10:ドラゴンとの戦闘
「いったい何があったんですか!?」
オレはキャンピングカーを降りるや否や、皆にそう尋ねた。
無事に盗賊を退治し、ビィルノス領から帰還したオレたちは、アリ村の城壁に大きな焦げ跡を見つけたのだ。
焦げた城壁は黒ずみ、今も煙を上げている。
そんなアリ村の城門を潜ると、そこにはヴァルキリーで武装した、シャルちゃんとフランちゃんがいたのだ。
遠くの方には、ゴンツとその配下の騎士、村人の姿も見える。
「ドラゴンが襲撃してきましたの!」
フランちゃんの報告で、襲撃の相手がドラゴンだということがわかった。
なぜこんな村に、魔物最強の存在、ドラゴンなどが!?
見るとフランちゃんの、ヴァルキリーの肩当が焦げ、黒ずんでいたのだ。
「フランちゃん! その肩は大丈夫なの!?」
「大丈夫ですわ。焦げたのは表面だけですから」
どうやらフランちゃん事態に、怪我はないようだ。
周囲を見渡すと、あのドラゴンが襲撃してきたわりに、その被害は軽微だ。
なぜなら村の被害が、焦げた城壁だけだからだ。
「ユースティティア様の魔法障壁のおかげで、皆怪我もなく無事ですわ!」
シャルちゃんがオレに、そう報告してきた。
どうやらユースたんが魔法障壁を張り、アリ村を守ったようだ。
そのユースたんは、いったいどこにいるのだろうか?
「あら? 帰ってきたのね?」
声のする方を見るとそこには見慣れない、二歳くらいの幼児が、よちよちと歩いていたのだ。
だがオレにはその幼児が着ている、ベビー服に見覚えがあった。
「もしかしてユースたん!?」
それはオレがユースたんに、買い与えたベビー服だったのだ。
「もしかしても何も、わたくしは貴女の母親の、ユースティティアに決まっているでしょ?」
「はあああ!? なんで急激に成長してんの!?」
ユースたんとオレは、正確には人間とは別の、高次元生命体なのだ。
その成長は遅く、人間の五倍はかかると聞いていた。
現にオレの背も、この異世界にきてから六年、ほとんど伸びていない。
ユースたんもオレがこの村を出かける前は、確かに赤ん坊だったのだ。
そのユースたんの背は伸び、今や二歳児と化していたのだ。
第三者視点~
それはヨッシーが村に帰還する、丁度三時間ほどの前の話だった。
「ゴンツ隊長! 北東の上空より飛行する魔物が接近中です!」
見張りをしていた騎士の一人が、城壁の見張り台から、騎士隊長であるゴンツに、そう伝えてきたのだ。
「魔物だと? どれ貸して見ろ?」
ゴンツは見張り台に登り、遠見の筒を受け取ると、覗き込んだ。
「あれはもしかして・・・!!」
ちょうどそのころ、城に残されたフロランスとシャルロッテは、執務に励んでいた。
「何かしら?」
そんな時、ふと胸騒ぎがしたフロランスは、城の窓から城門の方に目をやる。
「人だかり? それにユースティティア様?」
すると城門に騎士が集まり、その騎士たちの元に、ユースティティアがふよふよと飛行して、向かうのが見えたのだ。
「ドラゴンだあああああ!!」
そして城の外から、そんな叫び声が聞こえてきたのだ。
「これはただ事じゃないわね!」
「ええ! わたくしたちも向かいましょう!」
そう言うとフロランスとシャルロッテは、ヴァルキリーを起動して、執務室の窓から飛び出し、城門へと向かったであった。
「ドラゴンのブレスがくるぞおおおお!!」
ブワアァァァァ~!!
