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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔装戦機ギャラクシオー〜覚醒〜

作者: マルコ

 ──魔力の供給を確認。起動します。


 ………………エラー。コクピットにパイロットを確認できません。


 周囲をサーチ。


 空間天井部に生命反応を多数確認。味方識別信号……無し。判断を保留。


 ……外装部に触れている生体反応を感知。微弱。魔力供給源と断定。負傷したパイロットと仮定。カメラアイにて確認開始。


 ──外装部の負傷者は服装などから民間人の女性と推定。推定年齢は中等部前後。なお、多量の出血を確認。


 救助検討シーケンス開──スキップ。迅速な救命が必要と判断。軍規第5条23項に則り、敵味方識別不明者に対する救命義務を適用。

 外傷確認。腹部に損傷。槍状の武器による刺傷と断定。

 メディカルチューブ接続。麻酔投与開始。身体スキャン。胃部損壊。腎臓破裂。大腸一箇所断裂。小腸複数箇所断裂。複数回刺し貫かれた模様。落下による骨折、打撲も確認。天井部から落下してきたと推定。


 ──生命活動、危険域に突入。

 軍規第28条126項に則り、コクピット内に収容。集中治療を開始。


 ──警告。魔力残量が枯渇。

 軍規3条1項に則り、魔力供給要請を行います。


 ◇


 帝国の外れにある田舎村。

 長らく敵対関係にある通商連合との国境近くにある村だが、ここ30年ほどは小競り合いもなく、貧しくも穏やかな村であった。

 しかし今、その村は燃えていた。

 ただの火の不始末であればどれほど良かっただろう。しかし、現実は通商連合軍の部隊による襲撃によるものだった。

 戦時国際法などというものの無いこの世界。

 宣戦布告もなく侵攻を行うのは日常茶飯事だ。

 だからこそ、それなりに相手国の動向には気を向けているものであるが、こういった辺境の村はえてして見捨てられやすい。この村も帝国から見捨てられたのか、それとも帝国はまだこの侵攻を察知していないのか。村の広場に集められた100人ほどの人々には見当もつかない事だった。

 そんな彼らを通商連合の兵士が取り囲んでいる。このまま男は奴隷に、女は慰めものにされた後、やはり売り飛ばされるのであろう。人々の顔には恐怖と絶望の色が色濃く浮かんでいる。

 少し離れた地面には大きな穴があり、その周りにも多数の兵士が配置されている。つい先程までは無かった穴だが、突如崩れて口を開けたのだ。


「ふん、こんな所に地下洞窟があるとはな」


 地下洞窟の上の地面はしばしばこうして崩落する。

 侵攻部隊の隊長である彼もそういった知識を持ってはいたが、実際に目の前で崩落するのを見たのは初めてだった。


「ああ、サリア……」


 年老いた村長が孫娘の名を呼ぶ。穴に落ちた孫娘の名を。

 勇敢にも……いや、ハッキリと言えば無謀にも兵士に突っかかった孫娘は、槍で突かれ瀕死の重傷で倒れていたのだ。

 そんな彼女をさらに兵士が辱めようとしていたその時、地面に亀裂が入った。慌てて退避した兵士達は地上に残ったが、孫娘はそのまま穴の中に落ちた。

 妻も娘も亡くした村長にとって、ただひとりの肉親だった。父親の事については娘は何も言わずに逝ってしまったが、それでも大切に育ててきた孫娘だったのだ。

 それをこんな形で亡くしてしまうとは、彼にとって悪夢以外のなにものでもなかった。


「ちょうど良い。逆らったヤツは穴の下に突き落とすとしよう。あの娘のようにな」


 意気消沈していた村長の耳に、信じ難い言葉が届く。

 今、この部隊長はなんと言ったのか?

 これ以上村人達に危害を加えようというのか!


