02:ヒュロピア領
「アーノルド・・・ここは今日の野営地かな?」
オレは思わずアーノルドに、そう尋ねていた。
オレの目の前には、吹けば飛んで行きそうな、小さな集落があったのだ。
「いいえ。こちらがヒュロピア領の中心地、アリ村に間違いございません」
どうやらこの村と呼ぶにもおこがましい、小さな開拓地が、ヒュロピア領の中心地であるようだ。
中心地とは普通街などにあり、領都などとよばれている場所なのではないだろうか?
確かに緑の多い土地だとは聞いていたが、あまりにも緑が多すぎるのではないだろうか。
それもうは緑しかないと言ってもいい。
まあオレの能力ありきで、王族もこの領地をオレに任せたのだろうが、憎まれごとの一つも、言ってやりたい気分だ。
そのあまりにみすぼらしい、アリ村の様子に、皆開いた口が、塞がらない様子であった。
「ヨーレシア姫様!!」
声のする方を向くと、パナメラとゴンツが、あばら屋から出て来て、こちらへ駆け寄ってくるのが見えた。
「お久しぶりですお二人とも・・・・随分とみすぼらしいあばら屋にお住まいですね?」
「嫌ですよお姫様~! あちらはヒュロピア領の領主邸になります!」
「あれでも頑張って改築した方なんですよ!」
領主邸とは大きな屋敷とかのことを言うのだが、オレの聞き間違いだろうか?
改築? いったいどこをどう改築したらあんなあばら屋になるんだろうか?
オレはそんな二人を、懐疑的な目で見つめた。
だが二人とも苦労してきたのか、少しやつれて見える。
「ふぉふぉふぉ! これはようこそいらっしゃいましたヨーレシア姫様!」
すると今度は奥のあばら屋から、白い髭の爺さんが出て来た。
「儂はアリ村の村長を務めさせていただいておりますナタンと申します」
どうやら目の前の爺さんは、この村の村長であるようだ。
「姫がこられたぞ!」
「野郎ども出てこい!」
「ひいぃぃ!」「いえい!!」
すると村長に続いて、強面の男たちが、次々と出て来るではないか。
その中には女性もいるようだが、それは逞しい体格の、戦士とよぶにふさわしい女性たちであった。
ここは盗賊団か何かだろうか?
村長以外の様子が、明らかに普通ではない。
「体の丈夫な者を募集したところ、強面の者ばかりが集まったんですよ」
「そうですねえ。この領地、普通の人たちではとても過ごせませんから」
どういう経緯で、彼らが集まったかはわかったが、これだけ人数がいて、いまだに木と藁で出来た、あばら屋のみというのがしっくりこない。
もしかしたら三人は彼らを、上手いこと動かせては、いないのではないだろうか?
「ここの他にも村はあるんですか?」
「こことは別に、7つほどの集落が点在しています。そちらでは領民が貧しく、人数も少ないために、住居どころか、農地の開発すら上手くいっていません」
どうやらこの領地では、問題が山積みのようだ。
「とりあえずオレたちが過ごすための屋敷と、村人たちのための集合住宅を建てるから、適した場所に案内を頼むよ」
「承知しました」
オレがそう三人にそう頼むと、三人はオレを岩山のある空き地へと案内した。
そこへ村長や村人たちも、ぞろぞろとついてきた。
何が始まるのか、皆期待を込めた表情で見ている。
ちなみに岩山は、オレが建築物の材料にするために、使うことになっている。
スマホで何か建築物を造るのにも、材料があった方が、大幅にポイント削減になるのだ。
まずはオレは水を確保するために、地下水の位置から探っていく。
オレのスマホの機能に、指定した範囲の物体を、ファイルとして回収する機能がある。
この機能を使うことで、回収する予定の範囲の地層を、確認することが可能なのだ。
「よし! この辺りだ!」
ドド~ン!
「「おおお!」」
その様子を見ていた村人たちから歓声が上がる
オレが指定した範囲の地面を回収すると、そこには井戸のような穴が出来上がった。
その穴の底からは、すでに水が湧いてきている。
ドドド~ン!
「すげえ!」
「見ろあっという間に井戸が出来上がったぞ!」
その穴に石のブロックで出来た、枠をはめ込んだら、だいたい井戸の形が出来上がる。
後は湧き出す水が綺麗になるまで待ち、汚い水を回収すれば、この井戸が完成するのだ。
この井戸に水を汲み上げるための、魔道ポンプを設置し、生活用水を汲み上げる仕組みを造り上げるのだ。
ここで集めた水は、建物中に行き渡り、水道やシャワーでの使用が可能となる。
「次は屋敷と村人の集合住宅だね」
ドドド~ン!
オレは地面に四角い二つの大きな穴をあけた。
屋敷や集合住宅を建てるためには、まずは土台を造る必要がある。
そのためにはあらかじめ、土台を入れるための、穴を掘っておく必要があるのだ。
まあ建物自体は、すでにスマホのデータの中に出来上がっているので、穴を空けた場所に、土台ごとはめ込むだけなんだけどね。
ドドド~ン! ドド~ン!
「「おおお!」」
「すげえ!」
「どんどん建物が建っていくぞ!」
そしてそこには屋敷・・・ではなく城と、集合住宅が完成した。
本来そこには城ではなく、屋敷が建つ予定だったのだ。
だがそこに城が建ったのには、深い事情がある。
屋敷はもともと、前世で通っていた学校みたいな建築物で、シンプルな構造物になる予定だった。
だが皆の意見を聞くうちに、階層が増え、形が複雑となり、気づけば屋敷と言うよりは、城と言った方がしっくりとくるような、建物となってしまったのだ。
まあ本来領主の屋敷が、王宮より立派などということは、あってはならないことだが、機能はともかくその大きさだけなら、王宮よりも小さいので、ギリギリセーフといったところだろう。
こうしてオレたちは、理想の住居を手に入れたのであった。
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