27:魔王との再戦
ザッ! ザッ! ザッ! ザッ! ザ・・・・・
王国の領地に迫りくる魔王軍。
魔王軍の先頭には、黒く禍々しい馬に跨る、黒い全身鎧の魔王がいる。
相変わらずその目を赤く光らせ、不気味な感じだ。
そんな魔王軍を、迎え撃つ王国軍。
あの辺境伯軍も遅れてきたレーティシア姫の軍勢と合流し、さらに勢力を増し、王国軍となったのだ。
その二つの軍勢が、今ぶつかり合おうとしていた。
「ヨッシーよどうだろう・・・!? 今回も我と貴様との一対一で決着をつけぬか!?」
すると決戦間近で、魔王がそう提案してきた。
前回ずるをしておいて、どの口が言うと思うが、まあそれも無理はない。
魔王軍はつい数日まで、反乱軍の鎮圧のために戦っていたのだ。
疲弊していてもおかしくはない。
魔王軍は数は変わらないように見えて、どこかおかしい印象を受けるのだ。
もしかしたらこの大半は、幻影である可能性もある。
「どうするのヨッシー? この戦はそこまでしなくても、勝てるかもしれないわよ?」
そうまでしてこの砦を、今すぐにでも取り返したい理由はわからないが、それでもオレの答えは決まっている。
「いいでしょう! その勝負受けて立ちましょう!」
オレはこの一ヶ月、その決闘のために特訓を積んできたのだ。
その誘いを断る選択肢は、オレには無いのだ。
だが以前こいつは一騎打ちにもかかわらず、部下を使いオレの動きを妨害してきやがった。
そこで今回オレはそんな邪魔が入らないように、用意した物がある。
ドドド~ン!
「ぬ!? これは・・・?」
それがこの巨大な透明のドームだ。
このドームは透明なので、周囲からオレたちの戦闘の様子を見ることは出来るが、分厚い石で出来ているために、簡単に中に入ることはできない。
まあ魔王ならこのドームを壊せなくはないだろうが、その隙を見逃すほど、今のオレは甘くはない。
「さあ! これで遠慮なく一対一でやりあえるぞ魔王!」
「ふん・・・・なるほど。以前のような横やりを防ぐための処置というわけか・・・・。だがこれで貴様も完全に孤立したぞ!」
まあオレにしても、前回のようなパナメラの助けもないわけだが・・・・。
「今回は初めから全力でいくぞ!」
魔王は槍を地面に突き刺し、いきなり光の剣を取り出した。
だが魔力の節約を考えてか、光る刃はまだ出していない。
光の剣は多くの魔力を消費するのだ。
「黒金のゴーレム解除!!」
それに対してオレは、黒金のゴーレムを解除し、幼女の姿に戻った。
しばらく沈黙が流れ、魔王が再び口を開く。
「なんのつもりだヨッシー・・・・」
そのオレの様子に魔王は、不満そうな声で尋ねてくる。
「無駄をはぶいただけですよ。さあ遠慮なくどこからでもかかってくるといいですよ」
オレは魔王を挑発するように、おどけた感じにそう言った。
「その言葉・・・・後悔するなよ・・・・」
そこで魔王の姿はゆらぎ、掻き消える。
高速でオレに迫り、光の剣で斬り裂こうというのだろう。
だがオレの正面には、すでに見えない壁が設置してあるのだ。
「どうせ貴様のことだ! 見えぬ壁でも仕掛けているだろう!」
ありゃま・・・!
どうやらその見えない壁は、見破られてしまったようだ。
なんと魔王はオレの横に回り込んでいたのだ。
だがオレはそこで口角を上げる。
「な!? 足が何かに・・・!?」
魔王は何かにつまずき、転倒しそうになる。
今回は見えない壁の他に、オレを中心に見えない輪っかを、地面に仕掛けてみたのだ。
これがいい具合に、近寄る相手の足を、引っかけて転倒させるのだ。
オレは一瞬動きを止めた魔王に向けて、ある魔法を放った。
「これでも喰らえ!!」
バシャーン!!
