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08:コロンの強さ


「止めたまえ二人とも! いったいなにがあったと言うんだい?」



 マティアスは睨み合い、今にもつかみ合いを始めそうな、生徒たちの前に出ていった。

 どうやらその片方は、オレに絡んできたキュウドムのようだ。



「この方が急に私に絡んでまいりまして・・・・」



 見知らぬ生徒はそう釈明をする。



「ならばキュウドム・・・・。君が謝罪なさい」


「それは聞けません!」


「なぜだい?」


「この者はマティアス様の護衛よりも、ヨーレシアの護衛の方が強いと申しておったのです!」



 なるほど。それを聞いてカッとなったキュウドムが何かして、床に落ちている料理は台無しになったと?

 それにしても何でこんなコロンが喜びそうな、シチュエーションを作り出すかな?


 今もコロンは目を赤くぎらつかせながら、マティアスの護衛を、戦いたいぞと言わんばかりに睨んでいる。



「やれやれ。これでは収まりがつかないな・・・・」



 そう言うとマティアスは次にオレに、こう提案してきたのだ。



「ここは私の護衛とホワイトナイツ卿の護衛が模擬戦をして決着をつけるというのはどうだろう? その方がこの二人もすっきりするだろう?」



 はあ? なぜそのような脳筋な方向へ話がいくのか?



「そうですわね。わたくしもそれが良いと思いますわ」



 フランちゃんまで!



「でもそれだけでは面白くありません。こちらが勝利した暁には、先ほど皆さんに迷惑をかけた件を、キュウドム様には膝をついて謝罪していただきましょう」



 そしてフランちゃんは黒い笑顔で、そう付け足したのだ。

 ちなみに膝をついて謝罪するのは、この国の貴族にとって最大級の謝罪である。

 もちろん土下座に近いポーズではなく、騎士のようなたたずまいの、片膝をついたものだがね。



「いいだろう! その提案を飲もうじゃないか!? それでこちらが勝利したら貴様らは何をするのだ!?」



 キュウドムがフランちゃんに、食って掛かるようにそう尋ねる。

 自分たちが何か賭けたのだから、お前たちも何か賭けろと言うことだろう。



「何も賭けるわけないじゃないですか? その提案を飲まないなら、この勝負がなくなるだけですから・・・・」


「な、何を言って・・・・」



 そのフランちゃんの不可解な返答に、キュウドムが何か言い返そうとするが、その言葉を押しとどめるように、マティアスが割り込んだ。



「そうなるとキュウドムは、確証もないのに因縁を付けたということになり、どのみち皆に謝罪しないと収まりがつかないね?」



 そのマティアスの言葉を聞き、キュウドムはハッとして、ぐぬぬ顔で黙り込んでしまう。


 素直に皆に謝罪すれば、簡単に事は収まるものを・・・・。

 まったくプライドの高すぎる貴族というやつは、面倒なものである。


 まあオレはフランちゃんの、腹黒い一面を垣間見た気がして、少しドン引きしたがね。

 これからはあまりフランちゃんを、怒らせない方がいいかもしれない・・・・。



「まあ私としてはこの勝負、受けても良いと思っているのだがね? あとはホワイトナイツ卿の言葉一つあれば・・・・」



 そしてマティアスは、最後にそう言葉を付け加えたのだ。

 なるほど。こいつは何としても、コロンと自分の護衛を戦わせたいようだ。



「コロン・・・・。どうする?」


「もちろん戦う!!」



 オレはいちおうコロンの意思も確認したが、満面の笑顔で承諾しやがった。



「はあ~・・・。仕方ありませんね・・・・」


「よし! そうこなくては!」


 

 オレのその言葉が承諾とみなされ、マティアスが口角を上げる。


 こうしてオレの護衛のコロンと、マティアスの護衛が戦うことになったのだ。







「噂通りトラブルに巻き込まれやすい質ですのね・・・」



 オレの側にやってきたシャル様が、オレにそう耳打ちしてきた。

 いったい彼女はオレのどんな噂を聞いたというのだろうか?

