第1話 「再会と幕開け 前編」
初めまして。羽川明峰といいます。小説を書くのは初めてでどんな評価がされるのか、そもそも読んでくれる人はいるのか、期待と不安でお腹がいっぱいです。まだまだ未熟者ですが、頑張っていきたいと思っておりますので何卒宜しくお願いいたします。そして、そんな未熟者の作品でも読んでくださる方は下へスクロールを・・・。
西暦2301年5月3日、如月唯人はこれから始まる学園生活について考えながら寮から校舎に続く道を歩いていた。この2年間自分がやってきたことは無駄にならないだろうか。友人は作れるだろうか。あの人に教わったことを活かせるだろうか。
(・・・考えても仕方のないことだな)
そうして彼は少しずつ見えてきた学園の校舎を見つめる。
唯人の編入先である≪光星学園≫。設立から今年で100年が経つ歴史ある学園だ。日本の北海道近郊の海に浮かぶ、半径約200kmほどもある円形人工島≪リコリス≫別名「最果てのリコリス」の中心に位置しており、総敷地面積は約15k㎡と通常の学園とは比較にならない広さをもつ。
世界中の≪光脈種≫を集め、育成するための施設となっているが、徐々に増えてきた≪光脈種≫に対応するため分校設立の話も持ち上がっているとか。
唯人が校舎から目を離し、辺りを見回してみると自分と同じ高等部1年の制服を着た生徒たちが校舎に向かって足を進めている。中には2年生や3年生の姿も多く見受けられた。
この学園は中等部と高等部で制服は異なるものの制服に入ったラインの色が1年なら赤、2年なら緑、3年なら青と学年ごとに違うため何かで隠したりしない限りは一目で何年生かわかるようになっている。
それから10分弱で校門前に到着するとトラブルでもあったのか生徒達が群れており、なにやら騒がしかった。唯人は生徒たちの間を通りぬけていく。すると目の前には腹を抑えてうずくまっている細身の男子生徒と一目で怒っているとわかる表情でそれを見下ろす2年の制服を着た身長2mはあろうかという上着の上からでもわかるほどに筋骨隆々な男子生徒がいた。
「てめぇ、俺に喧嘩売ってんのか!!」
「そ、そんなつもりは――ごはぁっ!?」
「口答えすんじゃねぇ!」
大柄な男子生徒は細身の男子生徒を無理やり立ち上がらせると腹部に強烈な拳を叩き込む。
「うぅ・・・」
3mほど吹き飛ぶと男子生徒の口から弱々しい呻き声が漏れる。肉体の強度が通常の人間とは比較にならない≪光脈種≫といえど、あの剛腕から放たれる拳を受ければひとたまりもないだろう。怒れる男子生徒はさらに追撃をかけようとする。これ以上は危険だと唯人が止めに入ろうとした時野次馬の中から少女の声が聞こえてきた。
「もうやめてください!」
生徒たちは一斉に声がした方向を見る。そこには栗色の髪の毛を肩まで伸ばした小柄な女子生徒が今にも泣きそうな顔で先輩を睨みつけながら立っていた。彼女は「大丈夫ですか?」と声をかけながら吹き飛ばされた男子生徒の元に駆け寄る。
「なんでこんなひどいことをしたんですか!?」
少女は先輩相手でも強い口調で問う。
「そいつが俺のことを臆病者だとか言うから身の程を教えてやったんだよ。」
と悪びれもせずに言葉を返す。
少女は表情を曇らせながら「そんなことで・・・」とつぶやき、次の言葉にこの場にいる生徒全員が耳を疑った。
「私と・・・してください・・・。」
「あ?なんだと?」
「私と決闘してください!!」
「それで私が勝ったら、金輪際こんな暴力は振るわないでください!」
周りからはひそひそと「大丈夫かよあの子・・・」「勝てっこないよ」「相手はあの須郷だぞ・・・無謀すぎるだろ」など少女を心配する声が聞こえる。唯人も彼女があの先輩に勝つことは万に一つもないだろうと考えていた。≪光脈種≫は小柄であっても戦闘力の高い者は少なくない。しかし彼女からは武術の心得もそれを補うほどの膨大な光流力も全く感じられなかった。対して先輩の男子生徒は異常なほどに鍛えあげられた体をしており、荒々しいが武術の心得もあるようだった。
