邂逅
登場人物
品川 奏 陸上自衛隊“別班”所属の一等陸尉(29)
マリア ウィルソン (自称)魔法使いの女王様。一応魔法は使える。(14)
骸骨 マリアの魔法で意識を持った死体たち。元は城のメイドとか執事とか。時々戦う。
ガーゴイル マリアの魔法で意識を持った死体たち。元は城の兵士。時々お茶入れたりする。
麻里香 記憶の無い奏がマリアを見てつぶやいた誰かの名前。ただし、もう言った本人も思い出せない。
ここは、何処だ?
陸上自衛隊別班所属の品川 奏一等陸尉は薄暗い森の中、ほぼ手探りで歩き回っていた。
「不気味だな…」
野生動物の気配はするが一向になにも現れない。深い霧があたりに立ちこめていて視界が悪い。腰の9ミリ短機関拳銃に手を添える。別班限定の銃床付きでわずか17丁しか作られていないレア物。マニアなら高値で買いそうだな、というより自分だったらコレに100万出せる。と仲間がいない今改めてその頼もしさを感じた。
「まぁここは日本じゃねぇな。」
独り言をつぶやく。というよりそうでもしてないとやっていられないという感じだ。奏の着ている迷彩服は周りの枯れた土地からかなり浮いている。ここでおかしなことに気がついた。
「太陽が出てないのか…?でも薄明るい…」
周りを見ると木はあるが葉のついたものは一本もない。しかしまるで深い山奥のように日光が遮られた暗さだ。太陽が見つからないから方角も分からない。できるだけまっすぐ歩くようにしよう。さらに数時間歩続け、奏は森を抜けた。しかしそこに待ち構えていたのは大きな城。
「何コレ…とうとうおとぎ話にまで手を出したのか?」
奏は軽いめまいを感じ、その場に倒れこんだ。
…なんだ?急に…
見張り台から地上を見下ろす。いつもと変わらない枯れ果てた風景。
「なんにも無いな…」
いつものように呟く。従者の骸骨が慌てた様子で見張り台に上がって来た。
「マリア様、西の見張り台から人間がいるとの連絡が。」
「何処じゃ⁉︎」
何年ぶりかわからない来訪者にマリアは声をうわずらせる。
「姫様、あまり期待しないほうがよろしいかと…」
「どうしてだ?」
「既に回収しましたがかなり深手を負っているようで。」
「何処におる。」
「一階の客間を簡易救護所に。」
骸骨に連れられて階段を駆け下りる。突然の来訪者に一階は騒然としていた。
「通せ、通すのだっ!」
退かされた骸骨やガーゴイルが不平を言うがそもそも私の魔法で動いてるんだし文句を言われる筋合いは無い。
「どうじゃ?」
カーテンを開けて入るとベッド代わりのソファに男が寝かされていた。机の上に彼の持ち物であろう物が散乱している。
「マリア様、一応は持ちそうですが…銃で撃たれてますね。」
「助かるなら良い、それにしても随分と物騒なものを持っているな。」
ガーゴイルの1人が彼の銃に触れた途端、
「触るな!」
急に男が起き上がって叫んだ。驚いて銃を落とすガーゴイル。しかし彼はまたソファに沈んでいった。そして私の方を見て、
「麻里香…?」
とつぶやいて目を閉じた。
好きな銃“ヒト”ができました。