「やめろ! やめてくれ!」

「だったら、おとなしくしていることだ。おい、食料の接収はまだか!?」


 村長の悲痛な訴えを部隊長は軽く受け流し、部下に略奪の進捗状況を確認する。

 最悪だ。備蓄してある食料を奪われれば、たとえ解放されたとしても待つのは餓死の運命だ。


「あと10分ほどで完了します」

「5分で終わらせろ。ここが既に帝国領内だということを忘れるな。さっさとエルム砦に……なんだ?」


 気がつくと、穴を見張っていた兵士達が何やら騒いでいる。何事かと部隊長がそちらに注意を向けた時、ソレが穴から飛び出し、地面に降り立った。


「ゴーレム……? デカイ! それにあの装甲は……?」


 部隊長はソレをゴーレムだと推測した。変わった意匠の全身甲冑にも見えたが、人が着るには大きさが違い過ぎる。ならば、ゴーレムであろうと思ったのだ。しかし、彼自身魔術師が使役しているものを見たことはあったが、その大きさは子供程度から大柄な人程度までだ。今目の前に立っているゴーレムは5メートルほどの大きさがある。それほどに巨大なゴーレムは見たことが無かった。


 ゴーレムに詳しい者の衝撃はさらに上だった。

 なにせ、ゴーレムという物は単純な力仕事をさせるだけのものなのだ。穴の下からジャンプしてきて、転ばずに着地する。などという芸当ができるようなモノではないのだ。

 だが、ソレ以上に驚愕する出来事がすぐに起こった。


「──状況より推察。村落を占領している軍人と判断。こちらは局部銀河連盟軍所属・Via Lactea-326。セイリアム条約に則り、民間人救助の為魔力供給を要請します」

「喋った……だと!? い、いや、中に誰か乗っているのか」


 部隊長は一瞬驚愕したが、すぐに中に乗った誰かが発した言葉であると判断した。

 その判断はゴーレムをよく知るものであれば出てこない非常識なものだった。

 ゴーレムは土人形から作るものだ。中に人が入るようなものではない。

 だが、確かに中に人が入って動かせば、先ほどのような動きも不可能ではないだろうし、こうして喋る事もできる。

 常識を知らないからこそ、正解を言い当てた。彼らはそう思い込んだ。


「副官! アレは何を言っているのだ? 連盟軍? セイリアム条約とは?」

「ふ、不明です。聞いたこともありません」

「ふん、使えん奴め。──だが、あのデカブツが帝国の兵器なのは間違いなさそうだな。おい、あれを破壊せよ!」


 そう。目の前のゴーレムが帝国の新兵器である事は疑いはない。略奪の為に襲った村だが、新兵器の実験場だったとは。思わぬ副産物だと部隊長はほくそ笑む。これは、かなりの手柄になるだろう、と。


「警告。敵対的言動を確認。繰り返します。セイリアム条約に則り、民間人救助の為魔力供給を要請します。当方は危篤状態の民間人を保護しています。迅速な魔力供給を要請します」

「ごちゃごちゃ五月蝿えんだよ! やれ!」


 隊長は怒気と唾を飛ばして魔道兵士に攻撃の合図を送った。

 次の瞬間、無数の炎がゴーレムを襲う。

 通商連合で最近発見された、魔法の同時発動による相乗効果を利用した攻撃だ。これにより、従来の魔法よりもひとり当たり10倍の威力の攻撃が可能となったのだ。この発見によって通商連合は帝国への侵攻を決定したほどの革新的技術。

 襲撃者たちは炎が消えた後、炭となったゴーレムが崩れる光景を信じて疑わなかった。


 しかし、現実に炎の中から現れたのは傷ひとつない……むしろ、表面の苔や泥などが消え去り輝きを増したゴーレムの姿だった。


「な!?」

「魔力供給を確認。──ただし、魔力による攻撃、敵対行動と認定。セーフモードから通常モードに移行」

「ええい! 魔法が効かないなら、攻城兵器だ! 破砕槌で吹っ飛ばしてやれ!」


 ゴーレムは無事でも、中の者は無事ではすまなかったのでは。

 という一瞬の期待も裏切られた隊長は、さらに攻城兵器で攻撃しようとした。

 堅牢な城塞の門をも突破する破砕槌なら、あのゴーレムとて無事ではすまない。そう考えた。


 だが、彼は誤っていた。

 彼が取るべき選択は逃げる事だけだった。


 ──いや、それも遅かっただろう。

 遥か神話の時代、天空の彼方で戦っていた戦士を目覚めさせてしまったのだから。


 ◇


 ──通常モード、起動。


 ったく、セーフモードでアタマが回らなかったとはいえ、厄介な状況に首突っ込んじまったな……

 けどまぁ、条約を別にしてもこの状況は見過ごせないよなぁ……


「おい、お前たち、もう一度言う。……まぁ、お前たちがやったんだろうが、こっちは重傷の民間人を保護しているんだ。敵対行動はやめろ。つか、セイリアム条約くらい軍人なら知ってるだろ!?」


 口ではそう言ってみたが、もしかしたらコイツら……いや、この惑星の住人はセイリアム条約を知らないのではないだろうか?


