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09:授業一日目

 その日ついにオレは、学生生活の一日目を迎えた。

 まず一の鐘の半刻ほど前に、朝を迎えるのだ。

 時間にして、御前五時といったところだ。


 まだ周囲は薄暗いが、もうじき空が赤く染まり、夜が明け始めるころだ。

 オレが目を覚ましたのは、昨日引っ越してきた学園内の女子寮だ。


 学園では生徒が、寮で生活することを推奨しているのだ。

 そのことが理由で、今日からオレも寮で生活することになったのだ。


 オレのルームシェアは、護衛のコロンのみだ。

 世話役のフランちゃんたちは、隣の部屋に入寮している。



 コンコン!


「失礼します。お着替えに参りました」



 この声はリュシーさんだ。オレの着替えを手伝うつもりだろう。

 オレが起床時間を告げていたので、その前には布団を出て、着替えていたのだろう。

 さすがは使用人の鑑だ。



「これからジョギングなんで、すでに簡単なワンピースを着ています」



 オレが今着ているのは、運動用に通販ショップで購入した、伸び縮みするワンピースだ。

 ごてごてしたドレスでは、運動をしにくいからね。

 それに頭からずっぽりと着るだけなので気楽で良い。


 まあ貴族は見た目も大事らしいので、それなりにヒラヒラした、見栄えの良いものを選んでいるがね。



「それは残念です・・・」



 オレが着替え終わっていると知ると、リュシーさんはなぜだか残念そうだ。

 どれだけ人の世話が好きなのだろうかこの人は・・・・。



「帰宅したらドレスに着替えますので、その時にお手伝いをお願いします」


「はい承知しました!」



 オレがそう言うと、リュシーさんは満面の笑顔で、そう返してきた。


 オレはこれからすっかり日課となった、ジョギングへ向かうのだ。

 護衛にはコロンが付き添ってくれるが、オレのペースに合わせるのは、コロンには少しもどかしいだろう。


 ジョギングのコースは王都内のみと、約束させられているので、ついでの狩りが出来ないのが残念だ。


 ジョギングが終わるとドレスに着替え、食堂へ向かう。

 朝の食堂は一の鐘から、三の鐘まで開いているらしい。

 つまり六時から十時までだ。


 だがここで注意が必要だ。


 この国の時間の基準は、非常にアバウトなのだ。

 たとえ扉の前に、一の鐘(六時)からと書かれていても、その時間に開いているとは限らない。

 食堂が開くのは、だいたい七時前後になる。


 朝食はバイキング形式で、お金を払い、おかずを選ぶのだ。


 スープにサラダ、色とりどりのフルーツが並べられ、パンも数種類が用意されている。

 安価な麦粥や硬パンも用意されており、少々貧乏でも食事にはありつけるようだ。


 朝からごってりした、肉料理が並んでいるのには少し驚いた。

 コロンが目の色変えて、その肉料理をトレーに積み始める。


 こいつは本当に、昔から肉ばっかりだよな・・・・。



「ヨーレシア様。お食事をお取りいたしましょう」


 

 そう言って手を差し出してきたのはライザさんだ。

 今更ながら思うが、この人はどういった経緯で、ギーハテケナ家のメイドになったのだろうか?


 オレが手に持っている、トレーをよこせと言わんばかりに、手を差し出してくる。



「えっと・・・・自分で選びたいので・・・・」


「そうですか・・・・。では用事などございましたら、なんなりとお申し付けください」


「えっと・・・・。なんだか他人行儀みたいですので、出来れば昔のように話していただけたら・・・」


「はあ・・・。善処したします」



 これは駄目な場合の返事だ・・・・。


 ライザさんも使用人としての教育を受けているので、こちらの都合でそれを変えてもらうのも、難しいのかもしれない。


 ギーハテケナ家では来客がない時は、使用人も一緒に食事をとっていたようだ。

 なのでここでの食事も、その方法を採用した。


 食事は皆で食べた方が、美味しいからね。

 

 他のテーブルでは、使用人を座席の後ろに侍らせて、食事をしている貴族の令息の姿も見えるが、オレならあんな場所に立たれて、食事をするのは食べにくくてしょうがない。



「ヨッシー様はいつも食が細いですね? もう少しお食べになった方が、背も伸びると思いますよ」



 フランちゃんに、痛いところを突かれてしまった。


 しかも現在オレより10センチも身長が高い、育ち盛りなフランちゃんに言われると、妙に説得力がある。

 オレ自身食が細いのは自覚しているが、食べようとしても、あまり喉を通らないのが実情だ。


 そんなオレのトレーには、少量のサラダと、小さなロールパンと、チーズが一欠片、スープが半分だけ入っている。

 以前はパンとチーズだけだったので、今のオレにはこれでも少し多いくらいだ。



「むぐむぐ・・・・。頑張ってもう少し食べてみるよ」



 そう言ってオレは、デザートにライチを一つだけ追加した。


 そんなオレを困ったような目で見つめるフランちゃんだった。


 朝食が終わると、学術科の試験があるのだ。

 これは学術科の授業を、免除するための試験だ。

 オレはこの時間で一年で受けられる、ほぼ全ての学術科の、科目の試験を受けるつもりでいるのだ。



「わたくしはヨッシー様ほど優秀ではないので、一つ一つ地道に授業を受けますわ」



 フランちゃんはこの試験を受けないようだ。

 代わりに空いた時間に、知り合いの貴族令嬢に、挨拶へ行く予定のようだ。

 オレもフランちゃんの知り合いの貴族令嬢には興味があるが、今回は試験を優先したいと思う。

 この試験が受かれば、空いた時間に狩りをしたり、何かの研究に没頭することが出来るだろう。


 そして受けた試験を全て合格したオレは、優々と昼からの授業へ向かうことが出来る。


 ちなみにこの国では食事は、基本朝夕の二回だけなので、昼は間食扱いとなる。

 購買でパンを購入することができるので、お昼はそのパンを頂いたよ。

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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