24:魔族の訪問者
オレが牢屋に案内されて、オレを訪ねてきたという、魔族のところへ向かうと。
そこには座禅を組み瞑想する、羊角を生やした、天然パーマのおやじがいた。
種族的に彼は、羊角族の魔人といったところだろう。
それはまるで北斗なんちゃらの使い手の、白い人かのごとし出で立ちだ。
「貴方がオレに会いたいと言う魔族の方ですか?」
「いかにも。私はバラン・メルル・ッヨダ。コロナ姫様の世話役であった者だ」
オレが話しかけると、バランと名乗る魔人は、ギラリと目を開けてそう答えた。
コロナ姫の世話役? コロナ姫とはコロンのことだろう。
コロンに一般的な教養や、戦闘技術を教えた人物だろうか?
「貴女がヨッシーで間違いないか?」
「はい。今はヨーレシア・ド・ホワイトナイツと名乗っていますがね・・・・」
「その幼さでホワイトナイツですか・・・・なるほど・・・・」
何がなるほどなのかわからないが、彼がコロンの関係者だということはわかった。
「そのバランさんがわざわざ危険を冒してまで、オレになんの用ですか?」
彼は敵対する人族の占領する砦に、オレに会うために、危険を冒してまでやってきたのだ。
捕らえられるのは当然として、下手をすれば殺される可能性すらあったのだ。
そうまでしてオレに、何を伝えたかったと言うのだろうか?
「コロナ姫様は幼い時分は、私のことをおやじ、おやじとよんで慕う、それはもう可愛い少女でござった」
なんだろうか? 惚気だろうか?
「惚気なら他でどうぞ・・・では・・・」
「お待ちくだされ!! 重要な話があるのです!!」
バランさんはオレが去ろうとすると引き止め、そんなことを言ってきた。
重要な話? いったいなんだというのだろうか?
「コロナ姫様は邪神に精神を乗っ取られておいでだ!!」
コロンが邪神に? そう言えばスマホのメールで進められた、邪神封印のアミュレットを購入した覚えがあるな・・・・。
このアミュレットと何か関係がある内容だろうか?
それにコロンのあの変わりように、オレはしっくりこない部分があったのだ。
「コロンが邪神に? 詳しく話を聞かせてください」
オレはバランさんの話を、聞いてみることにした。
「実はコロナ姫様は魔王に就任された直後に、ガラリと人格が変わられたのです」
確かにあのコロンの人格の変わりようは、異常だったように思える。
それが邪神に精神を乗っ取られたというなら、色々とあのコロンの変わりようにもしっくりとくる。
だがそれならば、何時、どのように邪神が、コロンの精神を乗っ取ったというのだろうか?
「妙に思った私は、禁を犯し、魔王就任に関する書物を、王族の禁書庫に侵入し盗み見たのです。すると私はそこで衝撃の事実を目の当たりにしたのです・・・・」
なんと大胆な犯行を・・・・。
その行為が明るみに出れば、バランさんは魔王国で、犯罪者になってしまうかもしれない。
そこまでの覚悟でバランさんは、その禁書庫に侵入したのだろう。
「そこには邪神は代々魔王の精神に寄生してきた、謎の存在だと書かれていたのです。
邪神は自らを倒した相手の精神に寄生し、体を入れ替えながら、今日まで生きながらえてきたのです」
確かにそれなら、魔王であった兄を倒したコロンが、邪神に寄生されていてもおかしくはない。
だがその話には矛盾がある。
それは過去に邪神を倒したという、勇者の存在だ。
「邪神は勇者に倒されたと聞いたことがあります。ではその勇者も邪神に・・・?」
勇者が邪神を倒したという、言い伝えが残っている。
勇者は今のルエパラ王族の先祖だ。ならばその王族にも邪神が寄生してもおかしくはない。
だがそんな話は今までに、聞いたこともない。
「いえ。勇者は邪神を封印したと魔王国では言い伝えられています。それが何処かは定かではありませんが、そこから魔族の誰かに取り付いたと思われます」
魔王国の言い伝えと、ルエパラ王国での言い伝えには、食い違いがあるようだ。
まあ勇者が邪神を封印したという内容が、間違って倒したという内容に入れ替わっていても何ら不思議はない。
歴史とはその時の有力者の都合で、捻じ曲げられたりするものだ。
「で? オレにその邪神を封印してくれと?」
その話の流れから、バランさんがオレに頼むなら、邪神の封印であろう。
「そうお頼みしたいのはやまやまですが・・・・邪神の封印にはあるアイテムが必要らしいのです。そのアイテムの形はわかっているのですが、何処を探しても見つからず、もしかしたらそれは邪神を封印した勇者の建国した、ルエパラ王国にあるかもと思ったのですが・・・・」
なるほど。それは王宮の国庫辺りになら、あるかもしれないな。
まあオレの手元にもあるが・・・・。
「その邪神を封印するアイテムって・・・・これですよね?」
オレは邪神封印のアミュレットを、バランさんの目の前に掲げて見せた。
「な、なんと・・・!」
バランさんは邪神封印のアミュレットを、まじまじと見た。
「む~・・・。少し形は違いますが・・・・その文様は間違いなく邪神を封じるものです」
少し形が違う? もしかしたらこのアミュレットは、勇者の使った物とは違うのかもしれない。
だが邪神を封じるのであれば、これは間違いなく今のオレに必要な物だろう。
「情報提供ありがとうございます。お礼に貴方の釈放をプロスペール辺境伯に進言いたしましょう。では失礼いたします・・・・」
「お待ちくだされ!!」
オレが去ろうとすると、バランさんはオレを引き止めてきた。
バランさんはまだ話足りないことでもあったのだろうか?
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