「てめぇ、自分が何言ってるかわかってんのか?」
「わかってます。でも、これ以上見てるだけなんて耐えられません!」
少女が体内の光流力を活性化させ、リコリスの花があしらわれた校章に手をかざすとそれが淡い光を放つ。
「我、浅野琴葉は汝、須郷アルベルトに決闘を申し込みます。」
その言葉と同時に須郷アルベルトと呼ばれた生徒の校章が同じように光る。
『決闘を受けますか?』と電子音での確認が行われる。そしてため息をつきながらアルベルトが承諾しようとしたその時。
「ちょっと待った。」
無意識に口が動いていた。自分でもなぜかわからない。ただ、この少女は自分が守らなければいけない。そんな気がした。唯人は前にでて琴葉と弱った男子生徒を後ろにかばうようにしてアルベルトの正面に立つ。そして困惑の表情を浮かべる彼女に対しこう続けた。
「その決闘、代わりにやらせてくれないか?」
「え・・・?」
琴葉はあまりに唐突すぎることで間が抜けた声を発してしまう。野次馬たちもなにがどうなっているのか理解できていない様子だ。そんな中、先ほどよりは落ち着いているが苛立った様子でアルベルトが口を開く。
「今度は誰だよ。」
「今日からこの学園で世話になる予定の、如月唯人だ。」
そう短く答えると周囲がざわつき始める「如月って編入試験の模擬戦で担当教師をぶちのめしたって噂の?」「どうせ手加減されてたんだろ。」「それに本当だとしても須郷さんに勝てるわけないだろ。」など生徒によって反応は違うが編入生のことは一応噂になっていたようだ。
「あぁ、そういえば噂になってたな。模擬戦担当教師の竜胆が手も足もでなかったんだっけか。」
彼は初めてその顔に笑みを浮かべ、少し間をおいて「だがな」と続ける。彼は正拳突きを繰り出し唯人の顔面の前で寸止めする。その顔に笑みはなく、ただ唯人を睨みつけていた。
「この学園では教師より強い生徒なんて別に珍しくもねぇんだよ・・・・俺みたいにな。」
しかし須郷は内心驚いていた。
(まさか、まばたき一つしないとはな。)
そう、唯人は眼前に迫る拳を見てなおまばたきをしていない。寸止めとは言えもし男子生徒を吹き飛ばしたアルベルトの剛腕の威力を見ていたなら並みの生徒では今の一瞬で腰が抜けてしまうだろう。アルベルトはもう一度笑みを浮かべると浅野に声をかけた。
「おい、浅野とか言ったな。お前の代わりにこいつを相手にしてやる。感謝するんだな。」
「え、なんで・・・。」
情けない声で唯人に尋ねる。
「自分でもよくわからないんだ。だが、君は万に一つもない可能性に賭け、勝利をつかもうとした。それも自分ではない誰かのために。そんなこと、並大抵の人間には絶対にできない。だからこれは、君への敬意の現れだと思ってくれ。」
「え、あ、はい・・・。」
その言葉を聞き、琴葉は茫然としながらも承諾の意を示すが、すぐに「でも」と言葉を続ける
「その、いいんですか?相手は≪星覇目録≫でAクラス1位の須郷アルベルトですよ?私はおろか、今ここにいる人たちの中にも勝てる人なんて・・・。」
≪星覇目録≫とは、中、高等部、大学部の中でも戦闘力の高い生徒たちを100人毎にクラス分けをし、ランキング化したもので、上から順にS、A、B、Cまでの4つのクラスがある。なおSクラスのみ枠は14人分しかなく、そこに名を連ねた者は≪頂点に立つ者たち≫と呼ばれ、専用のトレーニングルームや寮の部屋を与えられるなど特別な待遇を受けることができる。目の前にいる男はインデックスAクラス1位。単純に言えばこの数千人規模のこの学園で15番目に強いということになる。そんな相手に勝てるのか?そういう質問だ。それに対し唯人は琴葉の顔を見据え――
