23:防衛手段を考えよう
シャルちゃん襲撃事件をきっかけに、オレは身内の防衛強化について考えていた。
オレの身内の中でも、現在最も狙われる可能性があるのは、貴族の未成年である、オレ、シャルちゃん、フランちゃんだ。
これは貴族の派閥間のトラブルが関係しているのだが、その渦中にいるのが、オレを含むその三人なのだ。
「ヨッシーは不意打ちさえ警戒すれば大丈夫だろ」
コロンは自室のベッドに寝そべりながら、そんな風に答えた。
確かにオレには数々の魔道具があるし、黒金さえ起動してしまえば、負ける気はしない。
だがシャルちゃんとフランちゃんは、大人数人に狙われれば、瞬く間に攫われてしまうだろう。
もちろん彼女らには護衛もいるし、一人にならなければ、大丈夫だとは思う。
だがもしもということもある。
個人の戦闘力の底上げを、図っておくに越したことはないだろう。
「いつか造った、ヴァルキリーを使うか?」
「ああ。あの卑怯アーマーか?」
「卑怯アーマーは言い過ぎだろコロン」
ヴァルキリーは以前オレが、黒金より低燃費な戦闘手段を模索していた時に、考え付いた、プレートメールのようなパワードスーツだ。
その姿がヴァルキリーに似ていたことから、単純にヴァルキリーと、よぶようになっていたのだ。
ヴァルキリーは起動すると、体が羽のように軽くなり、防御力が格段に増すパワードスーツなのだ。
オレは少々燃費が悪くても、黒金を気に入っているので、ヴァルキリーを起動することはなかったが、シャルちゃんとフランちゃんには、これを渡しておくべきかもしれない。
「そいつを渡すのはいいけど、いざとなった時に、簡単には操作できないと思うぜ? それに鎧を造るなら、二人のスリーサイズを知る必要もあるだろ?」
確かにいきなりこいつを渡されて、いざとなった時に使っても、性能がわからなければ、上手く扱えない可能性はある。
それにスリーサイズに関しては、恥ずかしがって、なかなか教えてくれないのではないだろうか?
「二人のスリーサイズについては、後で使用人に事情を説明して聞いておくよ」
「まあ使用人なら、そのあたりの情報は知っているだろうな・・・」
「そんでヴァルキリーが完成したら、二人を連れて狩りに行こう。その時にヴァルキリーを渡して、練習をしてもらうんだ」
出来れば戦うよりは、逃げるために使ってほしいが、状況によっては逃走も難しい場合もある。
「このへんで狩りに行くなら・・・やっぱ王都周辺の森だな」
オレも休日にはこの王都周辺の森に、よく魔物狩りに行くが、二人を誘ったことはまだない。
「いいねえ! どうせならその日は弁当も豪華にしてくれよ!」
「ああはいはい・・・・。そのことについては検討しておくよ」
こうしてオレは、シャルちゃんとフランちゃんとその使用人に、ヴァルキリーについての説明をし、そこで二人のスリーサイズを聞き出すことができた。
そこでなぜかオレのスリーサイズも、教えるはめになったがな。
ヴァルキリーはそれからすぐに完成させた。
まあオレのヴァルキリーを複製して、各部位サイズを変えるだけだから、作業としては簡単だった。
「まあ! 狩りにですか!? ぜひお供いたしますわ!」
「ヴァルキリーがどんな鎧か楽しみね」
「それじゃあ今週の休日の一の鐘に、狩場へ向かおうと思います。集合場所は・・・・」
そしてヴァルキリーが完成したその数日後の休日に、シャルちゃんとフランちゃんを連れて、狩りに行くことになったのだ。
「本日はお誘いいただきありがとうございます。今回はなんでも、王都周辺の森で、護身のための戦闘訓練を行うとか? そこで例のヴァルキリーも見せていただけるのですよね?」
シャルちゃんは乗馬用の服に身を包み、護衛の女騎士フォセットさんと、メイドのミモザさん、アンナさんの二人を連れてやってきた。
「今日は本当に楽しみですわね」
フランちゃんはすでに、護衛のライザさんと、メイドのリュシーさんを伴ってやってきており、オレの後ろに控えている。
「それでは出発しますので、皆さんキャンピングカーに乗り込んでください」
今回は9人と大所帯なので、オレの浮遊キャンピングカーで、王都周辺の森に向かうのだ。
「この白い乗り物に、一度は乗ってみたかったんですのよ!」
「わたくしもこれに乗ってお出かけできると思うと心が弾みますわ」
シャルちゃんとフランちゃんは、うきうきしながら、キャンピングカーに乗り込んだ。
フランちゃんは過去にこのキャンピングカーに乗って、オレとラベナイの街をドライブしたことがあった。
あの時はフランちゃんも、小さくて可愛かったなと思い返す。
今のフランちゃんは急激に背も伸びて、大人びてきているのだ。
とてもオレと同じ8歳とは思えない。
シャルちゃんは10歳なので、当然オレとフランちゃんよりも背は高く、さらに大人びている。
そう思うとオレの小ささが際立ち、少し悲しくも思えてくる。
オレも早く二人ぐらい、背が伸びるといいのだが。
「それでは出発いたします!」
今回も運転はライザさんに任せている。
本当はオレが運転したかったのだが、この中で一番偉い立場のオレが、御者のようなことをするなど、あってはならないことなのだそうだ。
「まあ! まったく揺れませんのね・・・・」
浮遊キャンピングカーは浮遊移動のため、タイヤや車輪の影響で、衝撃を受けることは全くない。
その様子にシャルちゃんは驚いているようだ。
「速度も馬車とは段違いですわ! もう王都の城門が見えてきました!」
馬車で学園から王都の城門に向かうと、一時間ほどかかるのだ。
それに対して浮遊キャンピングカーなら、ものの10分ほどで到着するのだ。
そして程なくして、オレたちの今回の目的地、王都周辺の森が見えてきたのだ。
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