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「──こんなに早く……! ……さすがは、破炎の魔女と言わざるを得んな」

「当然ね」


 相変わらず、領主と対等に渡り合う彼女は、美しい。

 気高く、誇り高く。

 それでいて、内に秘める正義感と優しさは私にしか知り得ないのだと。

 どこか、優越感にも似た感情を覚える。


「ぬう。……本来ならば、もてなしをしたい所ではあるが……、その……ええと」

「必要ない」

「! そうかそうか! 必要ないならば仕方ない、これが今回分じゃ。はよう行くがよい」

「っ、……この」

「ヴィール」


 世話になっておいて遠回しに「早く出て行け」と言うような奴、切り捨てられても文句は言えないのでは?

 ……などと考えていると、つい口が出てしまったらしい。

 危ない。

 せっかく彼女たちが築き上げたものを壊してしまうところだった。


 やんわりとメイラ様に制止される。


「言われなくとも、ここに用はない。行くわ」

「あ、あぁ。まぁ、なんじゃ……。体には気を付けて──」

「ふふ」


 妖艶に笑みひとつ返せば、領主はおろか、周りの護衛達も固まる。

 こんな場所、呼ばれなければ来ないと。

 自分を容易く呼べると思うなと。

 そう、思わせるような余裕のある態度。

 まさに、世間でいう『魔女』だ。


 中にはその笑みに見惚れる者もいて、領主なんかより余程斬ってしまいたい衝動に駆られる。

 危ない。

 彼女のこととなると、どうにも抑えられない。




「ふふふ、良く我慢したわね」

「……貴女の想いを、無駄にしたくはありませんから」

「……へぇ?」

「なんです?」

「いいえ。なんでも」


 側にいれば、嫌でも分かる。

 貴女が自ら魔法使い達の先頭に立ち、人々を守るために自らの尊厳を犠牲にしているのだと。

 そして、私の『彼女を誰よりも理解している』という傲慢な思いで彼らを斬ってしまえば、それを台無しにしてしまう。


「私は、嘘は言いませんよ」

「……知っているわ」

「私は、お傍を離れませんよ」

「……」


 貴女は、勇気と希望を司る炎の大魔女として。

 貴女を孤独に誘うものを、すべて受け入れる。


 それでも。

 それでも、自分から見れば守る価値などない彼らを、貴女が守るというのであれば──。


「──私だけは、貴女と共に」


 私達は、契約に基づく以上、恋人のような関係にはなれない。

 『愛』という不確かなものではなく、命を預けることで契約を履行しているからだ。


 ……けれど、彼女の想いに応えるのに、それが関係あるだろうか?


 例えどんな立場であっても、主を、……孤独に震える彼女を決して一人にはしない。

 それが、……それが私にとっての魔女の騎士。


 許されるなら……最期のその時まで、共に在りたい。

 それが、私にとっての希望。

 貴女が、私の希望そのものなのです。


 例え、貴女への想いを口に出来なくても。

 行動で想いに応えることは、出来るのだ。



ご覧いただきありがとうございます。

気に入っていただけましたら、ブクマ・評価していただけると嬉しいです。


同シリーズ含め既存作品もお楽しみいただけましたら幸いです。

これからもマイペースに更新して参ります。


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