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03:王立ルエパラ学園

 自称女神の赤ん坊、ユースたんの騒動が終わると、オレの入学試験が始まる。

 入学試験の科目は、簡単な国語と数学だと聞いている。


 そして面接などでも学力を測られるそうなので、幅広い知識の詰め込みも必要となる。

 だが幸い前世と比べても、今のオレのスペックは高いようなので、本を読むだけでもかなりの知識が頭に入ってくる。


 さすが女神を自称する、超魔力生命体につくられた肉体は、一味違うようだ。

 しかしオレは間違っても満点など取得して、学年主席などという面倒なイベントは避けたいと思っている。

 この後に待ち受けるイベントは、入学生代表の挨拶や、妙に敵視されたりという、さらに面倒なものばかりだ。



「90点くらいとっておけば目立たないですかね?」


「何を言っているのヨッシー? 入学試験を受けるのは子供ばかりなのよ。難しい問題が出るはずないじゃない。それこそ生徒の大半が満点をとるでしょう。その中で90点なんて恥ずかしくて人前に出れないわよ? かりにもこの国の子爵である貴女が90点なんてありえないわ」



 レーティシア姫に相談したところ、そんなことを言われた。

 どうやらオレは最低でも、満点をとらないといけないようだ。

 


「でも生徒の大半が満点なら、いったい誰がその年の主席を務めるんですか?」


「主席は家格の高い者が・・・ま、魔力測定も関係あるかもしれないわね・・・」



 なんだか誤魔化されているような気もするが、王族であるレーティシア姫の言うことに嘘はあるまい。


 ないよね?


 入学試験の最後には、才能のある受験生を見つけるために、魔力測定なるものが行われるようだ。

 その魔力測定が主席と関係あるのなら、ぜひともつまらない普通のポイントを叩きださねばなるまい。



「そうねヨッシー。受験前に試しに魔力測定を受けておきなさい」



 そんなわけでオレは、王宮で魔力測定を受けることになった。

 魔力測定は王宮内にある、魔法科の施設で執り行われた。

 レーティシア姫とコロンが見守る中、オレは魔力測定係のお姉さんの前に出る。



「この装置についている水晶に魔力を流してみてください」



 測定係のお姉さんに言われるがままに、オレはその水晶に手を当てて魔力を流した。

 魔力測定の数値は三桁で表示されるようだ。

 ということは999まで測定が可能ということになる。

 オレの数値はいったい1~999の内のどれくらいだろうか?



『測定結果△◇〇MP』



 何だと・・・? 数字ですらないだと!?



「「・・・・!!」」



 オレ魔力測定の結果は、△◇〇MPという、わけのわからない数値だった。

 もしかしてこの図形が、測定数値を現しているのだろうか?

 だとしたらなぜこんなわかりにくい数値にしたのだろうか?


 その数値を測定した直後に、なぜか周囲の空気が微妙な感じになった。

 この微妙な空気はいったい、何なのだろうか?

 そして△◇〇MPとは、いったいどのような数値なのだろうか?


 謎は深まるばかりだ。



「ちなみにオレの△◇〇MPは、高いんですか? それとも低いんですか?」



 オレは思い切ってその結果について、レーティシア姫に聞いてみた。



「普通です! 普通すぎて何も言えないわね! ですわよねコロン!?」


「ぶっ! あ、ああ・・・普通・・・より・・・ちょこっと上かな~・・・?」



 怪しげな返答をするコロンを、疑惑の目で見るが、腹芸の苦手なオレには、いまいち本当か嘘か見抜けない。



 そんなわけで一ヶ月後オレは、入学試験を受けるために、王立ルエパラ学園に来ていた。


 その日王立ルエパラ学園の正門の前には、貴族の乗る馬車が、列をなして押し掛けていた。


 今回は貴族でない一般の人たちも試験を受けるそうで、そちらは貴族とのトラブルを避けるために、他の門から入ってきているそうだ。



 プップ~!


