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19:聖槍ステロペース


「お久しぶりでございますヨーレシア様!」



 オレの目の前には、うやうやしくかしずく、剥げた髭面のおじさんがいた。

 このおじさんこそ、オレの所属する派閥のトップであり、オレの直属の上司であるバートム伯爵の後見人である、ヴァレリアン・ド・ダングルベール・ブラックナイツ侯爵である。



「えっと・・・・。普通かしずくのは、部下であるオレの方だと思うのですが・・・・」



 オレの派閥のトップであるこのおじさんは、現在オレの前にかしずいたままだ。

 形容するならば、一般社員に会社の会長が、突然かしずくような異様な光景だ。



「めめめ、女神様のお子様であらせられるヨーレシア様に、そのようなことはさせられませぬ!」


「殊勝な心掛けでちゅ・・・・」



 それはおそらく、現在オレの横で浮遊しながらバブバブ言っている、赤ん坊の布教活動の影響であろう。


 だが正直言って今の状況は、オレにとってはやりにくい。


 このおじさんは王都での戦いの最中、冒険者だったオレと出会い、平民だったオレの気やすい口調を笑顔で許したばかりか、オレを肩車して笑っていたようなおじさんだ。

 そんなおじさんにこんな態度で接されても、落ち着かないだけだ。

 


「とりあえず普通に椅子に座って会話をしましょう。あとオレに対する敬語も止めてください。非常に話しづらいですから・・・・」


「そ、そういうことなら・・・・以前会った時のように、ヨッシーとよばせてもらうかな!」



 何とか納得してくれて良かった。

 このおじさんは堂々としている姿が好ましい。

 このおじさんもトムおじさんと同様に、普段は気さくなおじさんだ。


 しかし腕はかなりたつようで、武芸も魔法も完璧なのだそうだ。

 そこはさすがブラックナイツと言うべきだろう。



「それで今日はオレに何か用でしょうか? ただ母に挨拶に来たわけではないのでしょう?」



 このおじさんは防衛省のトップに位置する人物だ。

 言うなれば、軍事のトップに立つ男である。

 こんなところで油を売っているほど、暇ではないはずなのだ。


 それならばユースたんをだしにして、オレを呼び出したと思ってもいいだろう。



「実は先日再びコロンとやりあってな! 負けちまったんだこれが! しかもあっという間にな!」



 このおじさんは以前コロンと模擬戦をして、引き分けに終わっていたのだ。

 だがいつの間にやら再戦をしており、完敗をきしたようだ。



「そこで自慢された魔槍が、これまたすごい一品でな!!」

 


 オレがコロンにあげた魔槍といえば、伸縮自在で持ち運びしやすく、水の刃や弾丸を放てる魔槍だ。

 つまりこのおじさんの目的は・・・・。



「お前の女神の力で、儂にも魔槍を授けてくれ!!」



 オレはヴァレのおっさんには、オレが魔道具を造れることは、話した覚えはないのだ。

 今の話の流れ的には、まるでコロンがオレの秘密をばらしたような感じだ。



「ええ? コロンはヴァレのおっさんにオレの秘密をもらしちゃったんですか!?」



 まさかあの口の堅いコロンが、気の置けるヴァレのおっさんとはいえ、仲間であるオレの秘密を気安く話すわけはないと思うのだが・・・・。



「いいや・・・。何も聞いておらんさ・・・!」



 ヴァレのおっさんは、それはにこやかにそう答えた。


 しまった! はめられた!



「ヨッシーの力の秘密を、この男にほのめかしたのはわたくちよ」


「ええ? なんで?」


「それはこの男が、信用に足る人物だと判断したからよ・・・」



 確かにヴァレのおっさんは、誰からも信頼される気のいいおじさんだ。

 オレの秘密を共有するには、申し分ない人物には間違いない。



「これからこの男には、多くの助けを請うことになるでちょう。ここで恩を売っておいても悪くはないと思うのよ」



 この自称女神には、いったいどんな未来が見えているというのだろうか?

 まあオレもこのおじさんには、これから沢山世話になる予感はしている。

 ならば盛大にこのおじさんに、恩を売っておくとしますか・・・・。



「こほん! ヴァレリアン・ド・ダングルベール・ブラックナイツ・・・・それではこちらに・・・・」



 オレは生徒代表の挨拶で身に着けた、気品あるおすまし顔で、ヴァレのおっさんを席の傍らに誘導する。

 そしてヴァレのおっさんの前に、浮遊して見せた。



「は、はは!!」



 ヴァレのおっさんは、その只ならぬ気配に、かしこまって膝まづく。

 これは先ほどの意趣返しのつもりではあるが、オレはその子芝居を続けつつ、スマホのアプリから最近まで作っていた聖槍を選択し実体化した。



「ヴァレリアン・・・・其方に聖槍ステロペースを授けます。今後も心正しき者を助け励むように・・・・」


「は・・・ははあ!!」



 ヴァレのおっさんは恭しい態度で、そのやたらと光輝く聖槍を受け取ろうと両手を伸ばした。

 まあ槍が光っているのは、オレが槍に付けた機能の一つで、見た目だけのネタスキルだ。



「なんつってね!」



 オレはテヘペロをきめつつそう言った。



「この・・・!」



 するとヴァレのおっさんは、それが芝居による演出だと気づき、笑いながらそう返してきた。


 今回オレがヴァレのおっさんに贈る聖槍は、雷撃を発することはもちろん、刃から微量の破壊の光を発することで、あらゆる物質と魔法を、斬り裂く仕様となっている。

 しかも条件付けまでして、ダングルベール家の血を引き継ぐ者にしか、装備出来ない仕様にしておいた。


 まあ要するに聖剣アルゲースのような槍である。



「ヨッシー・・・・聖槍はやりすぎでちゅ!!」


「ええええ!!」



 するとユースたんはオレを、驚きの目で見ながら、今更のようにそんなことを言ってきた。


 ユースたんによると、聖槍と名の付くほどの武器ならば、それを利用して王位を得ようと画策する者が、出ないとは限らないそうだ。

 それは国を二つに割りかねない案件なので、聖槍はすぐにでも引っ込めるように言われてしまった。


 

「それじゃあせっかくですが、聖槍ステロペースは止めて、投げても返ってくる魔槍ヨーヨーにしておきましょう」


「わ、儂の聖槍が・・・・」



 ヴァレのおっさんはすごく残念そうだったが、こればかりは仕方ないよね。

 まあ魔槍ヨーヨーも、アダマンタイトコーティングの丈夫な槍だし、なによりどこに投げても返ってくるのが面白い。



 ピロピロピロ! ピロピロピロ!



 するとそのタイミングで、オレのスマホが電話の呼び出し音を鳴らし始める。


 いったい誰だろうとスマホを見ると、なんと電話の相手はシャルちゃんであった。

 そういえば今朝コロンに、シャルちゃんに渡し忘れていた、遠話の魔道具を託していたな。

 おそらくそのお礼か何かではないだろうか?

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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