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起床_002

 ギンッ――また激しい金属音がする。

 これは人が、何かが起こす音に違いない。

 俺は内心この世界にいるのは俺だけだと思っていた。今の俺は誰かに会いたくてたまらない。

 だから壁を登るのだ。

 俺がドロドロが積もった建物上に立つと音の正体がわかった。

 100mほど先、建物と建物の間からひょっこりと上半身をはみ出させた二体が戦っている。

 俺はもっと間近でそれを見たくなって、尻を上に突き出しひと伸びし、建物から建物へ飛び移った。


 巨大なモリを持った巨人とくじらの顔を持ったトライポッドが戦っている。

 モリを持った巨人は捻じくれてささくれだった老木のような表面をしており四肢があるからなんとか人型に見える。

 くじらのトライポッドはそれとは真逆で精巧なエッジのついた金属のボディに生臭そうなくじらの顔がついている。


 戦い、戦場だ。

 巨人がトライポッドに向けてモリを突き出す、トライポッドの腕は金属の輝きを持っている、突き出した腕にモリは弾かれる。

 弾かれた槍を巨人が一気に巻き上げ――もう一突き、トライポッドの頭に向けて。

 トライポッドが口を開く、ヒゲクジラのような立派なひげが震える。


 巨人が身を捻って跳躍、頭上に回避、射線上の建物に亀裂が走る。

 バウ――とした音。

 巨人が回避したそれは強烈な、指向性を持った音撃波だ!

 跳躍した巨人は着地に失敗し、盛大な音を立てて豆腐の建物に突っ込んで動かなくなる。


 巨人を見失ったトライポッドがあたりを見回す。

 俺は建物上で身動きが取れなかった。

 僕の鼓膜はまだ信じられないような音を受けて沈黙している。

 僕はどうしたらいいのか、判断つかないが沈黙した巨人に助けを求めたらいいのか、このまま動かないでやり過ごすか、まだ助かる方に賭けるしかない。


 俺のわがままな四肢は動かなかった。勝手に収縮して顎までドロドロの絨毯につけていた。

 巨人の腕がかすかに動いた。だが間に合わない。

 トライポッドが口を開ける。

 巨人はモリを握り直して上体を起こす。

 トライポッドは俺の方を向いて俺を殺そうとヒゲを震わせてそして――、


「危ない!」


 俺は誰かに抱きかかえられて、宙を舞った――。

 音撃波が俺のいたところを掠める。残響で耳が何も聞こえない。

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