37:王宮での冬の過ごし方
他国から帰還してからの、オレの学園生活は、退屈なくらい平和な毎日だった。
時々仲間内で魔物狩りには出かけたが、この辺りの魔物にオレたちが苦戦することもなく、安全で作業的な狩りとなったのは言うまでもない。
そのころオレの部屋は、電化製品で溢れ、前世とほぼ変わらぬ生活をおくっていた。
相変わらず学園と王宮を、行ったり来たりの生活をおくっている。
ちなみに王宮にある、オレの部屋は無駄に広いので、こたつは部屋に小さな寛ぎスペースを作って、そこに設置してある。
寛ぎスペースにはテレビはもちろん、パソコンまでもが置いてあるのだ。
現在は学園三年目の冬期休暇中だ。
オレはその時期は王宮の自室で、過ごすことになっていたのだ。
その日は雪も積もり、王宮の中も冷えきっていた。
「ヨッシーはまたその布団にもぐっているのか?」
「布団じゃない! こたつだ!」
オレはこんな寒い時期には、こたつにもぐる習慣がついていた。
部屋にエアコンがついて、それほど寒くはないが、それでもこたつの誘惑には敵わない。
こたつの上にはみかんを入れた籠もあり、まさしくそれは、冬の日本の部屋の風景であった。
コロンは寒さに強いのか、そんな時期でもコート一枚上に羽織るだけで、後は夏と同じ様な薄着だ。
寒がりなオレには、とても考えられない服装だ。
「ワタシは鍛錬に出かけるから、ヨッシーもゴロゴロするのはほどほどにしとけよ」
そう言うとコロンは籠からみかんを一つ取って、部屋から飛び出して行った。
「さてと・・・・これからオレも準備を始めますか・・・・」
オレはこれから、正月料理の準備を始めるのだ。
おせち料理は難しいので、通販ショップで購入する。
だがお汁粉や蕎麦くらいは、自分で作ろうと思っている。
今日はお世話になった皆を、オレの部屋に招待して、日本の正月料理を振舞う予定だ。
誘うのは王都にいる友人で、とくに親しくしてもらった連中だ。
コロンは準備ができるころには帰ってくるし、王都の実家にいるシャルちゃんやフランちゃんは、積雪の影響を受けない、浮遊車で迎えに行くのがいいだろう。
バリーはどうやらフランちゃんのいる、王都にあるギーハテケナのお屋敷で、使用人のようなバイトをしているそうなので、一緒に連れてくればいいかな。
王宮に住んでいるレーティシア姫はもちろん、ユースたんもよんである。
あとはその使用人たちもやってくるので、この部屋も賑やかになるだろう。
飲み物は甘酒に、ジュースを用意しておこう。
そしてお正月の料理の準備もできて、続々とお客さんがやって来た。
「「本日はお招きいただきありがとうございます」」
「ヨッシーが今日は変わった料理を用意したってな!」
「日本の正月でちか? ちょっと興味がありまちたの」
「ヨッシー。今日はなにやら珍しい物を見せてくれるそうね」
こうしてその日は皆で、賑やかに過ごすことになった。
そしてそんな祝宴の最中、蕎麦やお汁粉を食べ終わり、おせち料理も残り少なくなったころ、レーティシア姫が爆弾発言をする。
「ヨッシー。貴女学園を卒業したら、伯爵に昇爵されるわよ」
「え・・・・? 今なんと?」
学園の卒業式は、9月になるということだ。
するとオレは来年の9月以降には、伯爵ということになる。
いったいなぜそんなことに、なったのだろうか?
「この学園の卒業後に、貴女には領地が与えられるの。貴女には色々と特殊な魔法があるわよね。その魔法を使って比較的貧困な領地を潤わせてほしいのよ」
オレはこの第二の人生では、そういった面倒なことは、出来るだけ避けたいと思っていた。
だがオレのこのスマホを使えば、その領地を好き勝手に改造できるのではないだろうか?
そう思うと色々とイメージが浮かんでくる。
そして領地経営も、意外と楽しいものなのかもしれないと思えてきた。
そんなわけでオレは、学園卒業後に領主となることとなったのだ。
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