表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

121/180

14:侯爵家からの招待状


「こちらエドワード侯爵家よりの招待状でございます・・・・」



 そう言ってオレたちの部屋に訪れたのは、シャル様の護衛を務めていた女騎士だった。


 今から二週間前、オレとコロンは、馬車の車輪が壊れて困っている侯爵令嬢、シャル様の馬車の車輪を修理して、感謝された記憶があるのだ。

 改めてお礼をすると言っていたので、この招待状はあの時のお礼のために、家に招きたいと言うことなのだろう。


 あれから二週間は経つと言うのに、招待状一つ出すのに、随分と時間がかかったものだ。


 相変わらずシャル様とは、ホームルームや授業でよく会うのに、そんなそぶり一つないので、とっくに忘れ去られているのかと思っていた。


 女騎士は招待状をオレに渡すと、一礼した後に挨拶の言葉を述べ、踵を返して去っていった。



「それはきっとこちらの為人(ひととなり)を調査していたのでしょう」



 フランちゃんによると、貴族によっては招待する前に、相手の為人や素行を調べ、それによって対応を変えてくるようだ。

 オレたちの為人は、彼らにはどう映っただろうか?


 招待状には三日後の正午に、部屋まで迎えに上がると書いてあった。

 この学園の授業は、六の鐘が鳴る16時頃には全て終了するが、その後に待っていればいいのだろうか?



「手土産は何をもっていけばいいですかね?」



 以前貴族であるトムおじさんの屋敷に招かれた時にも、お土産に白ワインを持っていった記憶がある。

 やはり今回もお土産が、必要なのではないだろうか?



「あのですね・・・ヨーレシア様。手土産とはあちらの貴族に、こちらの力を示す物であります」



 リュシーさんによると、どうやらこの国の貴族の手土産は、自分たちの裕福さや、領地の特産などを見せつけるもののようだ。

 ようするに貴族の見栄のためにあるものらしい。


 白ワインを渡した時は、トムおじさんは普通に喜んでいたし、そんな感じは微塵も受けなかったというのに・・・・。



「それはヨーレシア様から、全く悪意を感じなかったせいだと思いますよ?」



 なるほど。つまり貴族でも、招いてくれたことへの感謝の気持ちを込めて、手土産を渡せば、喜んでくれると言うことなのだろう。



「なら手土産はお酒とか、簡単な食べ物とかがいいのかな? それとも以前トムおじさんにあげた、白ワインとかでいいんですかね?」


「う~ん・・・あの白ワインですか・・・」



 するとリュシーさんが、白ワインを手土産にするという提案に、難色を示す。

 確か白ワインをトムおじさんに渡した時は、この国での白ワインの価値を知らず、余計なことを口にしてしまい、注意された記憶がある。


 今回は事前に話す内容を決めておけば、大丈夫なのではないだろうか?



「あの・・・・。その白ワインというのは何なのでしょう?」



 するとライザさんが、白ワインが気になるようで尋ねてきた。



「確か白いぶどうのみでつくられた貴重なワインでしたね。味は悪くありませんでしたよ」



 どうやらあの時リュシーさんは、白ワインを試飲させてもらっていたようだ。



「それはぜひともご相伴にあずかりたかったですね・・・・」



 ライザさんは残念そうにそう言った。

 この前の冒険科の時、不快な思いをさせた件もあるし、ここは試飲もかねて、機嫌取りのために出してあげるのもいいかもしれない。



「それでは白ワインが手土産に適切であるか、二人に試飲していただきましょう」


「本当ですかヨーレシア様!」



 オレは通販ショップで白ワインを購入すると、アイテムボックスの中に出現させる。

 これは最近見つけた小技で、通販ショップの目立つ箱の出現を、省くことが可能なのだ。

 あの箱は嫌いではないが、出現して落ちてくると、皆びっくりしちゃうんだよね。



「これが白ワインです」


「わああ! 本当に白いんですね!」



 白ワインを見せると、ライザさんは大はしゃぎする。


 コロンとフランちゃんは、興味なさげだがね。


 まあ二人はオレ同様に、リュシーさんの淹れてくれた紅茶で我慢するんだな。


 つつつ・・・あち!



