ。
だからフォセットさんと同じ様な、結論を出す可能性もある。
「申し訳ありません・・・・フロランスさま・・・・。私はヨーレシアさまに近づくために貴女を利用しました・・・。私はフロランスさまの護衛ではありますが、ヨーレシアさまにお仕えしたいと、ずっと思っていたのです」
「はあ~・・・・。なんとなく気づいてはいましたよ・・・・」
ライザさんのその言葉を聞いたフランちゃんは、残念そうな顔はしたが、笑顔でそう答えた。
「次にパナメラさん・・・・」
「わたくしはヨーレシア姫一筋です!!」
オレがパナメラさんに尋ねようとすると、パナメラさんはオレが言い終わる前にそう即答した。
「ではパナメラさんとライザさんには、本日からヴァルキリーの訓練をしていただきます」
「「よろしくお願いします!」」
パナメラさんとライザさんは、嬉々としてそう返事をした。
こうしてヴァルキリー装備者が、二人追加された。
「私もヨーレシア姫には忠誠を誓っております!」
「俺もです!」
するとアーノルドとゴンツが、そんなことを言って来た。
そして期待を込めた目で、こちらを見つめてきたのだ。
そう言われたも、魔法を使えない二人には、ヴァルキリーを使えないし・・・・。
「それでは二人には、魔道航空機を任せてみてはどうかしら?」
するとユースたんが、そんな提案をしてきた。
魔道航空機とはヘリコプター型の、魔石を動力とする航空機だ。
確かにサンプルデータもあるし、これならすぐにでも製作可能だ。
だが前世で空の事故の悲惨なニュースを、聞いたことのあったオレは、この魔道航空機については嫌煙していたのだ。
「航空機は危険では?」
「墜落に対する危険性を危惧しているのね? それなら安心よ。貴女も黒金には、落下時の安全装置を付けていない?」
確かに黒金には浮遊能力もあり、その浮遊能力で、高所からの落下の衝撃を抑えている。
それが黒金の安全装置とは言えなくもない。
浮遊能力の仕様は、地面すれすれでは浮かぶが、それ以上になると、徐々に落下していくというものだ。
この仕組みを魔道航空機に使えば、最悪墜落しても、助かる可能性は格段に上がるだろう。
「わかりました・・・・。アーノルドとゴンツには、明日から魔道航空機の訓練をしていただきます」
「「ありがたき幸せ!!」」
こうしてアーノルドとゴンツには、魔道航空機を任せることになった。
「ヨッシー。それだけでは不十分よ」
「え? 何でですかユースたん?」
「ヴァルキリーには跳躍はできても、飛行が出来ないでしょ? 貴女の黒金もそうよ。空を飛ぶドラゴンを相手に、跳躍のみではどうしても不利になっちゃうわ」
確かに空から襲い掛かってくるドラゴンに対して、跳躍のみでは不利かもしれない。
それなら飛行ユニットを、試して見るのがいいかもしれない。
飛行ユニットは魔道航空機と違い、15分程度しか飛行ができないが、小回りの利いた飛行が可能だ。
それに魔道航空機で運搬してもらえば、飛行ユニットの飛行時間も稼げるだろう。
この飛行ユニットも墜落の危険性を考え、嫌煙していた装備の一つだが、今はそんなことを、気にしている場合ではないのかもしれない。
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