08:巨大な宝石
ドドド~ン!!
「な・・・何だこれは・・・・!?」
「宝石ですけど?」
オレはポーチからあるものを取り出すふりをする。
だがその行為はスマホの存在を誤魔化すものである。
オレはスマホの収納機能で、あるものを取り出した。
オレがスマホの収納機能で取り出したのは、巨大な宝石だったのだ。
それは高さ3メートル、幅1.5メートルの、緑に輝く卵型の巨大な宝石だった。
オレはスマホのアプリ、メタセコを使い、岩を卵型に加工すると、緑色に色を変えて、透明にし、岩を宝石に見えるように変化させたのだ。
つまり目の前にあるのは、宝石に見せかけた、ただの巨大な岩なのだ。
更にこの岩には命令式も組み込まれていて、オレがその岩を摘まめば、摘まんだオレの手の座標に合わせて移動する仕様になっている。
つまりこの岩は、オレが片手で摘まんで移動できる岩なのだ。
「この宝石どこに置きましょう? ここですか?」
バコーン!
「それともここですか?」
ドシャ~ン!
オレは片手で巨大な宝石を持ち上げると、あちこちの地面に置いて、周囲をへこませて差し上げた。
「や、止めろ! うちの門前をめちゃくちゃにするな!」
すると慌ててゲスノール伯爵が、オレを止めようとするが、怖くて近づけない様子だ。
「それじゃあここに置いて行きますね。それでは・・・」
オレは適当な場所に巨大な宝石を置くと、踵を返してその場から去ろうとする。
「馬鹿者! そんな道の真ん中に置く奴があるか! 別の場所に置け!」
「ええ~・・・・。面倒くさいですね・・・・。ならこれは貸し1つということで」
「貴様! なぜそれが貸しになるのだ!?」
貴族の貸しは、どう使われるかわからないのが、怖いところだ。
大概の場合大きくつく場合が多い。
そのためゲスノール伯爵は、オレの貸しという言葉に対して、必死で抗議するのだ。
「あ。別にそれならいいですよ。この宝石を皆さんで頑張って移動してください。それじゃあまた・・・・」
「ぬぬぬぬ! わかった! 貸しで良いからその宝石を移動しろ!」
オレが煽るとゲスノール伯爵は、あっさりと貸しという提案にのってきた。
ちょろすぎやしませんかね?
「どこに移動すればいいですか?」
「庭に決まっておろう! その辺りに置いて行け・・・・!」
ゲスノール伯爵がそう言うと、オレは巨大な宝石を片手で持ち上げ、屋敷の庭へと移動していく。
その様子をゲスノール伯爵と、その愛人とメイドが、目を丸くして見ている。
「あ、待てゆっくりと置けよ! 振動で高価な壺が割れてはかなわん!」
「あ! 落としちゃいました!」
オレはわざとらしく、高価な壺の付近で、巨大な宝石を落として差し上げた。
ドシ~ン!! ガシャ~ン!
「ああ! 貴様! 高価な・・・壺が・・・何ということだ!」
すると高価な壺が割れて、ゲスノール伯爵は頭を抱えだす。
「仕方ありませんね~。これも貸しですよ」
「これが貸しだと? 貴様何を言っている!?」
激高するゲスノール伯爵をよそに、オレは高価な壺をスマホで回収して、メタセコを使って修復する。
オレのスマホのアプリ、メタセコを使えば、壊れた壺の修復など容易いことなのだ。
「え? 割れたはずの壺が・・・・どうなっておる?」
すると綺麗に修復された壺を見ながら、ゲスノール伯爵は困惑顔だ。
「これで貸し2つですね!? ゲスノール伯爵!」
「な、何を言っておる貴様は!? その壺を壊したのは貴様で・・・!」
「あれ~? 貴方の我がままでわざわざ宝石をこの庭に運んだ上に、壺まで直したのにですか? この伯爵であるわたくしがわざわざ・・・・」
「ぬう貴様! 伯爵の身分を笠に着て、貸しを2つも要求するつもりか!?」
「なら別にいいですよ。この宝石を屋敷の方に投げ込んで帰りますから」
オレは巨大な宝石を片手で振り回しつつそう言った。
「ば・・・! 止せ! わかった! 貸しは2つでよい!」
するとゲスノール伯爵は慌てた様子でオレの提案を承諾する。
「あれ~? 貸しはうちの領地に問題のある人員を押し付けた件も合わせて3つじゃないですか?」
「ぬ、ぬぬぬぬ・・・・! もう好きにしろ!」
そう言うとゲスノール伯爵は、ぷりぷりと怒りながら、屋敷に引っ込んで行った。
まあこれで意趣返しは、出来たのではないだろうか。
オレは巨大な宝石をゲスノール伯爵の屋敷の庭に置くと、その場を後にした。
「これでゲスノール伯爵も、当分はうちの領地にちょっかいはかけてこないでしょう」
パナメラは帰路の最中、清々しい笑顔でそう口にした。
現在キャンピングカーはパダーム領を出て、森の街道に差し掛かるところだ。
まるで盗賊とでも遭遇しそうな、不気味な森だ。
オレはその時マクシミリアン伯爵からの忠告を思い出していた。
「敵襲! 敵襲!」
するとキャンピングカーを警護する、浮遊バイクの護衛から、そんな物騒な知らせが届いた。
どうやらオレのそんな考えが、フラグになってしまったようだ。
「複数の盗賊のようです!」
アーノルドの報告によれば、それは盗賊のようだった。
見ると多くの盗賊が弓矢を構え、こちらに狙いを定めていたのだ。
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