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Al02 前を向いて③

 ――いつだったか、養父様は言いました。魔法など極めたところで、結局はより多く、より効率的に破壊と殺戮を行えるようになるだけだと。

 ――確かに、そうかもしれません。魔法は応用の幅が広く、少し学んだだけでできることが一気に増えます。そして、それを最も有効的に活用できるのは、間違いなくそういった血に塗れる行為だと言えるでしょう。

 ――でも。だからこそ、それだけで終わらせたくないと考えています。

 ――誰かを殺す術を身に付けたなら、誰かを支える術を身に付けましょう。

 ――何かを壊す術を身に付けたなら、何かを生み出す術を身に付けましょう。

 ――目を逸らさず、前を向いて。

 ――受け入れて、歩いていきましょう。






「――私も、誰かを教え導く人になりたいと考えたからです」


 木造の椅子に腰掛けた少女が話す。


「私は、先の戦争で多くの命を奪いました。命令に従うだけで、何も考えることなく……誰かの大切な人を、この手で殺めました」


 可愛らしいという言葉よりも、綺麗という言葉が似合う。


「それが許されざることだとは理解しています。どのような経緯があれども、私が幾多の命を踏み躙り、そして奪ったことには変わりありません」


 後ろでまとめられた髪の色は銀色で、一房だけ三つ編みにして耳の上から垂らしている。


「それでいて誰かを教え導くなど、随分と烏滸がましく、調子の良いことを言っているというのも理解しています」


 前髪は橙と桃の中間色の宝石が取り付けられた髪飾りで留められている。


「……戦時中に、ある人に出会いました。彼は人形でしかなかった私に、心というものを教えてくれました」


 瞳の色は血を思わせるような鮮やかな深紅。


「そして――亡くしました。彼も、私を育ててくれた親も。亡くして、大切な人を失う痛みを知りました。何もかもが手遅れだったというのに」


 表情にはあまり変化がないが、声は少しだけ震えている。


「それでも、前を向いて生きなければいけない。二人がそう望んでいたというのもありますが――それ以上に、私自身が、そうでありたいと考えています」


 彼女を形容するのなら、綺麗な人形という言葉が適切だろう。


「大切なものを失う前に、それがそうだと気づかせてあげられる人になりたい」


 どこか脆そうで、しかし芯の通った、力強い綺麗な人形。


「大切なものを奪う前に、そのことの意味を教えてあげられる人になりたい」


 彼女の名は、アルマ・リヴォルタ。


「私が頂いたものに恥じることなく……そして、これからを生きる人に、頂いたものを託したい。そう願って、今この場にいます」


 人形でしかなかった過去を持ち――大切な人に魂を吹き込まれて心を得た、一人の少女である。

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