「ぬ!」
魔王はそれをくらい、吹き飛んでいく。
「これは・・・・水か? だがこれがどうした? 我の鎧は特別だ! 貴様の魔法など通用しない!」
オレが魔王に放ったのは、巨大な水の弾だ。
これがある伏線となるのだ。
魔王は再び立ち上がると、オレに向けて手をかざす。
「先ほどのお返しだ! 吹き飛べ! 水弾!」
魔王は仕返しとばかりに、オレに向けて大きな水の弾を飛ばしてきたのだ。
バシャ~ン!!
まあオレには見えない壁もあるし、そんな水弾当たらないんだけどな。
だがオレは気づいた・・・・あることに・・・・。
「ぐははははは!! 見えない貴様のトラップが丸見えだぞ!!」
オレの見えない壁や、地面に仕掛けた輪っかが、水滴で丸見えとなってたのだ。
「終わりだヨッシー!! 死ねええ!!」
魔王はそのまま突撃し、輪っかを飛び越えて、赤い光の剣を抜き放った。
「黒金の腕!!」
それに対してオレは、黒金の腕で対抗する。
「馬鹿め!! その鋼鉄の腕ごと、貴様も斬り裂いてそれで終いだ!!」
魔王は光の剣を発動して、オレに向けて振り下ろしにかかる。
だがいっこうにオレにその刃が、襲い掛かる気配はなかった。
「なに!?」
「やっぱり知らなかったんだね・・・・」
それは魔王の光の剣が、いつまでも光の刃を出せず、発動しなかったからである。
オレは最終日直前にして、ある光の剣の弱点を見つけていた。
実は光の剣には柄の中に水が入ると、しばらく光の刃が出なくなるという弱点があったのだ。
それは光の剣のヘルプの説明に、ちゃんと書いてあったのだが、その見た目に見覚えがありすぎて、説明すら読まず、オレが見落としていた内容だ。
だが光の剣の弱点を探っていて、行き詰った時に、光の剣の説明を読んだら、偶然その書き込みに気づいたのだ。
ガシッ!!
「ぐお!!」
オレは魔王をしっかりと、黒金の腕で掴み込んだ。
「くっ! この!」
両腕を拘束された魔王は、その腕に掴まれ激しく暴れた。
「終わりだよ魔王・・・・」
オレは邪神封印のアミュレットを取り出すと、邪神を引き寄せその腹に押し付けた。
「き! 貴様それは!?」
「これでもくらえ邪神!! 邪神封印!!」
まそして邪神封印のアミュレットに、魔力を流して使用したのだ。
「これで帰ってくるよな・・・・コロン・・・・」
「ぎゃあああああああ・・・・・!!」
魔王は断末魔の叫び声を上げ、そのまま動かなくなった。
『貴様! よくもこの我を封印しおったな!! この中から我を開放せよ!』
その直後邪神封印のアミュレットから、そんな声がしてきた。
どうやら邪神は邪神封印のアミュレットの中に、封印されてしまったようだ。
オレは黙ってそのアミュレットを、スマホの収納にしまい込んだ。
それからしばらく沈黙が続くが、次第にざわざわと騒がしくなってくる。
「我らが勇者の勝利だ!!!」
「「わあああああああ!!!」」
その様子を見ていた誰かがそう叫び、辺境伯軍の歓声が上がる。
「我らが魔王が・・・・」
「魔王様・・・・」
それを見た魔族が、次々と膝をついて項垂れていく。
「重!!」
オレは倒れ込むコロンを、腕で抱き止め、その重い兜をはずした。
「ん? どこだここは?」
程なくしてコロンは、オレの腕の中で目を覚ました。
その間抜け面は、間違いなくあのコロンだった。
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