15:エドワード侯爵家
その日オレたちは、迎えの馬車に乗り、エドワード侯爵家のお屋敷へと向かった。
結局手土産は日本酒と白ワイン、月餅となった。
客として招かれたのはオレとコロンだが、付き添いとして世話役のフランちゃん、その使用人のリュシーさんとライザさんがついてきた。
まあ彼女らがいなければ、オレがボロを出しそうなのもあるがな・・・・。
「ようこそ当家へ! さあお父様が中でお待ちよ!」
侯爵家に到着すると、学園からすでに帰宅していたと思われる、シャル様が使用人とともに出迎えてくれた。
侯爵家のお屋敷は、石造りで二階建ての、大きなお建物だ。
前世で見たような、西洋風の病院か、学校にも見えなくはない。
「手土産はどうしましょう?」
「手土産? 随分と気が利くわねあなた・・・・」
「手土産でしたらこちらでお預かりいたしましょう。その・・・手土産はどちらに?」
手土産と言いつつ、誰もそれらしいものを持っていないのに、マルセルさんは疑問を抱いたようだ。
「手土産はこちらですよ」
オレはスマホの収納から、日本酒、白ワイン、月餅を出して、マルセルさんに渡していく。
「ほう? 収納ポーチでございますか? さすがはAランク冒険者でございますね」
このスマホの存在は、ばれると面倒そうなので、スマホの収納から出す時は、ポーチから出す風を装っているのだ。
まあ収納ポーチも希少だし、持っている冒険者も珍しいのだがね。
「ようこそエドワード侯爵家へ! 吾輩がリュシアン・ド・エドワード侯爵である!」
食堂へ到着すると、長テーブルの上座で手を広げ、オレたちを歓迎するリュシアン侯爵がいた。
リュシアン侯爵はピンと跳ねた口髭に、四角く整えられた髪形が特徴の、長身で逞しいおじさんだった。
財務省と聞いていたので、商人的なイメージがあったのだが、意外と体を鍛えているようだ。
「第一婦人のイザベラですわ」「長男のエリックだ」
その右には奥さんが腰かけており、さらに手前にエドワード侯爵の跡取り息子であろう長男が腰かけていた。
奥さんは黒っぽい髪色で、盛り髪にしている。
長男も同じく黒っぽい髪色で、こちらは肩まで髪を伸ばしている。
「娘が随分と世話になったようだな! 感謝するぞヨーレシア子爵! 冒険者コロン! さあ今宵は存分に楽しんでくれ! 付き添いのフロランス嬢も遠慮なく食べてくれ!」
長テーブルにはすでに多くの料理が並べられている。
中央に設置されたキャンドルが、それらを照らしているのだ。
見ると肉料理が中心で、テーブルの横のワゴンの上に置かれた、こんがりと焼かれた、巨大な肉の塊が目についた。
やはりこの国の裕福な家庭では、肉が中心のメニューとなるのだろうか?
トムおじさんの屋敷では、野菜や魚もそれなりに出たのだが、学園の食堂にしろ、この屋敷にしろ、肉料理中心のメニューをよく見かける。
「ほうほう? 珍しい手土産まであるのか? ヨーレシア殿はその幼さで、随分と財を蓄えているようだな」
マルセルさんがオレの持参した手土産を、リュシアン侯爵に見せながら何かを耳打ちする。
「はは。それほどでも・・・・」
今回用意した手土産は、この国ではどれも高価な部類に入る。
そのために金持ちだと思われたらしい。
そして全員が席に付くと、食事が始まる。
ただし使用人のリュシーさんとライザさんは、食事の補助に回るために、オレたちの後ろにいる。
こういう食べ方は苦手なのだが、貴族の礼儀だというから仕方がない。
使用人には後から奥の方で、食事が出ると言うから、そちらでお腹いっぱい食べて欲しい。
コロンには普通に席が用意されていた。
それが高位のAランク冒険者であるためか、恩人であるためかは確認していないが・・・・。
たぶん魔族の元王族であることは、バレていないだろう。
オレはナイフで肉を切り、さっそく口に運ぶ。
「むぐむぐ!」
この国のステーキは、どこも同じでかなりの歯ごたえがある。
最近王宮で柔らかい肉を提案したら、そちらが主流になり、慣れてきたせいもあるかもしれないが、改めて外でステーキを食べると、かなり硬く感じてしまうのだ。
まあコロンは普通にがつがつと食べているようだが・・・・。
鍛え方が違うのだろうか?
「白いワインというのは初めて口にするが悪くはないな」
「軽い口当たりで飲みやすいワインね。気に入ったわ」
どうやら手土産に持って来た白ワインを、さっそく飲み始めたようだ。
「このライスワインも気になるな」
「別のグラスに注ぎましょう」
「ああ頼む」
どうやら日本酒も飲み始めたようだ。
「これはいい! 上等な酒だ!」
「まるでアップルのような上品な香りですわ!」
日本酒も気に入っていただけたようで幸いだ。
長男のエリックさんも、白ワインを飲んでいるようだが、顔がにやけているので美味しかったのだろう。
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