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欲望の聖典  作者: 枝豆た
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第五節~第六節

楽園とは大きな代償の元成り立っている、その代償を知らず過ごすのは大いなる罪である、罪には罰が必要である、、、世界は終焉を迎えんとする

第五節  黒星


 世界は平和であった、誰も何も苦しむことはない、苦痛など存在しない、なぜならここは楽園であるため苦痛は存在できないのだ、全ての者が何不自由なく暮らし、全ての者が抵抗なく与え、与えられる、それこそが幸福、しかし彼らは知らなかった、楽園であるためには大いなる代償が必要であることを、、、


 世界は今日もなに不自由なく廻っていた、お互いに与えあい、与えられあい、皆が幸せに暮らしていた、しかしその時は突然に訪れた、楽園のはるか遠くに一つ、漆黒の星が現れたのだ、その星はじりじりと楽園へと近づいてくる、、、彼らはそれを歓迎した、彼らはその星にとても興味を示した、この星は私たちにいったい何を与えてくれるのだろうか、私たちはこの星に何が与えられるのだろうか、と、、、星は楽園へと近づく、それにつれ彼らはその星を迎え入れようと歓迎の準備を始める、植物たちはその芳醇な果実を実らせ、動物たちはその新鮮な血肉を差し出し、人々は歓迎の舞や舞台、音楽や料理など娯楽を用意した、、、

 それから幾日かたち、その星はこの楽園へと接触したのだ、彼らは歓声を上げ、笑顔でそれを迎え入れた、各々歓迎を言葉を投げかけ、盃を交わす、幸せな空間だった、皆が楽しく笑い、この新たな住人に期待を膨らませる、その間、星はじりじりとその漆黒を広げ、楽園を飲み込んでいく、その宴は何日もの間つづいた、歌や舞、舌をうならすほど美味な料理、酒、あらゆるものがこの世の楽しさを物語る、宴も終わりを迎えようとするとき、彼らはその漆黒に問うた、「どうでしたか?我々の歓迎は、大変楽しかったでしょう?さあ早くそんな漆黒の中にいないで出てきてください!主役から何か一言無いと宴が終われないじゃないですか」と、しかし星は一言も発しはしない、ただただその漆黒を広げている、、、しびれを切らした住人の一人が漆黒の中から無理やり引き出そうとその漆黒へと近づく、そして、その住人がその漆黒へと触れたとたん、、、


      住人は跡形もなく、 消滅 してしまったのだ、、、


第六節  失楽園


 住人の一人が跡形もなく消え去ってしまった、そのありえない現実にいままでの楽しい雰囲気は一変し、あたりは凍り付いてしまった、誰も何もしない、いや、できないのだ、目の前で、この楽園ではあり得るはずのないことが起きているのだ、脳が追いつくはずもない、みなが硬直する中、漆黒は広がる、次々と住人が飲み込まれていく、その様は先ほどの出来事が夢や幻覚、気のせいなどではないことを証明した、その漆黒に触れると消滅する、その事実は彼らに今までにない一つの感情を作り上げた、そう、恐怖だ、消滅への恐怖、漆黒への恐怖、未来への恐怖、今までの楽園には存在しない、不安という要素がそれを作り上げる、その感情は彼らに一つの明確な目標を示す、逃げろと、、、そこからこの世は楽園とは程遠い、地獄へと化した、植物たちは自らに待ち受ける運命へと絶望し、あの芳醇な果実はおろか、生きる気力すら枯らし、ただただ朽ち果てる、動物たちはその血肉を人々へと与えることは無くなった、もう彼らからすれば人々が餓死しようが関係ないのだ、消滅とゆう今までにない恐怖が彼らに生への固着を生み出し、与えることの喜びを失ったのだ、人々は逃げ惑う、その漆黒から、ただただ恐怖とゆう感情にとらわれながら、彼らがこれから先誰かに与えるとゆう行為を行うことはないだろう、彼らにその余裕などないからだ、彼らはひたすらに生きることを優先としていく、おなかがすけば動物を狩り、植物をむさぼる、彼らの意思など関係ない、ただただ奪う、ひたすらに奪う、そう、彼らはもはや人ではない、漆黒と共に君臨した恐怖とゆう伝染病は彼らを化け物へと変えてしまったのだ。


 ここは楽園である、恐怖の渦巻く楽園である、化け物が闊歩し、全ての者が生へと固着する、弱いものは奪われ、強いものが奪う、悲鳴を楽しめ、涙を飲み干せ、侮蔑は娯楽だ。

 世界は壊れた、そのたった一つの感情で、そのったった一つの存在で、、、楽園とは真水である、たった一つ、何かが加わるだけで、それはそれでなく、もっと別の何かになってしまうのだ、それだけ世界はもろかったのだ、だが心配することはない、もう救済は目の前までいらしている、苦しいことも悲しいことも痛いことも辛いことも憎ましいことも何もかもをお救いなされる漆黒の星、、、それはただただ世界を飲み込む、その落ちぶれた楽園、、、


            失楽園を救済するために。

世界は滅びへの一途をたどり始めた、もうそれを止めることはできない、与え、与えられる、そのルールを彼らは破ってしまったのだ、、、

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