風呂
私はヅーを洗い場に下ろし、シャワーを手に持ち蛇口をひねる。
冷たい温度から暖かくなるまで少し時間がかかった。
冷たいシャワーをヅーにぶっかけると彼女は信じられないような目で私を見た。
切断された太ももで器用にバランスを取って座るヅーの頭からシャワーのお湯をかける。
ヅーが顔を上げ、口を開けてシャワーのお湯を飲もうとしてくる。
私はそれを無視して、彼女の全身を濡らしていく。ヅーが二の腕までしか無い腕を上げて脇を晒す。
スポンジにボディーソープを垂らして泡立てる。首筋から、脇の間から胸まで。お腹とお尻の間まで丹念に洗う。
全身が泡まみれになったところで、シャンプーを手に取り、ヅーの頭を洗った。
髪が短いので洗いやすい。洗われながらヅーは鼻歌を歌う。
もう一度シャワーの温度を調整してヅーの泡を洗い流す。ヅーがまた顔を上げてお湯を飲もうとするが鼻からお湯が変なところに入ったようでヘゴヘゴとむせた。
二人で入っても余裕の広さの湯船には程よい温度のお湯が溜まっていた。
私はヅーを抱きかかえ浴槽の中に放り込んだ。ドボンと体重なりの水柱が立ち、お湯があふれる。
ヅーはお腹を膨らませて湯船に浮いた。
私も手早く体を洗い、浴槽に入る。ぷかぷか浮かぶヅーを抱き寄せ、そのまま二人で100秒数える。
私はヅーの腕の断面を手で撫でた。ヅーは私の首筋をガジガジと甘噛してきた。
私はヅーを抱きしめる。温かい、彼女の温度を感じる。生き物がみんな持っている、生きている温度を。