12:戦力増強
翌日オレ達は、何時も水浴びをしている川に行き、コロンの魔法強化につながるであろう、実演をすることにした。
昨日はコロンに水の実験やら、銃やら、なぜか格闘アニメやらの動画を見せて、どれなら可能なのか、確認していたのだ。
川に来た理由は、水源の方が水魔法で消費する魔力を、格段に抑えられるからだ。
水源の無い場所だと、魔力で湿気などを集めたり、場合によっては水自体を作る必要があるらしく、そのぶん魔力の消費量は大きくなるようだ。
結果まず水蒸気爆発を、再現してみることになった。
「う~ん。イメージがいまいちつかめないな・・・」
シュ~~~!
コロンは水球を、霧に変えながら言った。
やはり点火無しでは、水蒸気爆発は起こせないようだ。
コロンは水を霧に変えることが出来るので、他の用途はありそうなのだが・・・・。
そして次に試したのは銃だ。
「ワタシは今まで飛び道具は、ナイフか弓矢くらいしか、見たことなかったから、考え付かなかったが、矢は大きい必要はないと思ったんだ」
まずコロンは指先に水球を作った。
チュン!
「おお~!」
その水球から小さな水の弾丸が、発射されたのだ。
チチチチチュン
「連続発射!!」
コロンの水の弾丸は、昨日見た自動小銃のイメージから、連続発射も可能になっていたのだ。
「よし! これで上がったな!! 狩り効率が!!」
うん・・・そうだよねコロン。
確かにそれでは魔法強化というよりは、むしろ狩り効率につながっているよね。
ゴブリンや人相手ならまだしも、あの硬いビッグボアなどの、野性の大型獣を倒せるほどの魔法強化にはつながらない。
「まあ。コーラでも飲んで一息つこうよ」
基本コロンは魔法の無駄遣いを嫌う。
それはいざというときに魔法が使えない事態を、避けたいからのようだ。
この魔法強化演習についても、当然渋っていた。
だがこのコーラを見せることで、コロンの心は変わったのだ。
昨日飲んで思ったのだが、やはりコーラの魔力回復効果は高かった。
なんと350mlで、スマホ電池残量の30パーセントをも、回復してみせたのだ。
コーラの糖度恐るべし。コーラは24本で2000円だった。
残りポイント:41027
「次はワタシがやりたかったやつだ!!」
コロンがやりたかったというのは、某格闘アニメの気で使う技だ。
この技は手の平を上にして掲げ、円盤状の薄いカッターを作り上げるのだ。
「キエ~ザン!!」
うん。コロンはそういうの好きそうだよね。
まあ大きさ次第ではあのビッグボアにも通用しそうだけど、かなり集中力がいりそうなんだよね。
飛行中も操れるようだが、かなり難しいようだ。
ガツン!
そして岩山に衝突するが、そこで弾けて消えた。
まあ現実はそんなものだろ・・・・。
「カメカメハ~~~~」
次にコロンが実演したのは、水による光線だ。
もうこれ放水とかでいいだろう。
火事の時にとか大活躍しそうな技だ。
戦闘的にはちょっとあれかな? 捕縛用とか?
まあ捕縛に使うにしても、魔力消費が激しすぎて使えない。
ブン! ブン! ブォ~ン!