「そこの馬車! 前に出てくださ~い!」



 ライザさんが前で止まっている貴族の馬車に、注意を呼び掛ける。

 オレたちは悠々とキャンピングカーでやってきた。

 キャンピングカーはあれからさらに改造を施し、ホワイトナイツ家の紋章も追加したのだ。


 今回はキャンピングカーには、オレとコロンは勿論、フランちゃんとリュシーさんも同乗しているのだ。

 運転手はライザさんが担当している。



「どちらの馬車です? 失礼でございましょ・・・ひっ! 何ですかこの乗り物は!?」



 前で止まっていた馬車の執事が、こちらを見て驚愕する。



「こちらはホワイトナイツ家ですが、いかが致しました?」


「ホ、ホワイトナイツ家!? 王家の守護者といわれている、魔王殺しで名高いあの・・・・」



 その魔王はオレの横で、ぴんぴんしているがな。



「わたくしエドワード侯爵家の執事を務めさせていただいております。マルセルと申します」



 エドワード侯爵家といえば、財務省のトップを務める、有力な貴族家だったはずだ。

 ならば恩を売っておいても損はあるまい。



「何かトラブルでしょうか?」


「馬車の車輪が壊れてしまい大変難儀しております」



 見たところ車輪の一部が、破損しているようだった。

 あれなら車輪を直せば、再び動かせるだろう。



「コロン! あの車輪外せるか?」


「ああ? まあはずせなくはないな・・・・」



 車輪の破損はオレのスマホのアプリでないと治せないのだが、車輪を器用にはずすならコロンの方が適任だ。

 コロンは意外に器用で、馬車の修理などもこなせるのだ。



「時間はとらせません。この馬車の修理は任せていただけますか?」


「は、はあ・・・・。少々お待ちを・・・・」



 オレが修理を申し出ると、執事のマルセルさんは馬車の中の人物に確認に向かう。



「お嬢様。馬車の修理をと申し出られた方がおられます。いかがいたしましょう?」


「手早くいたせと申し付けなさい・・・・」



 マルセルさんが確認すると、中から鈴を鳴らすような、幼い声が聞こえてきた。

 おそらく侯爵令嬢なのだろう。これから修理をするというのに、馬車から出る気はないようだ。



「中にいるお嬢様に、修理中は大きく揺れるとお伝えください」


「承知いたしました・・・・お嬢様、馬車が揺れるそうです」


「かまわないわ! さっさとなさい!」



 ずいぶんと傲慢な返事だ。有力貴族の侯爵家の娘ともなれば、態度も大きくなるようだ。



「申し訳ありませぬ・・・・。始めてください・・・・」


「ヨッシー! 馬車の車体を支えてくれ!」


「了解! 黒金の腕!」



 オレは馬車の車体を支えるために、黒金の腕を起動した。



「ひぃぃ! 何ですかその腕は!?」



 すると二メートルもある、巨大な金属の腕が出現し、それを見たマルセルさんが、怯えて悲鳴を上げる。


 

「な! 何だ!?」



 その様子に先ほどからこちらを見ていた、二人の護衛も警戒を強める。



「この大きな腕で車体を支えないと、車輪は外せませんから」


「き・・・危険はないのだな?」


「危険があれば出しません」


「な・・・なるほど・・・・。続けてくれ・・・・」



 オレがそう説明すると、護衛は納得したようで引き下がっていった。



 ゴ~ン!



 ちょっと力を入れすぎたようだ。



「おい! 中にはお嬢様がおられるのだぞ!」



 その様子に再び護衛の二人が、警戒をあらわにする。



「それは失礼しました。でも修理の前に揺れるとは言いましたよね?」


「そ・・・それは確かに・・・・」



 オレが説明すると、再び護衛の二人は引き下がった。

 念のために車体を確認したが、車体に異常はないようだ。

 


「いったいなんですの!?」



 すると今度は驚いた様子の侯爵家のお嬢様が、馬車の外に顔を出す。



「これは腕・・・ですの?」



 可愛らしいお嬢様が、オレの黒金の腕にたまげているようだ。



「ヨッシー。車輪外れたぞ」


「おっけ~!」



 オレは壊れた車輪をコロンから受け取り、いったんスマホの中に収納した。

 そして片手でスマホを器用に操り、3Dモデル作製ツールのメタセコの中に入れて、形を復元していく。

 


「車輪直ったから付けてみてくれ」


「おう!」



 コロンに修復した車輪を渡すと、手早く車輪を付け始める。

 車輪が再び馬車に戻ると、馬車の修理は完了した。



「これでいいだろ!」



 馬車の修理が終わると、いまだに唖然とした様子で、お嬢様とマルセルさんはオレたちを見ていた。



「あ、あの・・・・。車輪はもう直りましたし・・・・。それに後続の馬車がつかえてますので・・・・」


「これは大変失礼いたしました!」



 オレがそう声を掛けると、最初にマルセルさんが再起動した。



「確かに車輪は修復されております! ありがとうございます! お礼の方は後ほど改めていたしますので!」



 そして壊れていた車輪を確認すると、そう礼を述べてきた。



「お前たちすぐに馬車を!」


「「は!」」


「お嬢様も口を開けたままでははしたのうございます!」


「は! わたくしとしたことが!」



 そして護衛とお嬢様に注意を呼び掛けると、そそくさとその場を去っていった。

 どうやらこれで無事学園の正門をくぐれるようだ。


 お読みくださりありがとうございます。


 面白い!

 また読みたい!


 と感じた方はぜひ・・・・


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