11:ビッグボアの焼き肉
「ヨッシー!! 起きろ朝だ!!」
翌朝目を覚ますと、そこにはハイテンションのコロンがいた。
「もう調子はいいのか?」
「ああ!! あのめちゃ甘い果物を食べたから、元気満点だぜ!!」
見ると昨日コロンの枕元に置いておいた桃缶が、空き缶となって転がっていた。
どうやらナイフで蓋をくりぬいて開けたようで、蓋の部分に歪な穴が空いていた。
缶のつまみを引けば開いたんだけど・・・まあいいか。
「すまん! あんまり美味しいから、ヨッシーの分を残すの忘れていたぜ!」
「いや、いいんだ。あれは病人用だからな。全部コロンのぶんだ」
オレの中では桃缶は病人食だ。
それは風邪をひくと、何時も母親が、桃缶を出してくれたからだ。
「そんなことよりも、熱は本当に下がったのか?」
「ん!?」
オレがコロンの額に手を伸ばすと、コロンは額を差し出してきた。
コロンの額に触れると、確かに熱は下がっているようだった。
冷却シートは無残にも、空き缶の横にくしゃくしゃになって転がっていた。まあ熱が下がって良かったけどね。
「腕の方はどうだ? 痛みはないか?」
「ああ。痛みはね~よ。このかっこいい黒い布のおかげか知らないが、ひんやりして気持ちいいくらいだ」
しかしあの腫れ方だ。一日二日で直るものではないと思う。
「じゃあ湿布変えるから腕見せて」
「ん? シップ?」
そうか。コロンには湿布じゃあ通用しないよな。
「その黒い布の中に、貼り薬があるんだよ」
「ほうほう・・・ん!」
するとコロンはオレに腫れていた腕を見せてきた。
黒いサポーターを外して腕を見ると、だいぶん腫れは引いたようだが、完全には治りきってない様子だった。
「今日は狩り中止な?」
「え~~~!!!」
オレのその言葉に、コロンは不満そうな声を上げる。
そしてオレはそそくさと、コロンの腕の湿布を張り替えると、再び黒いサポーターをコロンの腕につけた。
「またいつ熱が上がるかわからないだろ? だから今日は安静にして、様子を見よう? な?」
「うん・・・わかった・・・」
オレが親身な様子でそう言うと、コロンはしぶしぶ納得したようだった。
「で、今日は早速オレたちが昨日仕留めた獲物を、じっくりと見てやろうじゃないか!」
「おお! それはいいな! で? あの獲物は今どこにあるんだ?」
「ここだ」
オレはスマホを操作すると、ファイル化してあったビッグボアの肉と骨になった物を、コロンの前に出した。
「およ? ヨッシー1人でよくここまで解体できたな?」
そのすでに肉と骨だけになっているビッグボアを見て、コロンが驚いているようだ。
「昨日コロンを驚かそうと思ってね。血だらけになりながら、慣れない手つきで何とかやったよ」
正直あの大きさの獲物の解体は、しんどかった。
スマホでファイル化して移動したり、ひっくり返したり出来なければ、不可能だっただろう。
それにスマホで猪の解体のコツを、色々見ながらやっていたので、可能だったともいえる。
それでも頭を落としたりするのは、すごくしんどかった。
皮なんて剥ききれなくて、中途半端になっている。
「皮が剝ぎ切れていないな? この部分はこうするんだ・・・」
コロンは中途半端になった、ビッグボアの皮剥ぎを、器用な手つきでスルスルとやってのけた。
後は色々と説明しながら、骨を外すなどの、オレのやりきれなかった解体部分を、修正を加えながらやってくれた。
気付くとすでにビッグボアは、いくつかの肉の塊に、分類されていた。
「流石コロンだ。ここまで解体が早いとは・・・」
「まあな。昔狩りでよく教えてもらいながら、やっていたからな。」
コロンは得意げに、鼻の下を指でこする。
それはいつの話であろうか?
