05:結果発表と入学式
「騙された・・・」
試験の結果発表当日、張り出された試験結果を見て、オレはそう呟いていた。
張り出された結果発表を見ると、たしかに満点は複数いた。
しかし複数と言っても、そこには三人しか名前が書かれていない。
オレと侯爵家のシャル様と、フランちゃんだ。
だがなんとオレの名前は、花丸付きの一位にランクインしていたのだ。
つまり今年の学年の主席はオレである。
しかも魔力測定結果が、高すぎて測定不能とか、ありえない結果が追記してあった。
どうやら魔力測定器は上限を超えると、数字が文字化けして表示されるようだ。
オレが三人の中で主席に選ばれたのは、間違いなくこの結果が原因だろう。
「あらヨッシーおめでとう。一位なんて学園の誉れじゃないの?」
そんな白々しいことを言いつつ、お供を連れたレーティシア姫が現れた。
「オレをはめましたね?」
そう言いつつレーティシア姫を一睨みする。
「そんな怖い顔しないの。貴女は王国の英雄なんですから。そんな英雄が主席をとれないなんて皆がっかりしますわよ」
「ごきげんようヨッシー様。この度はおめでとうございます」
すると侯爵家の令嬢シャル様が、お供の者を引き連れてやってきた。
「どうしたんですの、そんなに頬を膨らませて? 可愛いお顔が台無しですわよ」
「この子ったら普通がとれなかったものですからいじけてますのよ」
「これは失礼いたしました。姫様がいらっしゃるなんて、夢にも思いませんでしたので・・・・」
レーティシア姫に気づいたシャル様が、慌ててカーテシーで挨拶をする。
「普通が良いなんて変わっていますわね? 変わり者はフロランス嬢だけでけっこうですのに・・・・」
「あらシャル様ごきげんよう。変わり者のフロランスでございますわ」
そう言って二人は、睨み合いを始める。
この二人はなぜかライバル関係になりつつあるのだ。
そんなわけでオレは、見事学年主席になってしまったのだ。
その翌日オレは、入学生代表の挨拶の役目を言い渡され、さんざん練習をさせられたのだった。
この意趣返しは、やはり壇上で行うべきだろう。
入学式当日・・・・。
「入学生代表! ヨーレシア・ド・ホワイトナイツ嬢!」
「はい!」
入学生代表の挨拶で名を呼ばれたオレは、いつもの眠たげな表情を引っ込め、さんざん練習した令嬢のおすまし顔を取り繕う。
そして笑顔で壇上の下の生徒や先生、保護者たちを見つめる。
清楚に、そしてお上品にカーテシーをきめる。
すると辺りは静寂につつまれ、息をのむ声が聞こえた。
どうやら素材だけはすごくいいと言う、レーティシア姫の評価も、まんざらではないらしい。
掴みは十分だ。ここからがオレの挨拶だ。そして復讐の時なのだ。
オレはレーティシア姫から渡された、取り繕った文章をそっと台の上に伏せた。
「皆さんこんにちは! ヨッシーです!」
そして大きな声で片手を上げ、のうのうとそう挨拶したのだ。
すると皆は唖然とした顔で、こちらを見つめていた。
レーティシア姫なんかは、これでもかっていうくらい、表情を引きつらせている。
掴みは完璧だと思ったのだが、どうやら笑いをとるには至らなかったようだ。
「こほん! ええ~・・・。それではここから本番の挨拶いきま~す・・・・」
挨拶が終わると再び取り繕い、おすまし顔でカーテシーをきめる。
「「ど!!」」 「「あはははは!!」」
「何だ今の挨拶!?」
「ヨッシーだってよ!」
すると去り際に、会場からは割れんばかりの笑いが起こった。
オレはその笑いを横に、おすまし顔でゆっくりと壇上を去っていくのだった。
「ヨッシー!! ヨッシィィー!!」
教室へ向かい着席して待っていると、血相変えたレーティシア姫が、怒鳴り込んできた。
「姫様! そのように声を上げられてははしたのうございます!」
「貴女は黙っていてちょうだい!」
何やらお付きの女騎士と、もめているようだが、用事があるのは明らかにオレだろう。
そしてスカートのすそをたくし上げ、ずかずかとオレの目の前までやって来た。
「あの挨拶はなんですか!?」
「むぎ! いて!」
「あんなみっともない挨拶をしでかしたのはこの口ですか!!」
レーティシア姫が、オレのほっぺたをつねり上げる。
どうやらオレは、意趣返しに成功したようだ。
「あれ程言いましたわよね! 最初の挨拶は大事だと! それなのに貴女は・・・・もう会場は爆笑の嵐でしたよ! わたくしさんざん貴女を友人に紹介しましたのに、あの後恥ずかしくて仕方がありませんでしたわ!」
そのレーティシア姫の剣幕に、周囲の生徒たちはなにごとかと怯えている。
「まあまあ・・・落ち着けってレーティシア。ワタシたちの義妹が、どんな奴か初めからわかっていたろ? それに周囲が怯えてっから・・・・」
見かねたコロンがやって来て、そんなレーティシア姫をなだめている。
この二人は意外と仲が良いのだ。
オレはその言葉に耳を傾けつつ、つねられた頬をさする。
「はあ~・・・・。わざわざ貴女のために長文まで依頼して書かせたわたくしの苦労はいったい・・・」
「まあまあ。後でお菓子でも持ってお詫びに伺いますので、ここは穏便に・・・・」
オレがそう声を掛けると、レーティシア姫はオレを再び一睨みして、その後肩を落としたと思うとため息をついた。
「わかりましたわ。後で必ず伺いなさい・・・・」
そう言うとレーティシア姫は、かかとを返して教室から去っていった。
意趣返しには成功したが、この後の謝罪に苦労しそうだ。
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