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ヒカリの存在  作者: 水晶
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はっきりとしない気持ち

 ざわりと、静かに優しい風が自分の頬を打った。





 彼の到底ふざけているとは思えない瞳を見て、気づいてしまった。


 彼は、真剣に訊いているのだ、と。


 だけど、自分は――…どう、答えれば良いのだろう。















 「奏は瑠花のことが、好きなのか…?」


 正直、やはりどうこたえれば良いのか迷った。


 別に隠すことなく、素直な気持ちを彼に伝えれば良いのだろうが、その肝心な『素直な本当のところの気持ち』というものが奏には判らないのである。


 言葉を詰まらせ、何かを言おうと口を開くはいいが、やはり何を彼に言うのか…口は開きかけては閉じられる一方でなかなか前へ進まない。


 そしてそれがどれくらい続いただろう。


 ゆうに五分以上はたったはずだ。


 彼は根気強くも奏との…親友との気まずい沈黙に付き合ってくれた。


 ただ単に、沈黙すらも気にしない鈍い神経の持ち主だっただけなのかもしれないが。


 それでも、多分恐らくは奏のだす答えを待っていてくれたのだろう。


 それがどんな答えであっても、聞きたかったのだろう。


 けれど、奏には求められる答えを返すだけの気持ちは調っておらず、またはっきりとしない自分がもどかしく感じられ、いい加減自身に嫌気がさしてきていた。


 「…奏…」


 「……」


 彼が先を促すように親友の名を紡いだが、さっぱり効果はない。


 やがて、彼も我慢が利かなくなったのか――…。


 「奏、言いたくないなら無理に言わなくて良いよ。俺もお前に言ってないし…。お互い言えるようになったらそのときこそ、はっきり答えろよな…」


 以前の約束のようなものを、彼はこの空気の中に持ち込むことで軟化しようと試みているようだ。


 「…悪いな、葵」


 奏は彼のその気遣いに甘えさせてもらうことにした。


 近いうちに判るだろうか…そんなことを思いながら――。















 「てかさ葵…もうはっきりと判ったわけ?」


 「え?何が?」


 「二人居てわかんないんだろ?」


 好きな人が――。


 「え…あ、ああ。まだわかんねー」


 どっちも好きだと自覚したから――。


 「……こりゃお互い長期戦だな。根気強くいこうぜ?」


 お互い本気恋愛はぴかぴかの一年生…超奥手な初心者です。


 「……そうだな――」


 ………別にどうでも良いなんて、さっきのいまで言ったら怒るよな――。


 「……」


 「……」


 彼と奏は少ない会話の中にお互いのスれを感じたその時、空に浮かぶ雲がうごき、ベランダに大きな影が落ちてきた。


 それはまるで今の二人の心情を表したようだった。


 そして、二人の間に少し寂しさを感じさせる秋の風が吹いた。


 


 

さてさて…長期戦、長期戦――。


二人がはっきりしない限り、この物語も長期戦です。


読んでくださってる方にもぜひ長期戦でお願いしたいです。


ですので、楽しんで最終まで付き合っていただけるよう頑張りたいです!

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