13:街への旅
数日後オレたちは、再びあの会話となった。
それは・・・
「米が食べたい!」
「ポイントがもったいないから無理」
だが肉と木の実ばかりの生活で、うんざりしてきているのは確かだ。
「コロン。やはり一度人里に降りよう」
「え~~~!!」
コロンに人里の話をすると、だいたいこんな反応だ。
それは人里には、人攫いやら盗賊やらの、おっかない人間が沢山いるからのようだ。
「オレの私物か、コロンの獲物を売れば、きっとそれなりの金にはなるはずだ。そのお金で麦か米を買おう」
オレたちもこのスマホばかりには頼れないのだ。
幸い情報拡散の仕事が都合よく来て、10000ポイントほど入ったばかりだが、それでも現地にある物で生活が出来ないと、いつかこのスマホのポイントがつきたり、何らかの理由でスマホの力が使えなくなった時に、生きていけなくなる恐れもあるのだ。
何とか現地で、他に信頼できる人間を見つけて、食料などの伝手は確保しておく必要はあるだろう。
残りポイント:43427
「なら人里には降りてもいい。だがこの先すぐにある村は駄目だ」
どうやらこの先すぐに村があるようだ。
「なぜその村は駄目なんだ?」
「その村からはよく人買いらしき男が、子供を連れて出るのを見る」
つまりその村は貧しく、子供を身売りしているということか。
なら身寄りのないオレなんて、簡単に捕まえて売ろうとするかもしれないな。
なんという世知辛い世の中だ。
案外オレもその村で売られそうになって、逃げて来た可能性はあるな。
前世の記憶しかオレにはないので、そこのところは何とも言いようがないが・・・・。
「ならどこへ行くんだ?」
「その村のずっと先にある街だ。そこなら色々なものが売っている」
こうしてオレたちは、街に向かうことになった。
スマホにファイルとして入る物は入れて、いらないものはなるべく破棄していく。
コーラはまだまだ沢山あったが、コロンが欲しがったのでスマホに入らないか試したら、なんとか入るようなので入れておいた。
2Lペットボトルの水もついでに入れておく。
こういう形の整った物は、スマホに入れてもあまり容量をとらないようだ。
ビッグボアの肉は出発までに粗方食べ終え、残りは実験用にスマホにファイルとして入れている物だけとなった。
これも問題なく食べることが出来たので、街まで数日かかるようなら、食料にしてもいいかもしれない。
「コロン。この壁は残していこう。またここへ戻ってくるかもしれないしね」
洞窟の出入り口に設置した壁は、そのまま置いていくことにした。
街が思いの他危険だった場合、またすぐに帰ってくる可能性があるからだ。
「コロン。街まではどれくらいかかるんだ?」
「歩いて5日くらいだな」
「遠いね・・・」
前世で5日も歩いたことのないオレには、その距離はとても長く思えた。
「じゃあ乗ってよコロン」
「おう!」
元気よくコロンが、ガタクリ一号に乗り込む。
ガタクリ一号で行けるところまで行けば、距離と歩くための体力は、かなり稼げるだろう。
そしてオレたちは、長らくお世話になったその洞窟を後にしたのだった。
「コロ~ン! 待ってよ~!」
あまりスマホの電池を使っては勿体ないと、電池残量を80パーセントほど残して、ガタクリ一号をしまい込んだ。
だがオレの歩みは思った以上に遅く、コロンにどんどん置いていかれるしまつだ。
「ヨッシー遅い!!」
そんなことを言われても、幼女の歩みはとても遅いのだ。
そこでオレは、以前作った浮遊するスケボーに、乗ることになった。
このスケボーで、コロンの歩く速度くらいを維持すれば、かなりの電池使用量の節約となるはずだ。
電池使用量の多さの基準が、動かす物体の大きさと、速さと思われるので、これで問題はないはずだ。
「ヨッシー。ここから少し走るぞ」
しばらく進むと、コロンが言っていた通り、寂びれた村が見えた来た。
コロンの話を聞く限りでは、あの村の人間に、姿を見られない方がいいだろう。
オレとコロンはそれなりの速度で、隠れながら、村の横を通り過ぎた。
「誰も追ってこないな?」
「ああ。なんとか無事に通り過ぎたようだなコロン」
そこからの旅はゆっくりしたものだった。
たまにゴブリンやウルフなどは出たが、コロンが脅すとすぐに逃げていった。
ビッグボアほどの強力な魔物になると、縄張り意識が強いらしいので、糞や何らかのマーキングなどを、残していくようなのだ。
なのでコロンにはすぐにその存在の有無がわかるようだ。
そのため道を迂回したりして、遭遇にはいたらなかった。
野営の時に役に立ったのは、アルミブランケットだったが、野営地ではしばしば大人の旅人と同席となったので、暗い中で、なるべく目立たないように使った。
野営地ではスマホに蓄えておいた、ビッグボアの肉を焼いて食べた。
だが焼き肉のタレなどを目立たないように使うのは、けっこう神経を使ったよ。
周囲は暗くなると、焚火を使っていても手元くらいしか見えなくなるものなのだが、この焼き肉のタレは美味しそうな匂いをまき散らすのだ。
時々無言でこちらを覗き込む奴がいたが、機転をきかせてコロンが、即座に自分の影に、焼肉のタレを隠していたので、見つかることはなかった。
見つかれば、取り上げられることもあるようなので、その際に傷でも負わされては、たまったものではない。
ただ夜中には近くに多くの大人がいた方が、寝ている時に魔物に襲われる危険性は、少なくなるのも確かだ。
野営中の見張りはコロンと交代で行い、コロンが寝ている間に、悪い奴か魔物が出れば、すぐさま巨大なアイアンアームを、スマホから出して起動してやろうと思ったが、そんなことは起こらなかったよ。
まあ平和なのはいいことだ。
「お! 街が見えて来たぞ!」
「あ~見えて来たな~」
コロンが街が見えてきたことに対して、淡白な態度を示すのは、街に対して良い印象を、持っていないからだろう。
こうして4日目にして、予定よりも1日早く、街が見えて来たのであった。
残りポイント:43427
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