「先ほどまでとは声も口調も変わっただと? 何人乗っているんだ……?」


 部隊の指揮官らしき人物がそんなことを言う。

 独り言だったのかも知れないが、あいにく俺の耳にはクリアに聞こえたので、とりあえず応えてやるとしよう。


「さっき拾った1人だけだよ。……まぁ、そういう意味で言ったんじゃないだろうけどな」


 多分、アイツは俺のパイロットが会話していると思ってるんだ。

 どうもこの様子だと、文明レベルの低い惑星みたいだな。

 厄介なトコに(フネ)が堕ちちまったなぁ……

 AI技術も未発達みたいだし、星系間航行どころか、宇宙(ソラ)に上がる技術も無いんじゃないか?


「よーし、言い方を変えよう。お前たちじゃ、俺に勝てないからとっとと失せろ」


 流石に、弱いものイジメは気がひける。


「何を世迷言を。我ら通商連合に、旧態依然の帝国が、たかが1体のゴーレムでどう勝つと言うのだ! おい、破砕槌はまだか!?」

「じゅ、準備完了しました!」

「よし、やれ!」


 ガン! と音がした。

 何事かとそちらに意識を向けると、数人の兵士が丸太を俺の脚に当てた音だったようだ。

 ちょっと待て。

 もしかして、さっきから言ってた破砕槌って、アレの事か!?

 補強もしてないようなただの丸太じゃねーか!

 ……さっきの魔法もだけど、ドンだけレベル低いんだよこの惑星……


 あ、なんか槍とか剣とか弓とかでも攻撃してきた。

 あー、魔法も使って来てるけど、接近戦してきてる奴にも当たってないか? コレ。


 ああ、なんか覚えがある光景だと思ったら、アレだ。大昔の特撮怪獣映画。アレに出てくる怪獣に攻撃する軍隊がこんな感じだった。──って、俺が怪獣ポジかよ!?


 いや、マジどうしようコレ……

 模擬戦でも傷くらいはつくんだぜ? 自動修復で1時間もあれば修復できる程度だけど。


「おい、デカブツ、こっちを見ろ!」


 不意にあの指揮官が声を上げたのでそちらを見ると、村人らしき老人に剣を突きつけていた。

 同様に、周りの兵士も村人に槍を突きつけている。


「抵抗はやめてソレから降りてこい。でないと、村人を全員殺す」


 まさかとは思ったが、村人を人質に脅迫しているのか。


「……言っても無駄だろうが、パルアール宣言で人質をとる行為は禁止されている。そして──」

「わけの分からん事を言ってるんじゃぁない! こいつから殺す!」


 こっちは親切心で警告してやっているのに、ヤツは剣を振り上げ──その腕が剣ごと空を舞う。


「え? う、うわぁぁぁーーーー!!! 俺の腕ガァー!!!」

「相手が違反した場合、人質を無視して攻撃する義務がある。ただし、人命を重視した攻撃を妨げるものではない」


 先ほど言いかけた言葉の続きを伝えてやる。

 人質が無駄だと分からせなければ、民間人の犠牲者が増えるだけだ。故に、パルアール宣言では人質を取られた場合、絶対に応じずに攻撃する事を兵士やAIに 義務付けた(・・・・・)のだ。


