18:王族との会食
現在オレはレーティシア姫の招待を受け、王宮にあるレーティシア姫の居住区にきている。
この日は週に一度の学園のお休みで、オレは王宮で過ごすことになっているのだ。
その際に報告会もかねて、昼食をご馳走になることになったのだ。
本来この国の習慣に、昼食は存在しないのだが、王族や貴族は状況に合わせて、豪華な昼食をとることもあるそうだ。
今回招待されているのは、国王夫妻に、自称女神でオレの母親で赤ん坊の、ユースたんである。
国王はペルスヴァル・ルエパラといい、若干パーマがかった黒髪の、髭もじゃのおっさんである。
例えるなら黒髪の獅子だろうか? 太陽にも見えなくないな。
実はこのおっさん、オレとは面識がある。
国王は王宮が乗っ取られた時に、地下牢に幽閉されていたのだ。
それを救い出した時に、空腹のようだったので、肉まんをご馳走したという経緯がある。
王妃はジュスチーヌ・ルエパラといい、ピンクの髪をアップでまとめた、優し気なおばさんである。
まあ簡単に形容するなら、宝飾でごてごて固めた団子頭だな。
ちなみにこのおばさん、王宮が乗っ取られた時には、王都の外に避難しており、難を逃れている。
コロンはこの堅苦しい会食には参加していない。
コロンはシャル様改めシャルちゃんの、護衛についてもらっているのだ。
シャルちゃんは現在実家に帰省しており、学園のしがらみからぬけて、羽を伸ばしていることだろう。
これは事前にレーティシア姫の指示を、受けていたからである。
何かそこのところ裏の事象がありそうだが、その話はこの会食でするのだろう。
もちろんフランちゃんもこの日は、王都にある別荘で過ごしているよ。
そして今回の昼食のメインメニューは、ステーキハンバークだ。
ステーキハンバーグは、オレが王宮料理人にレシピを伝えてから、ちょくちょく見かける料理となった。
それ以前にミンチを使った料理といえば、クズ肉を固めてつくった、お世辞にも美味しいといえない肉団子が主流だったからね。
「ヨーレシアがわたくしにくれた洗髪剤・・・シャンプーとリンスと言ったかしら? 切れてしまって困っているの」
そんな会食の最中、まずジュスチーヌ王妃が、そうオレに頼みごとをしてきた。
シャンプーとリンスはオレの髪のつやと匂いから、ジュスチーヌ王妃が嗅ぎつけ、欲した物だ。
「えっと・・・・。先週差し上げたばかりだと思うのですけど?」
シャンプーとリンスは果たして、ただだか一週間ほどでなくなるものだろうか?
オレのはまだたっぷり残っているのだが・・・・。
「実は侍女たちにお願いされて、使わせてあげていたら、すぐになくなってしまったのよ」
つまりジュスチーヌ王妃が、侍女たちに自慢したら使いたがって、使わせてあげていたらなくなったと?
「侍女の方は何人くらいですか?」
「十人よ」
なるほど。その人数ならあのシャンプーやリンスが、ただだか十日ほどで、無くなってもおかしくはないのか・・・・。
「わかりました。その十人分も用意しますので、そのぶん多めに魔石をお願いします」
「わかったわ。ありがとうヨーレシア」
オレは通販ショップの物を売る対価として、魔石を要求している。
それは通販ショップで使えるポイントが、魔石でチャージ可能だからである。
その上費用はかかったポイントの、倍額以上いただいているので、こちらにも損はない。
まあ信用できる知り合いにしか、通販ショップの物は、売らないことにしているのだがね。
「それからヨーレシア・・・・侍女たちがお前の部屋に清掃に入って驚いていたわ」
オレに割り当てられた、王宮の部屋のことだろうか?
なぜジュスチーヌ王妃の侍女が、オレの部屋の掃除に入ったかはわからないが、この王宮の個人情報についても、尋ねてみる必要があるだろうか?
「貴女自分の部屋を色々と改造しているわね?」
「え? 駄目でしたか? 確か許可は得ていたと思うのですが・・・」
例え許可を得ていたとしても、さすがに王宮の部屋に、シャワーやら水洗トイレの部屋を追加したのは、やりすぎだっただろうか?
