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ヒカリの存在  作者: 水晶
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元カノと彼

 「あー、葵じゃん!元気ィ?てゆーか、今付き合ってる人いンの?」


 誰もいなくなった教室で元彼女、木田瑠花きだるかと遭遇した。


 彼は苦虫を数匹噛み潰したような嫌な顔をして、近寄ってくる彼女から目を逸らした。


 よりによって放課後の…誰もいないこの教室でなんでこの女と出くわしてしまったのだろう。


 最悪だ。


 別にこの女に未練がある訳ではないのだが、この教室で一ヶ月前にこの女に彼はフラれているのだ。


 今も一番会いたくなかった相手といってもいいだろう。


 あんなことを言われれば、さすがの彼だってそう思う。


 あの言葉は彼にとってのトラウマで、そしてその言葉を吐いたのが今目の前にいる女なのだった。


 いくら嫌でも声をかけられれば無下にも出来ず、今更ながらにどうしてもっと早く帰ろうとしなかったんだよと、自分自身に悪態をつきつつ、後悔をしだす。


 「いないけど、何?その、意外そうな顔は」


 彼の言葉に瑠花は目を軽く見開いた。


 そんな瑠花の様子に彼は何だよと、眉をしかめる。


 「ん〜。いやァ、だってあんた、別れてもすぐ誰かしらと付き合ってんじゃん、いつも。私と別れてからもう一ヶ月も経つのに、彼女いないって葵、どうしちゃったのぉ?付き纏ってくる女はいくらでもいるでしょ」


 瑠花はさも有り得ないと笑いながら、だが、複雑そうな笑顔を作った彼を見て首を傾げ、顔を顰めた。


 「――…うん。ちょっと疲れた、のかな…。一服付いてるんだよ、俺も」


 彼のその予想外な答えと弱々しい声音に瑠花はついと、目を細めて皮肉気に口端を吊り上げた。


 「へぇ…。それって私のせい?」


 「……何が?」


 しばしの沈黙と無表情に自分を見てくる彼を見て、瑠花は確信した。


 「ふ〜ん。私の『最低』に傷付いちゃったんだぁ…」


 「ッ!?」


 そういえば、彼はカッと顔を赤くした。


 普段見ることの出来ない彼の表情が、今目の前で自分だけにされされていると思ったら、もっと色んな顔を見てみたいという欲求に駆られてつい意地悪をしてみたくなる。


 「へぇ…本当なんだね」


 瑠花は口元に乗せたいやらしい笑みを深くした。


 「だとしたらッ…、なんだ?今更お前には関係ないだろう?」


 平静を必死に取り繕うとしていたが無理だとすぐ悟ったのか、彼は開き直って瑠花を拒絶する言葉を吐いた。


 「――ねぇ、ならさ…私とまた付き合ってみない?」


 「生憎だけど断る」


 「どうして?またフラレるのが怖いの?でも葵が悪いんだよ?本当に好きでもないのに、付き合ったりするから」


 「………ごめん。俺いつもボーっとしてて、知らない間に話し進んでて」


 「ほら、もうそこから悪いじゃん。人が一生懸命になって告ってンのにさぁ、ぼんやりと聞いてるなんて。まぁ、そんなところも可愛いんだけど」


 クスリと笑った瑠花に彼はむっと言い返した。


 「お前、俺と別れたくせに今更なんなんだよ…。お前だって、俺じゃなくても他にいくらでも言い寄ってくる男がいるだろう?何で一度別れた俺に付き合ってとか言って来るんだよ」


 「本当何も解らないんだね、葵は。――私ね、葵と本気の恋愛をしたいの。一度葵のこと振っちゃったけど、葵の本気の愛が欲しいの。だから、ねぇ…私と付き合ってよ?いいでしょう?別に今誰かと付き合ってるわけでもないんだし、好きな人がいるわけでもないんでしょう?」


 「それは…そうだけど――」


 彼は言葉に詰まった。


 瑠花の言うとおり、自分に好きな人はいない。


 だが、そのとき何故か頭に浮かんだ顔が二つあった。


 それは、一人は彼といとこでいつも髪を耳の後ろで二つに結っている少女と、もう一人は一つ年下の初めて彼が他人の笑顔に見惚れたツインテールが印象の少女。


 だが、どうしてその二人が浮かんだのか、彼には解らなかった。


 「なら、やっぱいいじゃん」


 返す言葉のなかった彼に陽気に畳み掛ける。


 「だけど、俺は…」


 それでももごもごと押し黙る彼を瑠花は苛々とした風に凝視して、顔を歪めた。


 そして、きつい口調で彼に詰め寄る。


 「…何?そこまで渋るほど私が嫌なの?…葵、本当どうしちゃったの?前までだったら、誰彼構わず付き合ってたじゃん!なのに、どうして?どうして、今はそんななのッ?私、本気だよッ!?」


 瑠花の必死で憐れとも思える言葉に彼はどう言葉を返したらいいか、またしても困ったが、やがて薄い微笑を口元に乗せると、いままで結にしか言えなかった本音をぽろぽろと苛立ちをおさえた語調で零しだした。


 「お前が嫌いとか…そういうことじゃないよ。ただ…俺の自業自得なんだけど、付き合って別れるときにいつも『最低』とか言われてさぁ、俺も悪かったって思ってるけど、勝手に変に妄想されて?…いざ俺と付き合ってみてその妄想の俺と違ったからって、『最低』って言われるのってすごく傷付けられるんだよね。身勝手なのもいい加減にしろって…」


 とつとつと言う彼の言葉はしかし、途中で切れて、彼を凝視していた瑠花は彼の異常に気がつけば、ハハッと拍子抜けしたとでも言いたげに笑った。


 「――…葵。目ェ真っ赤だよ。…泣いてるよ。つらかったんだね、葵も。ごめんね、私葵にひどいこと言っちゃったね。気づいてあげられなくて、本当ごめんね」


 「別に…いいよ。…というか、俺ってそんなに傷付いてたのか?」


 「葵、自分のことにも頓着しないから傷付いても気づかなかったんだよ。ごめん、本当にごめん。私も葵を傷付けた。でも、葵は本気で人を好きになれないよ。ほら、もう泣かないで。葵は愛に飢えてるんでしょう?誰かに…自分の外見だけじゃなくて中身も見て欲しいんだよね。私、葵のこと、ちゃんと見てるよ。だから、本気で私を愛してよ。私を好きになって?付き合ってよ、ね、葵」


 目尻に零れそうなくらいいっぱいの涙をためて、瑠花はふわりと微笑んだ。


 「……グスっ…――そうだな、いいよ…。付き合ってあげるよ、瑠花るか


 彼はまだ涙の残る眦を下げて、今にも消えてしまいそうな危うい仄かな笑みを零した。


 「ありがとう。私がちゃんと愛してあげるから、葵も私を愛して。大丈夫。私はもう二度と葵に最低なんて言葉は言わない。私が葵に人を好きになるっていう幸せを教えてあげる」

 一話で彼を振った瑠花が彼とよりを戻しちゃいました。


 彼の今まででは前代未聞です!


 この後、どうなるのか…ぼちぼち更新ということになりますが、根気強くお付き合いいただければ嬉しいです。


 次回は結と奏を登場……ごめんなさい。


 出来るかどうかわかりませんが、予定しています…。


 未熟で意味の成っていない文かもしれませんが、頑張ってみます。

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