「何をやっている! 村人を殺せー!」


 ふむ、とことんまで外道な指揮官だ。

 まぁ、それに応じる兵士たちもたいがいだな。命令に従っているだけにしても、多少の躊躇を見せるものだが、コイツらにはその気配も無い。

 まぁ、それならそれでこちらも遠慮はしない。

 先ほど隊長の腕を飛ばした魔力光線で兵士を貫き、処分する。民間人に怪我は無し。

 その様子を呆然と見ていた指揮官だが、顔を真っ赤にさせて怒鳴り散らしてきた。


「なななな、き、キサマぁー! このままで済むと思うなよ! このことを通商連合が知れば──」

「この文化レベルでどうにかできるとは思えんが……」


 未知の惑星での油断は禁物だと理解はしているが、どうしても気が緩んでしまう。とはいえ、無駄な争いは避けるに限る。


「たしかに、お前の上層部がこの事を知れば黙っていないだろうな」

「ふふふ、そうだ! 今ごろ事の重大さに気がついたか!」

「知れば、な?」

「へ?」


 間抜けな指揮官の額に穴が開いた。


 ◇


「ん……ここ……は?」


 あれから暫く後、治療が終わった少女が目を覚ました。

 見慣れぬだろう、辺りの様子に戸惑っているうちに、自分の姿にも気がついたようだ。


「え!? なんで服!? もしかして!?」


 最悪の想像をしたのだろう。少女の顔が青く染まる。

 俺は少女に声をかけ、ひとまず安心させる事にした。


「あー、多分想像してるような事はない。治療に邪魔だから脱がせただけだ。年頃の娘には気の毒だとは思ったが、な」

「だ、誰!?」


 あからさまに警戒した様子で── できるだけ隠そうと身体を丸めて少女が誰何の声を上げる。

 まぁ、裸でいるところに男の声がすれば、そういう反応にもなるだろう。

 俺はひとまずモニターにアバターを表示させ、自己紹介する事にした。

 特にアバターを表示する意味はないが、彼女が喋りやすいようにだ。


「局部銀河連盟軍所属・Via Lactea-326。まぁ、村人からは守護神様とか呼ばれてるけど……別に神とかじゃないからな」

「え、えーっと……」


 少女の表情が警戒から困惑に変わった。

 まぁ確かに、さっきの紹介じゃ、わけが分からないだろうな。……半分くらいはワザとだけど。


「ああ、お前たちに分かるように言うなら、俺はゴーレムだ」

「ゴーレムが……喋ってる……の?」


 少女は困惑したままだが、ひとまずそれは無視して話を進める。


「まぁ、詳しい話はまた後で。今は村長のじーさんに顔を見せてやれ。さっきからうるさいんだ」


 そう、この少女の治療がそろそろ終わると告げた時から、祖父のじーさんがまだかまだかと煩いのだ。

 その様子をモニターに映してやる。

 広場で落ち着きなくそわそわして、村人に窘められている様子を見た彼女は安心したような、困ったような表情を見せた。


「う、うん。あ、でも、服……」


 このまま出ていけば、素っ裸で広場に立つことになる。だが……


「流石に、元着ていた服はお勧めしない。血で汚れている上にお腹が露出するセクシー衣装になっている」


 現物を見せてやる。

 血の汚れは最悪許容するにしても、かなり際どい破れ方をしている。


「あう……」


 それを着る想像をしたのか、少女は耳どころか肩まで真っ赤に染めた。


「男物で良ければ、士官服がある。ひとまずは、ソレを着て降りれば良い」

「ありがとう」


 ◇


 これが、帝国皇帝の落胤サリア=アンドロメアと、その魔装戦機ギャラクシオーとの出会いであり、帝国による惑星統一の第一歩となった出来事であった。

 ツイッターでちょっと話題にした「ロボ自身を主人公にした異世界モノ」。前から構想(妄想)だけはあったモノを短編として出力してみました。

 妄想が暴走して我慢できなくなった。多分、転移転生モノとしてもリメイクできる。


 勇者とかワタルとか、喋るロボット大好きなんですよねー。

 あと、変形合体も大好物。

 当然のようにこの話の主人公も変形合体します。


 追加合体とかもテンション上がりますね。


 ああ、ヒロインが大怪我とかしてロボになって、主人公と合体して最強形態になる。って展開はなろう的にアリでしょうか?

 人外主人公が人間になってヒロインと結ばれる。ってのが主流だろうけど、逆にヒロインが人外になる。ってのもアリじゃないかと思うんですよねー。

 あと、サブヒロインで武器娘出して、「私を使って!」とか言わせてみたい。(をい)


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― 新着の感想 ―
[一言] 喋るロボットやデバイスいいですね。ついでに、やられても隠された何かで、再機動ってのもほしいです。細かな外観などを語らず、シンプルに話を進めているところがいいですね。こういった作品はテンポが大…
[良い点] 転生ではなくロボットそのものが物理的に異世界転移しているところが個人的に好みです。(ちなみにトラン○フォー○ーが好きです) [気になる点] なぜこの惑星に墜落したのか。 合体する場合下駄…
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