最低の意味
「もうあんたなんてっ、しらない!!」
放課後、自分たち以外誰一人としていない―昼間の喧騒な教室とは、とても同じとは思えないほどに静まり返った教室に彼女の声が響き渡った。
「あんたみたいな男、きっと一生、本気で恋なんか出来ないわっ!」
そう涙声でまくし立てる彼女は、なかなかに質の悪い捨て台詞をはくと、引き止めるまもなく走り去ってしまった。
―――まぁ、別に引き止める気は、はなはな無かったのだが。
来る者は拒まず(特に理由が無い限り)、去るものは追わない(大きな理由が無い限り)。
それが曲がりなりにも、自分の信念だったりするわけなのだが―。
彼はその場にしゃがみこみ、大きくため息をはきだした。
「一方的に言いたいこといって、涙声でまくし立てて、おまけの置き土産に涙感涙するような捨て台詞をのこしていきやっがて…」
そしてまた彼は、ためいきをつく。
消え入りそうなくらい、小さな声でつぶやく。
「そんなの、俺だって知るかよ…!俺だって,わかんねぇーよ…」
翌日、学校(高等学校)―二年三組の教室に足を踏み入れようとした瞬間だった。
踏み入れようとした足を廊下へ引き戻し、緩慢な動作でよこに目をやった。
誰かが、じぶんを呼び止めたのだ。
視線の先―つまりは、呼び止めた相手である。
彼はその姿を一瞥すると、胡乱気に目を細めた。
何故なら、自分を呼び止めた女の子は、自分自身は全くもって知らぬ人物だったからで。
妙に赤く染められた頬に、失礼ながらも嫌な予感を覚えさせられる。
そうだ。
彼は、知っている。この後の展開を――。
自分を真剣そのものの顔つきで見つめてくるその女の子は、ゆっくりと口を開いた。
「ぁ、あのっ、わたしずっと、ずっと…あなたのことがすきだったんです。そ、そのもしよろしければわたしと、付き合ってくれませんか……?」
―――…予感ずばり的中。
「ごめん、俺、いまは誰ともそういう関係にはなりたくないんだ。だから、君とはつきあえないよ」
「前の彼女さんのことがわすれ、られないんですか…?」
彼は思わず目を瞬かせてしまった。そんなこと、訊かれるとは思ってもみなかった。
「…いや、そういうわけじゃないんだけど――。」
「そうなんですか…。分かりました。お引止めして、すみませんでした。」
礼儀正しく頭を下げる名も知らぬ女の子は、そのまま小走りに走り去って行ってしまった。
半ば呆然とその背を見送ってしまった彼は、ハッとした。
「名前…」
断ってしまったけれど、せめて名前くらい訊いておけば良かった。
こういうことは初めてですので、文がなってないかもしれませんが、楽しく頑張っていきたいです。