ちなみにシャワーも水洗トイレも魔石式のものだ。
使用すると使い終わった水分を回収し再び魔石に加工し、魔石タンクに追加してくれるエコ仕様だ。
水以外の汚れや汚物は、黒い炭に加工され、廃棄ボックスに蓄積されるので、捨てるのも簡単で清潔だ。
「あれをわたくしの部屋と、いくつか共同のもが欲しいのだけれど・・・・可能かしら?」
「わたくしの秘密をばらさないなら、魔石次第で要求に応じましょう。ハム・・・」
もちろん魔石は工事費用の二倍以上は、いただきますけどね。
オレはこれから懐に入るであろう、大きな臨時収入に思いをはせながら、ニヤ付きながらステーキハンバーグを口に含む。
「ヨッシー・・・・。貴女エドワード侯爵家のシャルロッテを世話役にしたんですって?」
そんなオレにレーティシア姫が、真面目な表情でそう尋ねてきた。
「はぐはぐ・・・・。シャルロッテ嬢をわたくしの世話役にしたのは間違いないですよ」
「貴女はその意味が理解出来ていて?」
シャルちゃんをオレの世話役にする意味?
オレに思い浮かぶのは、エドワード侯爵家との、つながりが出来たということぐらいか?
「その顔はあまりわかっていな顔ね・・・・」
「まあまあレーティシア・・・。彼女は貴族になって日も浅いし、なにより幼い。集まる情報も少なければ判断材料にも困るだろう?」
いったいペルスヴァル国王まで何だというのだろうか?
「現在赤の守護者に、きな臭い動きがある・・・・いや正確には赤の守護者の傘下と言うべきだろうか?」
ペルスヴァル国王の言う赤の守護者とは、レッドナイツの称号を持つ貴族家のことである。
「その傘下というのは、ロヴォイワヨン家とバドカワード家なのだが・・・・」
ロヴォイワヨン家といえば、あのキュウドムとインザクの家だな。
バドカワード家は初めて聞く家の名だ。
「その二家がエドワード侯爵家の娘に婚約を申し込み断られているのだ。それは黒の守護者が白の守護者を傘下に入れたために、赤の守護者が焦ったための行動と思われたが、どうやら違うようなのだ」
確かに同じ王族の守護者であるブラックナイツが同じく王族の守護者であるホワイトナイツを傘下に入れ、勢力を増したとなれば、レッドナイツが同じ侯爵家で巨額の財を持つエドワード侯爵家とつながろうと考えていてもおかしくはないだろう。
それが違うとはどういうことだろうか?
「この二家は聖国とつながり、良からぬことを企んでいるという噂があるのだ」
この異世界で聖国といえば、ジュノマ聖国を示す。
ジュノマ聖国は自らは女神の教えを受けた、聖なる国と自称する宗教国家である。
国名と同様のジュノマ教を掲げ、各国に教えを説いて回っているという。
このルエパラ王国でもその教会は数多く見られ、その影響力の高さが窺える。
もちろんこのルエパラ王国にも枢機卿が派遣され、政治にまでその影響力を及ぼしているのだ。
「もしかして彼らは何らかの方法で、この国の財政を牛耳ろうとしているのですか?」
「其方にしてはなかなか察しがいいな?」
シャルちゃんは財務省であるエドワード侯爵の娘である。
その娘の名が出てきて、何か企むとくれば、財政を狙っていると考えるのが妥当である。
それが本当だとすると、シャルちゃんに婚約を断られたその二家は、次にどういう行動に出るだろうか?
最悪彼女を攫い強引に婚姻を結ばせ・・・・その上でエドワード侯爵家を乗っ取りにかかる。
「つまりわたくしは、彼女を庇護下に入れたと・・・そう言いたいのですか?」
「まあそんなところね・・・・。まだその二家が凶行に及ぶ気配はないし、その件にレッドナイツ自体が絡んでいるかもわからないんだけどね・・・・」
婚約を申し込んだこと自体は、貴族家ならばどこの家でもよくあることだし、さして怪しい行動ではないが、その二家には警戒する必要があるのだろう。
「ヨッシー。今日はこの後予定をあけておきなちゃい」
次に話を切り出したのは、自称女神こと赤ん坊のユースたんだ。
「え? わたくしに何か用事でもあるのですか?」
「この後ダングルベール侯爵との会合を予定ちているのよ。貴女もちょの会合に出席なちゃい」
ダングルベール侯爵はブラックナイツの称号をもつ貴族だ。
トムおじさんの伯爵としての後見貴族であり、オレが所属する傘下のトップに当たる人だ。
過去に何度か会話はしたことがあるものの、あれからほとんど面識もないので、挨拶ぐらいしておけということだろう。
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