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Love prove

作者: 結雨羅

この世は私が生きるには厳しすぎる。









だから私は今日旅立つ。









この世ではない別の世界へ。








妻と娘は先に死んだ。正確には殺された。






私たちの仲は冷えきって別居状態だった。






娘のサヤは生まれたばかりの赤子であった。




私と妻はある日話し合った。このままではサヤが可哀想だ。




私たちがこんなことでどうする。サヤは私たちの愛のもとに生まれた子。




愛の証なのだ。




再び歩みよろうと妻とお互い決意した。






しかし現実はそう甘くなかった。





その数日後・・・










サヤを連れて商店街を歩いていた妻は、暴れている数人の不良に遭遇した。






不良は店という店を破壊し、食べ物を奪い、一口食べては投げ捨てていた。





妻は不良たちから目をそらし、通り過ぎようとした。






「やめろ!!!」







1人の中学生くらいの少年が不良の前に立ち塞がった。








しかし多勢に無勢、少年は不良たちに袋叩きにあった。




助けられた店の人は見ないフリ。通る人々も無視。









妻は気付いたら声を張り上げていた。











少年は身体中から流血して倒れた。










そして妻は殺された。











サヤの死体は発見されなかった。













私には何も残っていない。






妻と娘の死。私は全てを奪った者に復讐を誓い、不良たちの正体を暴き、裁判にもちこんだ。






数年後・・・








結果は敗訴。






証拠不十分だ。






裁判が終わり、私は不良たちの力によって仕事を追われてしまったのだ。







俺は不良たちを問いただした。サヤはどうしたかと。








サヤは人身売買に出されたらしい。



いい金になったと言われた。






今頃は内臓が誰かに売られているだろうと・・・












生活もできず自己破産。











もう限界なんだよ。












私は今歩道橋の上から車の流れを見ている。






数分後には私はこの流れに乗って別の世界に行くんだ。









「おじさん・・・何してるんですか?」






私は声の方を向いた。





そこにはセミロングの女子高生がいた。









「まさか・・・自殺しちゃうんですか?」









「私のことは・・・ほっといてくれないか?」






「なにか・・・辛いことでもあったんですか?」









「なにかなんてレベルじゃないさ。君は、私のようなクズ人間とは関わらない方がいいよ。」







女子高生はクスクス笑った。






「今から死のうとしている人が他の人の心配なんて、ちょっとおかしいです。」








「たしかにな・・・それで、私になんの用かな?」









「本当に、死んじゃうつもりなんですか?」









「私にはもう・・・何も残っていないんだ。金も仕事も妻も娘も無くなってしまった。」









「・・・アタシは、おじさんに生きてほしい。」










「なんでだい?君は私と関係ないだろう。」









「そうですね。でも・・・アタシは今目の前にいるおじさんを助けたいんです。気まぐれ・・・ですけど。」










「気まぐれ・・・か。迷惑だとは思わないか?」










「迷惑・・・かもしれないです。でも、生きていればいつか絶対次の幸せがくると思うんです。」












「私にはもう・・・待つ力は残っていないよ。」












「おじさん・・・」












「君は、もう行きなさい。私はそろそろ旅立つ。」










「おじさん・・・『明日』って字は、『明るい日』って書くのよ?明日はきっと幸せな日になるって思っていれば、いつか幸せはくると思うの。」










「明日・・・」












「アタシはおじさんほど長く生きていないから生きることの辛さがわからないの。でもね、わからないからこそ、おじさんを助けてあげたいの。」











「わからないからこそ・・・か。」














女子高生は潤んだ瞳で私を見つめる。














私は歩きだした。






「おじさん?」












「私にはまだ・・・やるべきことがある。」











女子高生は満面の笑みを浮かべた。










「きっと・・・明るい日になるよ・・・」










女子高生は私と反対方面に歩きだした。








女子高生は歩道橋の下に友達を見つけると、小走りで近づいた。











「あんたあの人知り合い?」





「ううん、違うよ。知らない人。」









「なんの話してたの?」









「あの人、死のうとしてたの。だから、きっと明日は明るい日になるよって言っただけ。」









「まったく・・・知らない人なんだからほっとけばいいのに・・・」






そう言って友達は歩きだした。






女子高生は振り返り、歩道橋を見た。







おじさんの姿はもうなくなっていた。










女子高生はクスリと笑った。












「おーーい!!サヤー!!置いてくよー!!」









「ちょっと待ってよ〜!!!」









女子高生は友達のもとに走っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 明日で、明るい日…ね(^O^) 覚えておきます。
2009/11/16 00:13 退会済み
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