「俺は相手がどんなに強くても、戦う前から諦めたりはしない。全力を出して、それでも届かなかった時は敗北を認める。それだけだ。」
そっけなくそう答えると、琴葉は緊張の糸がほぐれたのかその茜色の瞳から涙を流し、「ありがとう・・・ございます。」と今にも消え入りそうな声で唯人に感謝の言葉を贈った。唯人は一瞬微笑むと、アルベルトの方を向き直り校章に手を当て、≪光流力≫を活性化させる。琴葉は未だ辛そう腹を抑えている男子生徒を支え、後ろに下がった。
「我、如月唯人は汝、須郷アルベルトに決闘を申し込む。俺が勝てばさっきの条件を飲んでもらう。」
続いて電子音での確認音声が鳴る。
『決闘を受けますか?』
「その決闘、≪破壊の剛獣≫が受けて立つぜ。俺が勝ったら二度と俺がすることの邪魔をすんじゃねぇ。」
アルベルトがこう答え、光流力を活性化させると、一辺約20mの半透明のキューブが二人を収めるようにして現れる。次にお互いの体が光流力体に置き換わり始める。光流力体とは、文字通り光流力でできた体のことで、これにより攻撃を受けても痛みを感じず、自分の本体が傷つくことはなくなる。ただし、光流力体で腕や足を切り落とされた時は当然その部位は自由に動かなくなる。さらにシステムが致死量の攻撃を受けた。または致命傷になりうると判断した場合は(例えば心臓がある部分を貫かれたりした時)その時点で勝敗が決する。
体が完全に光流力体に置き換わったのを確認し、二人は自分の武装デバイスを起動させる。唯人の武装は学園から支給されるスタンダードな直剣型のデバイスで、2寸ほどの柄からフォトンで形成された2尺4寸ほどの青白く光る刀身が伸びる。
対するアルベルトは、その巨体に見合うほどの両刃の大剣を担ぎ上げ、唯人の武装を見てこう吐き捨てる。
「ふん。わかっちゃいたが支給されたデバイスか。張り合いねぇな。」
アルベルトの大剣は特注品で、≪星覇目録≫入りを果たした者にしか与えられない。対する唯人の剣は学園からの支給品で、特注品と比べると出力などは大きく劣ってしまう。自分で業者に依頼して作ってもらうこともできるが、それなりの額となってしまうため唯人は支給品を使っている。ため息をつくアルベルトに対して唯人は剣を正眼に構えながら言葉を返す。
「それは失礼。だがこれでも十分相手は務まる。」
「あんまり俺を嘗めんなよ・・・。」
アルベルトは挑発に苛立ちながらも真剣な表情で唯人を見据える。そこに油断は無く、彼がAクラスだというのもうなづけた。対する唯人は2年前のことを思い出していた。それは生きる意味を見失っていた自分を、絶望の底から救い上げてくれた人との修行の日々。
――あれからどれほど強くなれただろうか。
――あの人を超えるには至れなくとも少しは近づけただろうか。
と。
それから程なくしてキューブ状のリングに『Duel』の文字が投影され、電子音で開始までのカウントダウンが始まる。
『3』
『2』
『1』
『デュエルスタート』
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。今回は導入編というかまだ導入にすら入れていない訳ですが、楽しんでいただけたでしょうか?少なくとも時間の無駄ではなかったと思ってくださればうれしい限りでございます。これからも読んでいただけるよう頑張りますので、評価等よろしくお願いいたします。
一応次回予告をしておきますと、唯人とアルベルトの決闘が始まり、いよいよ戦闘シーンに入っていきます。そして新たな出会いも・・・?次回 最果てのリコリス 第2話「再会と幕開け 後編」