「これすごく上等のワインじゃない!」


「はい。差し上げるには申し分ないですね・・・」



 二人は白ワインを認めるが、オレ的には同じものを手土産にするのも何だと思う。



「他にこんなのもあるんですが、それと比べてどうでしょうか?」



 オレが次に出したのは、フルーティーな味わいで評判の日本酒だ。

 前世で大人であった時に、オレも何度か飲む機会はあったが、日本酒にも様々な味わいや特徴のものがあった。

 中でもオレはこのフルーティな日本酒を、好んでいたことを思い出す。



「これも変わっているけど悪くはないわね・・・」


「確か遥か東方の異国から送られてきたお酒に、これとそっくりな味の物があったと思います」



 リュシーさんは日本酒を飲んで、そう答えた。

 どうやらこの異世界にも、日本酒と似たお酒があるようだ。



「あちらはこのように色が澄んではいませんでしたし、もう少し味に雑味があったと思いますが・・・・」



 濁り酒のことかな?



「まあ余計なことさえ口にしなければ、白ワインでもこのニホンシュでも手土産としては最適でしょうが、ニホンシュという名には聞き覚えがないので、こちらのことは、ライスワインとお呼びした方がいいかもしれません」



 なるほど。余計なことは言わないように肝に銘じておこう。

 また日本酒はこちらでライスワインと言うそうなので、そちらも覚えておく必要があるだろう。



「どうせならギーハテケナ領で今はやっているチュウカも手土産に加えませんか?」



 そう提案したのはフランちゃんだ。

 ギーハテケナ領では、オレの持ち込んだ中華料理が、現在大流行りらしいのだ。

 そこで特産として、他領にも売り込むという話もあるのだ。



「チュウカのレシピでしたら、わたくしが存じておりますが、手土産で食品であるならば、長持ちするものが好まれます」



 この世界には冷蔵庫がないし、肉まんやギョウザなどの一般的な中華料理であれば、日持ちしないだろう。

 ならあれならどうだろう。中華菓子で有名なあれだ・・・・。



「なら月餅(げっぺい)なんてどうでしょう?」


「「ゲッペイ?」」


「始めて聞く名ですが、どのようなチュウカでしょうか?」


「月餅は中華で定番のお菓子で、日持ちする甘いお菓子なんですよ」



 月餅はハス餡を薄い皮で包んだ、甘い焼き菓子である。

 オレはとりあえず通販ショップで月餅を購入した。



「これが月餅なんですが、食べてみてください」


「ほう! ヨッシーの新しいお菓子か!」


「甘くて美味しいですね!」


「このアンは何でしょう? ギーハテケナ領でアンマンに使っている豆とは違うようですが?」



 ギーハテケナ領では小豆が高価なため、あんまんにはレッドキドニーとよばれる、赤いんげん豆が使われているのだ。



「この月餅に使われている餡はこのハスの実ですが、ご存じありませんか?」



 オレはさらに通販ショップで、ハスの実を購入して皆に見せた。



「あら? ロータスシードじゃない? これもライスワイン同様に、東方から入ってくる高価な豆だったはずですよ」


「これ皮をむくのか? ポリポリ・・・・。苦いが不味くはないな」



 ハスの実は酒のつまみにもなると聞くし、好む人も多いだろう。

 コロンは皮をむいてさっそく食べているが・・・・。



「わたくしの知るチュウカとは、また随分と違うようですが、このゲッペイであれば珍しがられますし、手土産にはよいでしょう」



 どうやら皆の了承も得られ、手土産には日本酒、白ワイン、月餅を持っていくことになった。



「ちなみにこのゲッペイのレシピなどは、教えていただけるのでしょうか?」


「作り方を教えても構いませんが・・・・餡を作るのが大変ですよ?」


「頑張ります!」



 この国にはフードプロセッサーなどの機械がないために、餡を作るのは大変苦労する。

 まあ昔の人は手作業で餡を作っていたそうだし、リュシーさんであれば気合で完成させそうだ。



 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


 《ブックマーク》 と


 評価★★★★★を

 

 お願いします。

 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

 感想、レビューもお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