29:数ヶ月後・・・・
「ヨッシー。勉強の方は進んでいるかしら?」
「そこそこ順調です・・・」
レーティシア姫からの質問に、適当に答えておく。
レーティシア姫は最近、まるでオレの姉であるかのように、ちょこちょことオレを気にかけてくれるようになった。
近頃それが鬱陶しくも思えてきた今日この頃である。
あれから数ヶ月後、オレはルエパラ王国の王宮にいた。
なぜこんなことになっているかというと、オレが魔王にならなかったからだ。
あれからオレは魔王国の各部族の長を招集し、会議を重ねた。
もともと魔王国は、各部族の集まりで構成される、合衆国のような国なのだ。
それはオークだったり、一角族だったり、牛角族だったりするのだが・・・・。
その各部族と何を話し合ったかというと、魔王がいなくなった後についてのことだ。
オレは魔王をやる気はなかったし、これからの魔王国の問題は、彼らだけで解決してほしかったのだ。
オレは彼らほど魔王国に、思い入れはないからね。
その結果魔王国は、魔族共和国になった。
四年に一度各部族の代表から選挙で議長が選ばれ、その議長を中心に、各部族の代表が集まり、国のことを話し合い取り決めるのだ。
まあ彼らにはこれから、頑張ってほしいものだ。
そんなこともあってバランさんは、魔族領で政治家になるために帰国していった。
娘同然のコロンとの別れもさばさばしたもので、数回槍での戦闘を行い、それでお互い笑顔で背中を向けあった。
バトルジャンキーな魔族の別れの挨拶は、こんなものなのだろうか?
オレはあれからさらに爵位が上がり、子爵になってしまった。
子爵になると領地を賜るのだが、オレはトムおじさんの領地のギーテハケナ領の一部を任せられ、そこの領主となった。
だがこの国の常識もないオレが、国の経営などやれるはずもなく、現在は三人の従者である、アーノルド、ゴンツ、パナメラに任せきりな状態だ。
そしてオレはその常識を学ぶために、学園へ通うことになってしまったのだ。
そのため王宮の部屋を一つ借り受け、日々勉学に励んでいるというわけだ。
ちなみに王宮の宿泊費も、学費も全てオレへの報償となっているため、オレが支払う必要はないらしい。
学園は普通は十歳から入るそうなので、今年で八歳となるオレには早めの入学となる。
そして学園に通う貴族には、護衛と世話役がついて回ることになっている。
「護衛はワタシで決まりだな」
そんなわけでオレの護衛は、コロンに決まった。
もと魔王が護衛とは、待遇が良すぎて怖い気もする。
そしてオレの世話役には、驚くべき人物が抜擢された。
「お久しぶりですヨーレシア様。世話役はわたくしフロランス・ド・ギーハテケナが務めさせていただきます」
なんとオレの世話役には、あのフランちゃんが就任したのだ。
フランちゃんはすっかり背が伸びて、オレの身長を10センチは超えている感じだ。
まあなぜかあれからオレの身長は、数ミリしか伸びていないんだがな。
そんなことでフランちゃんは言葉遣いもしっかりしていて、大人びた感じになっていた。
時が経つと人は変わるものだと聞くが、変わりすぎではないだろうか?
ちょっとそれを寂しくも、感じたのだが・・・・。
伯爵家の令嬢が一貴族の世話役につくなど異例のことなのだが、これはフランちゃんが強く望んだことのようだ。
そんなフランちゃんも、今年から学園に入学するそうだ。
コロンとはちがい彼女は、入学して勉学にも励みたいそうなのだ。
だがいくらしっかりしているとはいえ、世話役が小さなフランちゃん一人に務まるはずもなく、フランちゃんの手足として、メイドのリュシーさんと、冒険者のライザさんがついてきていた。
ライザさんもリュシーさんと同じく、メイド服に着替えて、そのやる気は十分のようだ。
どちらかと言えばライザさんは、メイドというよりは護衛な気がする。
しっかりと腰には、オレが昔あげた風の銃を、携えているしね。
ピロピロ! ピロピロ!
そんな出会いの最中に、スマホが今まで聞いたこともないような、音色を奏で始めたのだ。
「なんの音かしら?」
「オレの魔道具の音のようです・・・・」
オレは徐にスマホをポケットから取り出すと、スマホの画面をまじまじと見た。
「これ・・・電話の呼び出し音だ・・・・」
なんと画面を見ると、それは今までにまるでなかった、電話の呼び出し音だったのだ。
いったい今頃このスマホに、誰が電話などかけてきたのだろうか?
まさか前世の親でもかけてきたか?
そんなことを考えながら、オレはポケットの中のスマホに、ゆっくりと手を伸ばした。
だがオレにはこの電話の主が、波乱万丈な人生を引き起こすような気がして・・・ならなかった。
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