その掛け声とともに、強烈な炎が村に飛来する。
「「うわあああ!!」」
その瞬間いくつもの人々の、恐怖の絶叫が響いた。
だが幸運なことに、焼けたのは村の城壁だけであった。
炎を受けた城壁は赤く燃え滾り、煙を吹き出していた。
それがそのブレスの威力を物語っていた。
「安心ちてくだちゃい! わたくちが魔法障壁でこの村を守りまちゅから!」
見るとユースティティアが手を広げ、村の上空に魔法障壁を展開していたのだ。
どうやらあの魔法障壁が、ブレスを防いだことで、被害は城壁だけにとどまったようだ。
「今のうちに騎士は村人を村の外へ避難誘導ちてちょうだい!」
「しかし女神様お1人にお任せするなど!」
ユースティティア非難を呼びかけるが、ゴンツはじめ騎士たちに、引く気配はない。
「1人ではないわ! 彼女たちが来まちた!」
するとユースティティアの指し示す空に、二人の女騎士が姿を現した。
「あれは何だ?」
「もしかして女神様がよんでくださった天使様か?」
上空から飛来するその様子は、まるで天使のようにも見えた。
それを見たゴンツと騎士たちは息をのんだ。
「ユースティティア様無事ですか!」
「今お助けします!」
それはヴァルキリーを装着した、フロランスとシャルロッテだったのだ。
「騎士たちはとっとと避難なちゃい! ここで貴方たちにできることは何もないわ!」
「くっ・・・! 承知いたしました! 直ちに村人とともに避難を・・・!」
ユースティティアにそう指示を受けたゴンツは、口惜し気な表情をしたが、すぐにその指示に従った。
「あれがドラゴン!」
フロランスとシャルロッテが見上げると、上空には飛行するドラゴンがいたのだ。
それは鋭い牙をぎらつかせ、先ほど放ったと思われるブレスの影響か、口の隙間から、煙を吹き出していた。
そのあまりの狂暴な姿に、フロランスとシャルロッテは青ざめる。
「ブレスがまたきまちゅ! わたくちが合図ちたら、破壊のランスでドラゴンに切り込みなちゃい!」
「「はい!」」
そのユースティティアの指示で、フロランスとシャルロッテは、破壊のランスとよばれる槍を抜き放ち、構えた。
破壊のランスとは、ヴァルキリーの装備の1つである。
破壊のランスは、先端にあらゆる物質を破壊する、破壊の光をこめることで、貫通力を飛躍的に増すことができるランスだ。
ブワアァァァァ~!!
ドラゴンが再び急降下し、村に向けてブレスを放つ。
その刹那ユースティティアは、魔法障壁を無詠唱で展開して、ドラゴンのブレスを防いだ。
「今よ!」
「「はい!!」」
そしてユースティティアが、二人に合図を出すと、二人は同時にドラゴンに向けて飛び込んでいく。
ザザン!!
「ギョエエエエ!!」
破壊のランスが、ドラゴンのその強靭な鱗を切り裂くと、ドラゴンがその痛みに、鳴き声を上げる。
「フロランス回避なちゃい!!」
ブワアァァァァ~!!
しかし傷が浅かったのか、ドラゴンは即座に立て直し、仕返しと言わんばかりに、フロランスに向けて、ブレスを放ったのだ。
「フラ~ン!!」
シャルロッテがまるで悲鳴のように、その名をよんだ。
「こちらは無事よ! ちょっと肩をかすめただけ!」
すると炎の向こうに、無事な姿のフロランスの姿が見えたのだ。
どうやらフロランスはぎりぎりで、ドラゴンのブレスを回避していたようだ。
「ブォオオオオ!!」
そしてドラゴンは悔しそうに咆哮すると、その場から飛び去っていった。
どうやら二機のヴァルキリーには、敵わないと悟ったようだ。
「やったああ! ドラゴンを追い払ったぞ!」
「さすが女神様と天使様だ!」
それを見ていた村人たちから、歓声が上がった。
「えっと・・・・ユースティティア様?」
そして地上に降り立ったフロランスとシャルロッテが、ユースティティアに目をやると、赤ん坊だった彼女の髪は伸びて、二歳児となっていたのだ。
「どうやらわたくしの格が上がったようね」
「格ですか?」
「女神は格が上がると、成長することがあるのです」
村から遠ざかるドラゴンを見つめながら、ユースティティアはそう説明した。
ヨッシー視点~
そして現在に時は戻る~
「ならオレもドラゴンを倒せば成長するのでは!?」
「それはないです」
「ええ! どうしてですか!?」
「それは貴女が生まれてすぐに、強制的に格を5つも上げているからです。生まれてすぐの赤ん坊を、森に放置するのは危険ですからね・・・」
どうやらオレは、生まれてすぐに格を5つも上げて、五歳児になっていたようだ。
「え? それってもしかしてオレの本当の年齢って・・・」
オレが0歳の時に格を5つ上げて、五歳児になっているということは、オレの現在の実質上の年齢はまた違ってくることになる。
「そうですね。貴女の本来の年齢は、マイナス5歳ということになります」
「ということは・・・オレの本来の年齢は・・・? 今が11歳だから・・・・」
「6歳くらいですかね?」
「ええええええ!?」
驚愕の事実。
オレはどうやら現在、見た目通りの6歳児のようだ。
まあこのルエパラ王国では、11歳で通っているし、今更変える気もないがね。
お読みくださりありがとうございます。
面白い!
また読みたい!
と感じた方はぜひ・・・・
《ブックマーク》 と
評価★★★★★を
お願いします。
いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。
感想、レビューもお待ちしております。




