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死んだ兵士と生まれた衛士  作者: にゃん又
4/4

本性

快楽殺人者が治ったわけじゃない。もう一つに人格に移っただけ。

「いや、あまり大きくない方がいいという方もいますし...」

「うるさい!もういい明日は私ひとりでやる。お前はもう部屋で寝ていろ!」

かなり怒った様子で廊下をつかつかと歩くマリアに突き放されて部屋に戻る。ベッドに寝転がっていると隣の部屋のガーゴイルが訪ねてきた。

「はいよー、鍵空いてるから。」

ノックに応えると、翼を器用にたたみながらガーゴイルJが入ってきた。

「失礼します。」

「どしたの?」

「いえ、明日のことで...」

「元から行くつもりはなかったよ。」

「え?まじで?」

「うん。」

「なんで?」

「だってさ、俺が外交問題に首突っ込んだら即効で戦争だよ?その使者とやらも多分俺と目が合う前に殺すからなぁ。」

「自重というのは...」

「君は自慰行為を禁じられて生きていけるの?」

唐突な単語に赤面するガーゴイルに焦った様子で弁解する奏。しかし彼にとってはこの上ない適切な例えだったのだ。

「あっ違う、今のナシ!ちょ...そんなゴミを見るような目で見ないで!ねぇ!待って待ってお願いなんか言って!」

「あんたら何してんの?」

「あ、メイド長...セクハラされました。」

「うん聞こえてた。察するにアンタ快楽殺人者ってこと?」

「とっくに治療済みだよ。」

一般には死んだとされる隊員から選ばれる自衛隊別班要員だが、奏を始めとする数人は“問題児”として配属されたのだ。快楽殺人者、戦闘狂、異状性癖を始めとするいわゆるキチガイ集団。それが奏の部隊だった。

「ったく、あんま面白くないことを思い出させるなよ。」

「す、すいません...」


「あーだるい。誰か代わってよ。」

「仮にも国賓なんですよ?」

「向こうが勝手に押しかけてくるんだろ。」

城の前にガーゴイルたちが銃剣付きの小銃を持って整列していた。暫らくすると、

「マリア様、アレキサンダー様がお見えになりました。」

城の門が開けられ、アレキサンダーとその後に従者が9人そのまた後ろに銃を持ったマリアの部下たちが城の中に入ってきた。

「ようこそ我が城へ。」

「本日は急な訪問をお許しいただきありがどうございます。」

そう言うやいなや訪問者たちが銃を抜いた。突然の事に対応出来ず、部屋の中は数秒で制圧された。床に押し付けられた私の頭に銃を突き付けられる。

「動くな!銃を床におろせ。コイツの頭吹っ飛ばされたくなかったらな。」

その宣言でなんとか銃を構え治そうとしていた数人がなすすべなく銃を手放す。

「わかるな?ここで貴様らを皆殺しにしてもいいが、こっちにもいろいろあってな。できれば平和的に領地を明け渡してもらいたい。」

「これのどこが平和的なんだ、それに私はここから離れることは出来ない。」

「こんな土地に何の未練がある?」

「未練なんてない、ただここから離れたら私の命にかかわる。何度も言っているだろう!」

「その言い訳は聞き飽きた。土地は痩せ、国民も貴様が動かす死体だけ、人形遊びに付き合ってやる義理はねぇ。」

「人形だと⁉︎私の臣下が人形だ…」

「うるせぇよ。」

銃声が響いた。

「マリ...ア、様...」

撃たれた骸骨が崩れ落ち、砂になって消えた。

「メイド長!おい!骸骨R、レイチェル!」

「まだ本名を覚えていたとはね、じゃあ彼の名前は?」

今度はガーゴイルに銃を向ける。

「君の名前はなんだ?ガーゴイルB!」

今度も容赦なく撃った。レイチェルと同じように砂になって消える。

「ボブ...貴様ら!ぶっ殺してやる!」

「ったく威勢は...」

その時ドアの向こうで銃声が聞こえ、何かが倒れる音がした。直後ドアが蹴破られる。息を切らしながら奏が現れた。

「我が主、これは一体何があった。...彼等は敵か?」

これ借りるよ、と言って奏は落ちていた銃剣を拾う。

「なんだ?まだ生きている従者がいたとブッ...」

不用意に彼に近づいたアレキサンダーの手下は首を刎ねられた。

「マリア様、命令を。早く。早く俺に命じろ、敵を殺せと、皆殺しにしろと!」

奏の顔を見てマリアは絶句する。そしてそれを見た、おそらくアレキサンダーも含めた全ての者が気圧された。

「よこせ、早く、早く!命令をよこすんだ!俺はもう戦えるぞ、何を迷っている!早く殺させろ!」

「嗤っている、だと...!?殺せ!撃て!そいつを殺せ!」

アレキサンダーの絶叫と共に泣き叫びながら一人の兵士が切りかかる。銃剣の鋒が一瞬だけ光った。体を縦に裂かれた兵士が内臓をぶちまけながら斃れる。

「奏...許可...戦闘を許可する。」

「ありがと。」

次の瞬間には既にマリアを組み伏せていた兵士が消滅し、それを感知した頃にはアレキサンダーが肉塊となっていた。最後の1人、部屋の片隅で失禁しながら震える兵士に奏が銃を突きつける。

「ヒィ...」

「怖がらないでよ。殺すつもりは無いからさ...」

涙で顔をグシャグシャにしながら震える兵士に優しく語りかける。

「君には国に帰ってもらわなきゃいけない。報告義務がある。この国に手を出したらどうなるのかを身をもって知った君に報告してもらいたい。それと、君たちが行った行為...我国領土内での火器使用、邦人の射殺、君主への暴行、これ全部宣戦布告に該当するのは知ってるよね?撤回は認めない、一切。我々は君たちから戦争を仕掛けられた。このことを帰って君たちの指導者に伝えな。」

がたがた震えているだけの兵士を無理やり立たせて城から追い出す。

「あ、一応反撃されるとまずいから君の指は切り落としておくね。」

表情も変えず奏は兵士の指をすべて落とした。

「じゃ、報告よろしく!...あーやっちまった、だから言ったのに...」



別班配属理由も色々あったようで。

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