23:後味の悪い勝利
オレは魔王のあの光の剣に斬り裂かれて死ぬのか・・・・?
だが待てどいっこうに魔王の光の剣が、オレに襲い掛かることはなかった。
「パナメラ!?」
見るとパナメラが魔王に横からタックルを浴びせ、その光の剣による攻撃を逸らしていたのだ。
どうやらパナメラは、巨大な魔人の不審な動きに気づき、前もって行動していたようだ。
「この痴れ者が!!」
ダンッ!!
「ぎゃあ!!」
魔王は怒りのあまりに、パナメラを蹴り飛ばす。
その威力は強烈で、パナメラは吹き飛び転がって倒れた。
オレはそのパナメラの様子を、呆然と見ていた。
「この!!」
「ぶふぉお!!」
オレの動きを阻害していた、巨大な魔人は後方から駆け付けた、レーティシア姫の攻撃を受けて一撃で倒れたようだ。
「「おおおおお!!」」
そして辺境伯軍は、次々と後ろから押し寄せてくる。
「ちっ! 魔力切れだ・・・・」
そう言うと魔王は後方に大きく、飛びのいていく。
「仕切り直しだ!! 次は必ず貴様を仕留めてやるぞヨッシー!! ふはははははは!!」
そう言うと魔王は高笑いを上げながら、去って行ってしまった。
運よく魔王は魔力切れとなり、光の剣が使えなくなったようだ。
そのために分が悪いと感じて、去っていったのだろう。
「姫!! よくご無事で!!」
そんな中パナメラを背負い、アーノルドがやってくる。
ゴンツはその後方で、敵からアーノルドを守りながら戦っているようだ。
「パナメラは無事ですか?」
「大丈夫です。強く胸を打ちつけたようですが、後で治療すれば大事はないでしょう」
「そうか・・・良かった・・・・」
それを聞いてオレは安心する。
そして魔王に対して、徐々に怒りが込み上げてくるのを感じた。
戦争だから仕方ない。仲間が傷つくのは・・・・。
だが仲間が傷つくのは、やはり我慢ならない。
なによりあの魔王のやり方が許せない!
ピピピ! ピピピ!
そんなことを考えていると、そのタイミングでスマホの着信音が響いた。
いったいこんな時に、なんだというのだろうか?
『邪神封印のアミュレットが安い! 今なら10000ポイントで買える!』
そのメールを見るとそんな内容が、書かれていた。
これは本当に安いのか? 高いのか? いまいち判断に困る内容だ。
第一邪神封印のアミュレットなんて、謎のアイテムに、どんな需要があるというのか?
買うとしたら退魔師くらいのものではないだろうか?
だいたいここは戦場なのだ。こんなアイテムが、必要だとは思えない。
だがこのスマホが意味もなく、こんな内容のメールを、送信してくるとは思えない。
聖剣アルゲースの例もあるので、無下にはできない内容だ。
「とりあえず購入・・・・」
オレはとりあえず神封印のアミュレットを、購入しておくことにした。
「姫!!」
アーノルドの声に、はっと我に返る。
そう言えばオレのいるのは戦場だった。
「あのゴーレムは手負いだ!! 今のうちに止めを・・・・!!」
見ると大勢の魔族が、こちらに向けて迫って来ていた。
それはオークや魔人の混成群だった。
「ブオオオオオオ!!」
オレはとりあえず黒金のゴーレムに咆哮させて、魔族を威圧しておく。
そして怯んだ魔族の軍勢に走り寄り、残った左腕を振り回して追い回す。
「ぶひい!! 化け物だ!!」
「撤退だべ!!」
すると魔族の軍勢は逃走を図り、あちこちに散っていった。
その後、魔王のいなくなった魔王軍は、どうやら撤退を余儀なくされたようだ。
オレが暴れる先から、次々と逃走していく。
こうしてオレたちは、後味の悪い勝利を掴み取ったのだった。
「ぶは!!」
気づくとどこかのベッドの上にいた。
周囲を見渡す限り、そこが砦の医務室であることがわかった。
「良い暴れっぷりであったぞヨッシー」
「プロスペール辺境伯・・・・」
見るとそこには、プロスペール辺境伯がいた。
「お前は戦闘終了直後に、魔力枯渇に陥り倒れたのだ」
オレはさんざん暴れた結果、魔力枯渇に陥ったのだろう。
どうやら黒金のゴーレムも、オレが魔力枯渇に陥ったと同時に解除されたようだ。
黒金のゴーレムは寝ていてもスマホの充電残量があれば、起動したままになるが、魔力枯渇に陥ると、スマホの収納の中に戻ってしまうのだ。
「お目覚めになられたのですね姫!!」
どうやらパナメラはオレより先に、目覚めていたようだ。
「パナメラの傷はもう大丈夫なんですか?」
「はい! レーティシア姫の回復魔法でこのとおり!」
パナメラは力こぶをつくってオレに見せる。
王族のレーティシア姫が、直々に回復魔法を?
王族は家族か友人でなければ、そうはしないはずだ。
パナメラはいったい、レーティシア姫とどのような関係なのだろう?
「ではそのようにいたします・・・・」
廊下の方を見ると、アーノルドとゴンツが何やら兵士と会話しているようだった。
「お気づきになられたのですね姫」
「どうしたんですか? 何やら浮かない顔ですよ」
アーノルドの顔を見ると、何やら深刻そうな顔をしていた。
「実は姫が寝ておられる間に、姫に会わせろと言う者が来ておりまして・・・・」
オレに会わせろ? こんな場所にいったい誰だろうか?
「それが魔族なのです・・・・」
人間に敵対する魔族がいったい、オレに何の用事なのだろうか?
「その魔族はどこに?」
「ただいま牢に入れてあります。お会いになりますか?」
アーノルドのこの表情から、オレとその魔族を、会わせたくないのを感じる。
きっとアーノルドはオレに対する、暗殺などを危惧しているのだろう。
「気になりますから、会うだけあってみます」
「姫ならそう言うと思いましたよ・・・・」
オレはその魔族に会うことにした。
なぜならその魔族が何か重要な情報を、持っている可能性もあるからだ。
他の者に面会を任せても良いが、極力オレはそういった情報は、直接自分の耳で聞きくことにしているのだ。
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