「うん! やっぱこれが一番かな!?」
結局コロン的には、魔力で怪力を引き出し、槍で突くのが一番攻撃力は高いようだ。
今までやった魔法強化演習ていったい・・・・。
「次はヨッシーの番だな?」
そう、コロンばかりの強化でなく、一番どうにかしないといけないのは、非力なオレなのだ。
「狩りに行ってくる!」
翌朝。そう言うとコロンは、槍を片手に洞窟の外に飛び出していった。
コロンはじっとしていられない質で、一日中大人しくしているのは嫌なようだ。
今朝は腕の腫れも嘘のように引いていたし、今日は大丈夫だろうと、送り出したのだ。
まあオレがあの本気になったコロンを、抑えられるはずもないんだけどね。
というわけでそんな非力なオレは、自分の強化をしなければならないのだ。
そこで考えたのが、強固で怪力な戦闘用ゴーレムだ。
身長は三メートルくらいで、鉄製。
胴体部分にオレが乗り込むような、乗り込み型のゴーレムだ。
ゴーレムの中に乗り込んだ、オレの体の動きに合わせて、手足を動かし、器用な作業などもやらせるつもりだ。
指は両手とも親指と人差し指と中指の、三本でいいだろう。
その代わり腕は太く長く、身長の三分の二をしめる、二メートルもある。
手首は無いが、肘から先を蟹のように大きくした。
その結果全体のバランスがとれなくなりそうなので、足は短く太くなってしまった。
最後にむき出しのオレの頭は、やはり気になったので、戦国時代の足軽がかぶっていたような、陣笠に似た鉄の盾を、頭にかぶることにした。
こいつもかなり大きいが、頭の動きの座標に合わせて浮遊させれば、重さは感じない。
飛び道具などの攻撃を防ぐのに、大いに役に立つだろう。
この頭の盾は、いつでも顔が出せるように、背中に収納できるようにしておく。
これで粗方ゴーレムの形が出来た。
現在そのゴーレムが、スマホのウィンドウ内に3Dで表示されている。
問題はこいつを実体化した時にかかる費用だが・・・・。
そしてかかる費用が、なんと68800ポイントだ。
現在43027ポイントなので、全然足りないのだ。
さらにポリゴン数を絞り込んでも、34000ポイントかかってしまうのだ。
「仕方ない。片腕だけで諦めるか」
そこで完成したのが、この大きな鉄の右腕9600ポイントだ。
残りポイント:33427
出した当初はもっと重さを感じると思ったのだが、思った以上にその腕は軽い。
オレの肩の座標に設置されているように、移動してついてくるのだ。
その巨大な腕の装甲に、上腕部から手を突っ込んで操作するのだ。
そしてオレの腕の動きに合わせて、その腕も同じように動く。
オレのような小さな幼女から、二メートルもあるごっつい右腕が生えている様子は、はたから見ると、とてもシュールな様子に見えるだろう。
そして肘から先を大きく造ったせいか、まるで蟹にでもなった気分だ。
ガチガチ!
「かにぃ~!」
「うお!! 何だ!? 化け物か!?」
その時丁度コロンが狩りから返って来た。
今日は上手くいったようで、兎を二羽も仕留めているようだ。
「化け物じゃねえ。オレだ」
「うお!! その腕どうしたんだヨッシー!! そんなに大きく腫れて!!」
「腫れてねえ。例の鉄のゴーレムだが、ポイントがかかりすぎて、腕しか造れなかったんだ」
「まるで化け物だな? 魔物のグランドクラブみたいだぞ」
グランドクラブ? 蟹? いるなら食べてみたいな。
「グランドクラブっているのか?」
「ここらにゃあいない。もっと海の方だ」
だろうね・・・
「その腕ちょっと、ぶら下がってみてもいいか?」
どうだろ? コロンの重さでオレが倒れないかな?
まあ・・・・大丈夫だろ?
「いいぞ」
「よし! おら!!」
コロンはわざわざ大袈裟にジャンプすると、オレのでかい人差し指にしがみついた。
「おお!! すっげ~!! こんなに揺らしてもびくともしない!!」
コロンはぶらぶらと揺さぶるが、コロンの重みが伝わらない・・・変な感じだ。
「そこの大岩持ち上げてみようぜ!」
コロンが指さしたのは、いつかビッグボアを仕留めるのに使った、高さ4メートルほどありそうな、巨大な大岩だ。
ガシッ! ガシッ!
「うん・・・まったく動かない。その岩は無理みたい」
あまり大きな岩は持ち上がらないようだ。
この力の基準はどういったものだろうか? オレの腕力か? それともこの腕の重さそのものなのかな? それとも魔力?
「何だ? つまんねえな・・・」
今度は試しにその横にあった、高さ一メートルほどの岩を持ち上げてみるか?
「あ! 持ち上がった!」
「そりゃあそれくらい持ち上がるだろうよ? よいっしょ!」
コロンはオレの持ち上げているのと同じくらいの岩を、両手で持ち上げて見せた。
コロンが怪力なのは知っているが、コロンと同じくらいの怪力ということは、大きさの割にはこの腕は非力なのか?
コンコン!
「まあ使い方しだいだな? 随分丈夫さはあるみたいだし、役にはたつだろ?」
コロンはその鉄の腕を、叩きながら言った。
ちなみに後で自分を持ち上げようとしてみたけど無理だった。
でも地面を叩いて高く飛び上がることは出来るみたいだ。
こういった仕様も、徐々に解き明かさないといけないだろうな・・・。
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