コロンが12歳くらいに見えるので、もっと幼い時分には、すでに狩りに参加していたことが予想できる。
まるで野生児のように育ったのだな、コロンは。
ジュ~~~
「おお! 美味そうだ!!」
そして解体後は、早速一口大に切り分けたビッグボアの肉を、焼き肉にして、焼き肉のタレ250円でいただく。
残りポイント:43027
「美味い!! ヨッシーが作ると何でも美味しくなるな!」
コロンが次々と焼いた肉を、頬張っていく。
そりゃあ某有名メーカーのタレですからね。
美味しいのは当たり前ですよ。
オレもフライパンの隅の方に、自分の肉を確保しておいて、焼いて食べているが、数枚で胃が受け付けなくなった。
本当に今のオレは、食が細くなっている。
「今日は戦力増強について考えたいのだが、コロンはどう思う?」
食後は戦力増強について、コロンに話を持ちかけてみる。
オレたちはあの巨大なビッグボアを前にして、危うく死にかけたのだ。
あんな強敵でも相手どれるような、武器や戦う手段を用意しておいた方が、この先はいいと思ったのだ。
「ワタシには怪力と水魔法があるが、攻撃に使える水魔法は、あの水の矢くらいだ。それに正直ビッグボアくらいの強敵が現れると、まともにやり合っても、全く勝てる気がしない」
コロンは何らかの方法で、怪力を発揮できるようだ。
しかし魔法があの水の矢だけというのは、少し心もとない。
「じゃあ大きな水球で、ビッグボアを溺死させるとかどうだ?」
水球で溺死させる魔法は、ラノベなどでもよく見かけた。
コロンでも使えそうなものなのだが・・・・。
「うあ! ヨッシーはえげつないこと考えるな!? でもビッグボアくらいなら、飲み干せるくらいの水球しか、作れないぞ?」
なるほど。コロンの水球は、あまり大きくは出来ないようだ。
ならこうゆうのはどうだろう?
「じゃあその水球を、さらに操って、相手の腹の中で暴れさせるとかどうだ?」
この水魔法の使い方も、確かどこかのラノベで読んだ気がする。
「うあ! もっとえげつなくなった! あ、でも相手の体に入った水球は、相手の魔力の影響下に入るからな。多分無理だ」
うん。説明からはよく理解できないが、無理なことは分かった。
この世界では、相手の体内に入った水球は操れないようだ。
ならこれならどうだろう?
水魔法といえば氷魔法だ。水魔法は成長することで、氷も作れるようになるのだ。
これはラノベでもよく見るパターンだし、可能ではないだろうか?
「いや。無理」
コロンにそのことを聞いてみると、そう言葉が返ってきた。
「え? 何で?」
「昔できる奴に習ったことがあるけど、無理だった」
コロンは魔法を習ったことがあるのか?
魔法って平民が普通に習えるものなのだろうか?
コロンは昔、どこかの貴族か何かだったことがあるのだろうか?
いろいろ気になるが、まあ今はそれは聞かないでおこう。
他人の過去には、デリケートな問題が含まれることもあるからね。
コロンは獲物に刺さるくらいの、水の矢が作れるのだ。
それ以上の武器が作れる可能性はある。
そしてその水の矢は、魔力で固めて刺さるくらいに、硬くしていると推測できる。
でなければ水を獲物に刺すなんて、とてもできる芸当ではない。
水圧で刺す方法もあるが、コロンの水の矢を見る限り、水圧がかかっているようには見えなかった。
「コロン。魔法にはイメージは必要なのか?」
「そうだな。魔法にはイメージと呪文が必要だな」
このコロンの言葉から推測するに、コロンは魔力さえ伝えられれば、イメージで水を操れるのだろう。
なら動画などで見たイメージは、水で実現可能なのだろうか?
オレはスマホを使い、コロンに幾つか水を使った実験と、兵器の動画を見せることにした。
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