02:赤ん坊女神
「ヨッシー。もしかしてその赤ん坊は・・・・?」
なんとオレの腕の中には、赤ん坊が抱かれていたのだ。
周囲の皆はたった今引き起こされた現象に、動揺を隠せない様子だ。
「ヨッシーの赤ちゃんか?」
するとやっと再起動したコロンが、そうのたまったのだ。
まるでオレが産み落としたような言い方は、止めていただきたい。
「違う! この子はオレの母親だ!」
オレは即座にコロンの言葉を否定した。
だがそのオレの言葉に、皆はさらに困惑を深めたようだ。
「女神様なのね・・・・? その赤ん坊が?」
「えっと・・・たぶん・・・」
「たぶんではありまちぇん! わたくちこそめがみなのでちゅ!」
小さな赤ん坊が拙い口調でしゃべると、皆その赤ん坊に注目して固まってしまった。
「・・・・女神様この度は顕現していただき、大変嬉しく思います。遠い昔、邪神を倒しました時には我が祖先の勇者にご協力いただき、ありがとうございました」
レーティシア姫は赤ん坊の前にかしづくと、そう礼を述べた。
「レーティシア姫・・・・。よくこんな胡散臭い赤ん坊を女神と認めましたね」
「ヨッシー!! 先ほどから不敬が過ぎますよ!!」
するとレーティシア姫に、叱られてしまった。
スマホから突然出て来たような赤ん坊だ。
魔法のランプのから出てくるような、魔人の可能性もあるのだ。
これからは彼女のことを心の中で、自称女神とよぶことにしよう。
まあオレをこの異世界に、よびだしたのは彼女に間違いなさそうだが・・・・。
「あなたは・・・ゆうちゃのちをひきつぎしものでちゅか?」
「そうです。あの時は貴女のおかげで、無事に邪神は封じられ、この国に平和が戻ったと聞いています」
遠い昔女神に聖剣アルゲースを与えられた勇者は、邪神と戦い、見事邪神を封じたと聞いている。
その勇者がこのルエパラ王国の初代国王となり、今日に至るのだ。
「よっち~! わるいでちゅがあかちゃんにひつようなものを、ちゅうはんしょっぷでこうにゅうしてくだちゃい!」
レーティシア姫との話が終わると、自称女神はオレにそんなことを頼んできた。
拙い口調で聞きにくいが、自称女神は通販ショップで赤ちゃんに必要なグッズを、買いそろえて欲しいようだ。
オレも鬼でないので、赤ちゃんの服や、おしゃぶりやらおしめを、通販ショップで買いあさった。
途中ミルクはあの会社がいいだの、これじゃないと駄目だのと注文が入ったが、問題なく買い揃えることができた。
「で? オレをこの異世界に呼び出した理由をまだ聞いていませんが?」
オレはベビーベッドの中に横たわる、赤ん坊にそう尋ねた。
「そのからだをつくりだしたのはわたくちでちゅ。ほんらいそのからだは、わたくちの・・・・おやちゅみ・・・・zzzz」
そこまで話すと自称女神の赤ん坊は、急に寝入ってしまった。
話の途中で寝ないでもらいたいのだが・・・・。
ものすごく気になる話ではあったが、寝てしまった赤ん坊を起こすわけにはいかない。
その日はその話を聞くのは、諦めることにした。
後日その話を聞き出そうとしたが、はぐらかして答えてくれなかったよ。
オレをこの異世界に呼び出した理由を、余程言いたくないようだ。
赤ん坊のことが国王の耳に入ると、さっそく優秀なベビーシッターが派遣されてきた。
これでようやくオレは、赤ん坊の世話から解放されることになった。
だがこの赤ん坊ちょくちょくベビーベッドを抜けて、オレのところまでふよふよと飛んできたのだ。
その度に血相変えてベビーシッターさんが、連れ戻しに来ていたがね。
その際にこんな話をしていきやがった。
「よっしー。わたくちたちのせいちょうは、ひとのごぶんのいちくらいはおそいでちゅ。だからあなたもわたちもなかなかせいちょうしないでちょう」
拙い言葉で聞きにくいが、要するにオレの成長速度は、他人の五分の一くらい遅いと言いたいのだろう。
どおりで背がなかなか伸びないわけだよ・・・・。
まあオレがこの異世界に呼び出された理由については、ついに語られることはなかったのだがな。
そんなわけで自称女神の赤ん坊は、オレと同じように王宮で過ごすこととなった。
またこの赤ん坊の名前だが、長くて言いづらいので、ユースとよぶようにした。
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