 それは後で聞くとして、今は目の前の勝負を見守らなければならないだろう。


 現在オレたちはコロンと、マティアスの護衛の模擬戦を見るために、学園の庭に出てきている。もちろん庭の使用許可は、事前に頂いている。


 オレはシャル様とフランちゃんに挟まれる形で、これから戦う二人を、見守っているのだ。



「ヨッシー! 例のやつをくれ!」



 コロンの言う例のやつとは、鉄製の長棒のことだ。



「あい・・・」



 オレがコロンの上空に鉄の長棒を出現させると、長棒は地面目掛けて落下していく。

 その重厚な鉄の長棒が、地面に着く前に、コロンは難なく掴み取った。



「鉄の棒ですか・・・? いささか模擬戦では強力すぎる武器だと思いますが?」



 その鉄の長棒を見て、マティアスの護衛がそう言ってきた。



「木の棒じゃあ、すぐに折れて使い物にならないからな」



 コロンは狂暴な笑顔で、その護衛を見つめながらそう言った。



「なるほど・・・・。ではこちらも同等の物を用意せねばなりませんね・・・・」



 そう言うとマティアスの護衛は、鞘を剣に縛り付け、外れないように固定した。

 あの鞘も鉄のようなので、打たれればけっこうなダメージになるだろう。



「坊ちゃん・・・・。模擬戦のルールはどうします?」



 次にその護衛は、模擬戦のルールについて、マティアスに相談した。



「そうだね・・・・。ホワイトナイツ卿・・・貴女の意見も伺おう!」


「コロン。お前が決めて・・・・」



 オレは模擬戦のルールとか詳しくないので、コロンに丸投げすることにした。



「それじゃあ・・・・。降参するか、先に地面に倒れた方が負けでいいんじゃないか?」


「坊ちゃん。私はそれで構いません・・・」



 こうして試合のルールが決まり、二人が庭の中心で向かい合う。

 ギャラリーもどんどん増えて、徐々に騒がしくなってくる。



「勝負の前に名乗っておきましょう。私はジャスパー・ド・デュトワ、騎士爵を頂いております」



 騎士爵位を頂いているということは、その剣の腕だけでそこまで上り詰めたと言っても過言であるまい。

 もしかしたら彼は本業の騎士なのかもしれない。

 その中でも選りすぐりなのだろう。



「ワタシはコロンだ!」



 そうコロンが名乗りを上げると、開始の合図を出す人物を探す。



「開始の合図は今回中立の立場であるシャルロッテ嬢に・・・・ホワイトナイツ卿も構わないね?」


「シャル様がいいなら構わないですよ」


「わたくし、その役目・・・喜んでお引き受けしますわ」



 笑顔で合図の役割を承諾すると、開始の合図を出すために、シャル様が徐に右腕を振り上げた。



「それでは双方とも向かい合ってくださいまし・・・・」



 そして開始の合図を固唾をのんで見守る。



「始め!!」



 そうシャル様が開始の合図を出すと、瞬時に動き出したのはジャスパーの方だ。

 重厚な鎧を着ている割には素早い動きだ。

 どうやらやつも身体強化が、使えるようだ。

 だがその様子を見ても、コロンは槍を構える様子もない。



「何という拍子抜けでしょう・・・・」



 ジャスパーはそう呟くと、剣を突き出し加速する。

 槍をいつまでも構えないコロンを見て、これで勝負がついたと思ったのだろう。



「は! 圧勝じゃないか!」



 その様子を見ていたキュウドムも、下卑た笑みを浮かべながらそう叫んだ。



 ガツ~ン!!


「決まったね・・・・」



 コロンの腹にジャスパーの剣先が命中し、まるで勝負が決まったかのように、マティアスがそう呟いた。


 だがその状態でジャスパーは、いっこうに身動き一つしない。

 それどころか青い顔で固まっている様子だ。


 まあここだけの話、コロンの体は身体強化で鉄以上に固くなるので、あの程度の武器でも相当強く叩かないと、ダメージすら与えられないのだが・・・・。



 ドカ~ン!!



 その直後破壊が響いたと思うと、コロンはジャスパーを片手で掴み、地面に叩きつけていたのだ。



「あ~・・・・。武器を使うまでもなかったな・・・・」



 コロンは頭をぽりぽりと書きながら、残念そうにそう呟いた。

 どうやらジャスパーは白目をむいて、痙攣しているようだ。


 ギャラリーは開いた口が塞がらないようで、いつまでもコロンを驚愕の目で見ていた。



「し、勝者コロン!!」



 しばらくして再起動したシャル様が、コロンの勝利を告げたのだった。



「「わああああああああ!!!」」


「すんげえ!」「なんだあの怪力!?」


「なるで魔王のような娘だ!」



 遅れてギャラリーも復活し、勝利したコロンに熱い声援を送る。



「まったく君のおかげで大恥をかいちゃったよ。さあ皆さんの前で膝をついて謝罪するんだ」


「くっ・・・・!」



 その後キュウドムは悔しそうに歯を食いしばり、膝をついて皆に謝罪した。 

 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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 いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。

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