26:バランの指導
あれからオレは、バランさんの指導の下、訓練に励んでいる。
まずオレに足りないのは、体力ということで、早朝のジョギングから始まった。
早朝のジョギングのコースは、オレが決めていいということだったので、砦の周辺にある森の獣道を選んだ。
この道であれば、冒険者としての狩りも出来て一石二鳥だ。
それに食事を通販ショップだけに頼りたくないので、魔物の肉はぜひ確保しておきたい。
食事が通販ショップだけなのは、面白みも何もないからね。
ドド~ン!!
そんなわけで今日もジョギング中に、突撃を仕掛けてきた、ケリュネイアの角を黒金の腕で掴んで、投げ飛ばして倒す。
このケリュネイアは鹿型の魔物で、魔法まで使ってくるやっかいな相手だ。
「はあはあ・・・・。今日も鹿肉をゲットできましたよ」
「実戦と体力づくりを兼ねた訓練ですか・・・・? 確かに体力はつくでしょうが、壮絶すぎて言葉もありません・・・」
バランさんは呆れているが、オレにはこれくらいが丁度いい。
ジョギングにはバランさんは勿論、オレの三人の従者もついてくる。
皆訓練を積んだ軍人なので、いつもオレの走りにも涼しい顔でついてくる。
今はなぜだか遠い目をしているがね。
ジョギングが終わると朝食だ。
朝夕の食事は基本支給された食材での自炊になる。
これは部隊ごとの食事係が担当するようだ。
だがオレたちの場合は、プロスペール辺境伯の料理人が担当する。
毎朝狩ったオレの獲物も、この料理人に提供しているのだ。
そしてオレたちはいつもプロスペール辺境伯と、レーティシア姫の食事に同席することになっている。
そこで色々と情報交換もかねて食事をするのだが、参謀のおじさんや、プロスペール辺境伯の息子たち、レーティシア姫のお付きの人やら、トムおじさん、その他にも有力な人物が加わるので、毎度賑やかな会食となる。
「ヨッシー。魔王との再戦の特訓は順調かしら?」
「はい。後は例のアイテムが上手く扱えれば完璧です・・・・」
例のアイテムとは邪神封印のアミュレットのことである。
このアミュレットは魔力を流さないと作動しないのだが、オレは魔力なんてあまり扱ったことがないので、この魔力の扱いに苦労している。
この魔力の訓練は朝食後に行うのだ。
その過程で魔法についても教わった。
「ヨッシー・・・・。貴方はすでに魔法を使っていますぞ」
「ええ? オレはまだ魔力もろくに扱えないんですよ?」
魔法というのは何かを媒介にして、超常現象を引き起こす技術だ。
その媒介にする物は、魔族であれば角や翼などの体の特殊な部位となる。
だが特殊な部位の無い人間は、杖や、媒介となる武器やアイテムを使うのだ。
どうやらオレが媒介にしているのは、この不思議なスマホのようだ。
スマホを媒介にして火や水を出しているオレは、すでに魔法を使っていることになるようだ。
その火や水とは、もちろんパーティクル化した火や水を、スマホの命令で出しているだけなのだが、魔法とはそういうものらしい。
「オレ的にはこれ、魔道具扱いなんですけど・・・・」
「いや。それは魔法の媒介となる物にまちがいありませぬ。私の魔眼がそう言っているのです」
そんなことを言うバランさんは、特に厨二病とか言うわけではない。
バランさんには魔力の流れや形が見えるようなのだ。
魔人にはそういう人がよくいるらしい。
あのコロンも魔眼が使えるようだ。
そう言えば会ってすぐに、コロンはスマホの性質を見抜いていたが、それも魔眼の力だったのだろう。
「貴女は指の動きや言葉を引き金に、魔法を発動しているようですが、おそらくイメージだけでも魔法の発動は可能ですぞ」
オレはパーティクル発動の条件に、よく指の印や言葉を使うが、イメージだけの発動という発想にはいたらなかった。
「あ・・・できた・・・」
だがスマホでアプリで指定してある命令文を書き換えたら、なんと本当にイメージだけでパーティクルが発動できてしまった。
つまりオレには無詠唱で、魔法をガンガン放てることになる。
スマホのアプリを使えば、パーティクルの組み合わせ次第で、広範囲な大魔法なども作れるので、そんな魔法すら無詠唱でうちまくりなのだ。
どうやらオレは魔法チート少女だったようだ。
ちなみにスマホのポイントについても尋ねてみた。
「それはおそらくスマホとやらに蓄積された、貴女の魔力ですよ」
するとそんな答えが返ってきた。
どうやら魔法の媒介となる物には、魔力を蓄えておけるようだ。
だが魔法の媒介に蓄積できる魔力量は、せいぜい魔術師二人分くらいの魔力が限界のようだ。
このスマホには以前五億ものポイントが入っていたのだが、そうれはどういう規模になるのだろうか?
スマホの電池残量の1%は200ポイントに変換できる。
つまり20000ポイントが、このスマホの100%の電池残量に等しい数値ということになる。
結果五億ポイントとは、このスマホの100%の一千万倍の魔力ということになる。
つまりこのスマホは、一千万もの魔力を蓄積しているのだ。
「ははは!! ご冗談を!? そんな規模の魔力聞いたこともありませぬぞ!!」
それをバランさんに話したら、笑われてしまった。
ならオレの魔力が相当低くて、このスマホのポイントを五億にしても丁度いいくらいとか?
例えば魔力が一万分の一とかなら、魔力十万とかだし・・・・。
「低いなんてとんでもございません! 貴女の魔力は一般の魔人の100倍はあるとお考え下さい」
一般的な魔人の魔力は、人の平均を大きく超えると聞いている。
ならオレの魔力は相当高いということになる。
やはりこのスマホにはとんでもない量の魔力が、蓄積可能だと判断してもいいだろう。
まあこの事実は墓穴にでも、もっていった方がよさそうだ。
もしばれればどんなことに巻き込まれるかわからないからね。
その後は魔王との戦闘を視野に入れた、実戦訓練を行うのだ。
これはバランさんや皆のアドバイスを受けながら、模擬戦を繰り返していく内容だ。
模擬戦の相手には魔王と似たような動きが可能な、バランさんとパナメラが選ばれた。
二人とも戦闘経験が豊富で、コロンに負けないほどの素早さだったので、毎日その動きには翻弄されたものだ。
この訓練での最大の課題は、やはりあの光の剣に、どう対抗するかということになった。
あの剣は黒金のゴーレムの装甲すら、斬り裂いてしまうのだ。
そして時は瞬く間に過ぎ去っていき、一ヶ月後、再び魔王軍に動きがあった。
魔王軍が再びルエパラ王国への侵攻を、開始したのだ。
お読みくださりありがとうございます。
面白い!
また読みたい!
と感じた方はぜひ・・・・
《ブックマーク》 と
評価★★★★★を
お願いします。
いつも誤字報告を下さる方、ありがとうございます。
感想、レビューもお待ちしております。




